アイデア

 増田ネタ。
 「やってくれサービス作ってくれ」ということで、主旨は、『皆も自分のリソースをそこにさきたくないけど、これを社会で実現してほしいってあると思う』、『このアイデアを提供するプラットフォームを作ってくれ』の2点にまとめられると思う。
 タイトルだけで脊髄反射した場合は、何でも人任せにするなということにはあるのかも知れないが。
 で、コメには、ごく一部を除き、それを実現、もしくは運用するにあたって発生する問題について触れているように思う。(大喜利系はまた別として)
 私も同様な考え方ではあるが、とりあえず、書いてなさそうなこと(とはいえ、結論は同じ)をメモ程度に書いてみようと思う。

 私は『皆も自分のリソースをそこにさきたくないけど、これを社会で実現してほしいってあると思う』という、あまり実現性とかを考慮しなくていいよ形式のネタ出しというのが相当苦手である。
 とにかく、新規事業のために何か(何でもいいから数合わせで、に近い)アイデアを出してくれとか言われるのが大の苦手で、その原因を探ることで役に立つことなど何もないのだが、増田も文中で頻用している『アイデア』というのが、様々な評価軸としてどこに位置するのか、というのが結構関係しているように思う。
 有り体にいえば、何か思いついても無意識に自分の中であれこれ考えてしまうがゆえに『結局誰にも言わずに抱え込んで消えてしまう』というよりは、抱え込むどころか言う前に自ら棄却して抹消しているプロセスを意識せず行っているということだろう。
 いずれにせよ、着想、発想、思いつき、口から出任せ、苦肉の策、捨てばちでやってみたなどといった事象の基礎として存在する方向と力をなしえるものは、素の状態で単一のものとして扱うには統一性がなく雑多すぎるということがある。
 人にも寄るだろうが、先の評価軸のいくつかを自らが規定したある一定の基準まで持っていって初めて俎上に載るシステム内で効率性を考えれば、素の状態でそれを表出しない方向に訓練されるのもありかとは思う。
 とはいうものの、雑多であろうとそこから適切に実行計画にまで昇華できるような者は、新規事業の立ち上げとかベンチャーの立ち上げ、スタートアップなどに向いているのだと思われるが、経験上の感覚的なものではあるが、初期的な素のアイデアを多く持ち合わせているからそういう能力が卓越しているというよりは、どちらかといえば、アイデアを実現化する能力が卓越しているように思われる。(かといって、アイデアが非常に少ないことが特徴的であったためしもないが)
 逆に、私の場合は、雑多であるかゆえに先にいろいろその周辺を考えすぎるといえば聞こえがいいが、そもそもその実現化のための能力がないことに加え、先の無意識の取捨選択の基準がおかしいのか、ネタ出しをする時点で腐ったネタしか出せないのかは分からないが、とにかくいわゆる無難でつまらないものというものになってしまうし、最後には自分でもどれもくだらなく思えてボツって何も残らないなどということにも陥ってしまう。
 無能の叫びとしては、アイデアもありゃあいいってもんでもない、というような気がする、という話である。

 さて、増田が検索ワードとした『研究 案』だとすると、検索しようとしているアイデアとしては、実現可能性などを検討し、研究の実施計画を策定するなど、かなり練り込まれた状態のものを指すように思われる。
 多分、その状態になるにはすでにかなりのリソースが割かれているわけで、割かれたということは多くの場合リソースに対する対価を求めるがゆえだとすれば、その中間段階で検索結果に現れることはまれだと考える方が無難かと思われる。
 初期的な素のアイデアにおける雑多さとそのアイデアに知らず知らずにそれなりのリソースが投入された状態である程度加工されたアイデアというものは、その商用利用の観点からすれば、例えば、実現性が検討されより高いと判断されるならばより秘匿されると考えられることからすると、集めたものは基本的に玉石混淆に見えつつ、その実石石混淆になっている可能性もある。
 あまねく情報がその権利などとは無関係に抽出され、それを組み合わせるといったことが可能であれば、魅力的ではあるかもしれないが、およそ公開され抽出できるアイデアの質がどのようなものか吟味する必要はあろうかと思う。

 一方、あったらいいなが云々といった消費者のニーズといったものの蓄積という意味になるとまた変わってくるとは思う。
 その内容はマーケティング関連の情報としていたるところに解説されているはずなので省略するとして、それはそれで20年以上前のIT化などといった時代を経てほぼ吸い尽くされたわけで、もはや消費者が思いつくニーズから製品を作り出すことで大きな利益を生み出す商品は作れないと断言するような領域も存在することから、どの程度役に立つのかが問題になろうかと思う。
 まぁ、ぶっちゃけ昔の「できたらいいな」がその背後にほのかな希望が裏打されていたのに比べると、実現したものが除かれた後の失望をまとった「できたらいいな」だけが寄せ集められていると感じてしまう実情からより無意味に思えてしまうのかもしれないのだが。

 とはいえ、増田が考えるように他の着想などが流用できれば効率的なんじゃないか、とは思えるのだが、流用するには今度はマッチングが必要になる。
 先述のとおり、これらを雑多なデータ構造として単純にプラットフォームを用いて保管するシステムを構築しても十分な機能を発揮しない、という考え方もできようかとは思う。
 こういった問題を解決するために、商用化される領域などにおいては、各種条件を設定し、絞り込んだアイデアを扱うことでデータを効果的に活用することも多い。
 コメにあるたのみこむクラウドファウンディングはそういった考え方が適用されていると思うし、自動的にマッチングされ、絞込みがかかってしまうという流れでいえば、質問に回答するという形でのアイデアを集めるような知恵袋系や小町系であるとかネタを投下して議論するような古くからある掲示板形式なども適切なデータが収集できるかどうかは不明としても該当すると思われる。
 ただ、そうではなく、前後関係や背景を抜いた純粋な状態のアイデア素片を組み合わせたりしながら現実の課題を解決したり新たな何かを作り出すために機能すべくマッチングが可能かというと非常に難しいのではないか、というように思える。

 また、プラットフォームを作るには、結局のところアイデアに費やしたリソースとは別に、プラットフォームを作成し、運営、維持するためのリソースを費やさなければならない。
 なんにせよ、完全な趣味ですべてを持ち出しと自己満足(悪い意味ではなく自らの意思のみにそぐうものであるということ)によって自らが見返りなしにリソースを投入するのでない限り、リソースに見合う収益モデルを考案する必要はあると思われる。
 また、今回のように先の自己満足のためには、現状では少なからず他者の労力(システムの認知、興味、入力など)を求めざるを得ない以上、自身のみが満足するだけのプラットフォームであればよいというわけではないことも重要にはなるかもしれない。
 結局、現状としては、データが集積できることを満たすだけのプラットフォームであればよいわけではないところに難しさがあるのではないかと思われる。
 とはいえ、昨今の人工知能を用いた文章解析能力から、例えば、自社の事業範囲に合致する思いつきに近いような初期的アイデアをWeb上をクロールすることで推測的に抽出するとか購入履歴から消費者の欲しいものを推定するのではなく、店内の回遊特性や立ち止まったり手に取ったりしたが購入に結びつかなかったことから初期的アイデアを推測するといったことが一般化すれば、あらためてアイデアを収集するために他者の手を煩わせる必要はなくなるかもしれない。
 同様に、マッチングに関しても、広告業などではあらかじめ入力した雑多なアイデアを組み合わせてキーワードから類推できるキャッチコピーの候補をその理由なども含めて作成するなどという事例もあるので、いつかは解決できることなのかもしれない。

 あと、先の公開されているかどうかという部分とは別に、何らかの形で集めるとして、その集めることが可能なアイデアはどんな属性なのか、という考え方として、そもそもアイデアとして日の目をみて、他者がそれを知ることになるといったものは何らかの成功事例といった良好な結果をもたらしたアイデアであって、その背後に死屍累々と打ち捨てられた莫大な失敗作の基礎となったアイデアというのも存在するわけである。
 それらをアイデアの部分だけ切り取って抽出し、他と混ぜこねにし、データベースを作成してもあまり有益ではないのではないかと思われる。
 さらにその上に、先のように良否さえも検証されていないアイデアも混ぜるとなると、適正なアイデアがそのデータベースから抽出できるのか難しい、ということにもなろうかと思う。
 アイデアは結構無条件に作成可能ではあるだろうが、そのデータベースを用いる側は、その目途として何かをなし、良好な結果を得ることにあると考えるならば、それに合致するようなプラットフォームの構造を持つことが可能かどうか、によるのではないかと思う。
 簡単な手法としてアイデア1つ1つに優先順位をつけるとか評価システムを用いるということも可能だとは思われるが、今度は『リソースをそこにさきたくない』と増田のいうようなアイデアが、その判断、評価としてぱっと見の実現の困難さやややこしさ、面倒臭く感じるなどといった直感的ネガティブさによるものが多くを占めてしまえば、思いもよらないようなアイデアでのブレイクスルーを期待するようなシステムにはなりえないようにも思う。
 で、無理だ無理だと言っていても始まらないのだが、これも先述のとおり昨今の何が今更ビックなのかよく分からない何でもかんでもいっとけばいいとして表現されるビックデータとは別の本来のビックデータの分析であるとか、先の人工知能によるマッチングなどの先進的な技術を用いれば効果的なデータの運用が可能になるかもしれない。
 また、対象がアイデアではないが、製薬系においては失敗事例をメーカー、研究機関を超えてデータベース化し、無駄な研究、実験を行わない効率化を目指していたりする。
 余談だが、一応、ここではアイデアのプライオリティ化に近い事例として扱ってみたが、それとは別に、業態によっては、アイデアがあってもそこから行動するためにとてつもないリソースが必要であることから以下に避けるかに重点が置かれているところもある。
 某ヘンな領域では、時間がないからできないとかカネがないからできないと言うのが仕事ではなくてアイデアを出すのが仕事だということをまことしやかに提示することもあるようだが、いかなるアイデアもアイデア自体が時間がないからできないとかカネがないからできない要素で固められていることも当然ながら認知しなければならない。
 と、余談で終わる。



 あと、シンセンには新鮮なものがあるのかぁ・・・
 上海にしか行ったことがないので分からんのだが。