色作りの楽しさ

●色作りの楽しさ-1(羨ましきFornaceの秘密の色調合)

またまたガラスの話です。ここムラーノでは、シャンデリアなど大物を作る作家、ベース、お皿、グラスなどを作る作家、私達のようにガラスビーズを作る作家などに分かれる話は以前にしましたね。大物を作る作家と私達ではもちろん作業環境も違いますが使っているガラス自体も違います。特に、大物を作る工房(工場)では大きなForno(窯)を持っていますから、ガラスの色も自由に作り出すことができます(羨ましい!)

ムラーノのそれぞれの工房が秘密の色の調合?を持っていて例えばここの工房のルビー色は他のどこの工房のものより濃くて美しい、とかここの工房のこの緑はまるで翡翠のように艶やかな輝きで見たことがない…とか それぞれの工房が時間とお金をかけて作り出した色のレシピを持っているのです。

私の居る工房にもサンプルとしてこのルビー色のガラスが置いてありますが、それはそれは綺麗で、まるで石榴のようなドキドキするような濃いピンク色をしています。でもこれはあくまでサンプルで、私達には使えないのです。ビーズ製作のためのバーナーでは一気に温度が上がるため、このガラスはすぐに破裂(爆発?)してしまいます。ゆっくりと時間をかけてガラスの温度を上げられるような環境(窯)でないと扱えません。悔しい限りですが…

●色作りの楽しさ-2(ビーズ製作の色表現のための試み)

では、私達がどんなガラスを使っているかというとムラーノの中にあるいくつかのガラス製作会社が作っているカンナ(ガラスビーズ製作に適した棒状のガラス)と呼ばれているガラスです。これらにはちゃんと一色一色に名前があり、前にも書きましたが毎回同じ色が出るように職人達がコントロールしています。

ガラスビーズ製作の楽しさは、マテリアルの自在さもありますが、たくさんの色を表現できるところにもあります。カンナの色は限られていますが、想像と試み次第で新しい色合いの発見も可能だと思っています。

いつもはアクセサリーのデザインをしてからビーズ製作に取り掛かるのですが、今回はガラスの色合いの変化を試すために一つ一つのビーズ作りから始めました。私は、金自体の色配合も好きではまっていたことがありますが(ピンクゴールド、ホワイトゴールド、イエローゴールド…世の中にも結構な金(キン)の種類がありますよね)ガラスの中に金(箔)が入るとまた違った色の変化が表現できて面白い!ということを発見し、この変化にこだわって作ってみました。色のコントラストがでるように黒のガラスに金箔を巻きつけ、その上に透明色を色々と試し寒色と暖色のグラデーションになるように… 金の上のガラスの色と黒色の縁に見える透明色の本来の色が違うのが分かりますか?

同系色のビーズを使って季節によって違うイメージのアクセサリーを作るのも面白そうですし(例えば暖色のビーズだけを使って秋冬向きのネックレスなど)、全部混ぜて色鉛筆のように賑やかなアクセサリーを作るのも楽しそうです。アイデア次第で何通りものイメージのアクセサリーができそうですね。

現在のこの8色で他の形も作っていこうと思っています。ちなみに左のOliva(オリーブ形)は新しい形ですね。オリーブというにはちょっと細長い気もしますが、こちらではこの名前で通っています(笑)