星の数の國語の中から 一つ何かを探してる(前編)
修論も無事提出し,これでひとまずは終わりかなと思っていたある日のことだった.
「そういえば台湾の研究機関から借りた標本返してないな……」
そう,ぼくの修論研究は台湾+αのハチの研究だったのだが,台湾産の個体が足りないということで標本を借りていたのだ.
返却期限は2018年の4/10くらい.これはこれは,台湾に行かなきゃいけないな,そして採集もせねばなるまい.
勝手なぼくの信条だけど,大学生という身分,単独での海外採集は避けるべきだと考えている.
行きたい人間は行けばいいけど,自分はリスク回避の観点から避けたい.
誰か台湾に行きたいやつはいないかな〜と思っていると,ちょうどよく行きたいという後輩が二人.
ひめのちゃんとT君の二人である.
ひめのちゃん,これは男である.この時点で察せるところはあると思うが,個人的にあんまり好きではないので一緒に採集に行くのはちょっとなぁ……
T君.ほとんどしゃべったことないし,いい機会かもしれないな.でも近しい人間がこのT君とトラブったらしいので不安かも...
どうするかなぁと言ったところだが,頼まれたら断れないタイプである手前,この二人を連れていくことになってしまったのである...
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3/26.夜中に無事に台湾着.今回で台湾は5回目?6回目?なので,スムーズに台湾入り.さっそく沙士を飲む.うむ,ウマイ.
先に台湾入りしていたひめのちゃんがありがた〜く宿を取っていたので,宿まで行って合流.
台湾ビール飲んで寝た.
3/27.今日から採集開始だ.
朝になりました
まずは標本を返すために台中へ.
車をペペッと借りて高速乗って農試所まで行き,あいさつをして返した.タイプラベルよろしく!
さて,せっかく台中まで来たからには,埔里(プーリー)周辺で採集をしなくてはいけない.
このあたりは標高1000m前後と比較的高く,研究対象のハチは時期的に採れないことが経験則で分かっている.
ここは大人しく有剣ハチ類や甲虫類を採らせてもらおう.
ということで,行きつけのポイントへ.
ここは有名採集地で,昔はかなりたくさんの昆虫が採れたっぽいが,今はそうでもない.まあまあといったところか.
ここ4〜5年でだいぶ環境が変わってしまったので,数十年前からならどれだけ変わったのだろう.
しかし,去年のこの時期に来たときは花に虫が来ていないこともないレベルだったが,今回はそれよりも来ていない.
やっぱり早すぎたかな.
立ち枯れや倒木にはナガコバチが来ていることがあるらしいのでじっくり見ていく.
すると,立ち枯れのまわりでぷんぷん飛んでいるハチが.
あれはセイボウだな.
セイボウでした.腹端が4歯なので,ナミセイボウ属Chrysisかな.
マウント中に気付いたがなぜか腹板とその中身がまるまる消えていた...
ナガコバチはいなかった.
そのへんの花を掬いながら歩いていると,何やら大きいものが網に入った.
ヒラクチハバチの仲間かな.大きくて格好良いですね.
顔つきは凶悪.噛まれたら流血沙汰になります.なりました.
ヤンマがいたのでつい...腹短くね?
他は細々したのが少々とれてここはおしまい.後輩二人は「あれ?思ったより虫が採れないな?」とちょっと思ったらしい.この時期の台湾で,ボケーと突っ立ってても虫が矢継ぎ早に飛んでくる脳死採集ができると思ったか?夢の見すぎなんだよ.
その後はカオカクシ君曰く非の打ちどころがない宿にチェックイン.彼に紹介したのはぼくですが.
ここでだらだら長居しても大して虫が採れないのは分かり切っていたので,あさって出発とした.
そして前回虫がようけ採れた林道へ.
前回はシイか何かの花が咲いてて,ちょっと掬えば普通のハナムグリやエグリハナムグリ,運が良ければワリックツノ,コメツキ,アオハムダマの一種Arthromacra formosanaがどっさり採れたのだが,今回は花が咲いていない.
盛大にフライングだったようだ.
林縁をふわふわ飛んでいるフサヒゲベニカミキリBunothoraxもなし(和名は勝手につけました).
ちなみに後輩に「ワリック欲しいならバナトラ掛ければ?」と言ったのだが掛けなかった.欲しくないのかと思ったが,たぶん努力をしたくないだけだろう.そのくせ虫が採れないとか文句を言うから困る.
ちなみにハチはアシナガバチPolistesくらいしか飛んでない.
まあね,花が咲いていない中部に用事はないから,さっさと採集を切り上げた.
晩飯を食ってナイター.ナイターに来た虫よりも,ナイターした場所のわきにあった堆肥にガイマイゴミムシダマシが湧いてたことくらいしか記憶にない.
そして夜間採集へ...
これ思うんですけど,なんか来るたびにどんどん虫が少なくなってませんかね……?
ヒラタゴミダマの一種Catapiestus subrufescens.沖縄にいるやつと種小名がごっちゃになってどうしても覚えられない.
沖縄のやつも珍しいものではないが,こっちはそれよりもかなり多い.
これにお久しぶりーとかあいさつしてたら,T君がすごいものを見つけた.
Theopompa ophthalmica というカマキリで,初めて見た.いらないというのでもらってしまった.
そして森に入っていく.
Toxicum funginum.日本のオニツノと同種なんですね.あれ,じゃあ八重山のって……
あとはCeropria(まあformosanaかschenklingiですよね)Amarygmusとか,オオキノコ,テンダマ,などなど.だいたいいつものメンバーです.
立ち枯れメインで探していくと,なんかすごいカッコイイゴミムシが採れた.
全身メタリックグリーンで,未記録のCatascopusか!?とドキドキしたが,Catascopusですらなかった……
そんな感じでした.
3/28.
今日が中部での採集の最後(早いな).
悔いのないようにね.
まずは昨日最初に行った場所へ.
トイレしたらタマオシコガネがこんにちは.記念につまむ.
適当にスイープしてたらヒメギングチCrossocerusが入った.
いかすねぇ.
ひめのちゃんがボケっとしてるので,目線の先をみたらハチが飛んでいる.
Discoeliusくさいけど,ドロバチ難しいから全然違うかも..
なるほどドロバチが飛んでくる場所らしい.
ドロバチ格好良いけど同定むずかしいのであまり好きではないおじさんのぼくとしては,他のハチが採りたい.
でかい虫が飛んでいたのでキャッチしたらまさかのウバタマ.いらねぇ.
午後は昨晩行ったとこ.
ここは材が多いのでナガコバチを探すが,あっ,いました.
立ち枯れに大きめのナガコバチがとまっていた.網では無理そうなので,何を思ったのか,素手で,あっ,ばか,
はい逃げられましたー
ばかだね.
他の材見てヒメギングチとかアリガタバチとか採った.
最後にナガコバチがまた来てないかな〜と例の立ち枯れをみたら,
ナガコバチが
いない
でもXylocopa bomboidesの巣はあったよ!
見づらいけど,中央の黒い穴がそれ.
bomboidesは台湾のクマバチの中で一番珍しいやつで(といっても4種だけ),ひめのちゃんが採りたいって言ってたやつだ.
これね.
ここでぼくが採ってやっても良かったが,彼もせっかく台湾まで来たことだし……と思い,彼を呼びに行った.今思えばあんな性格ひねくれてるやつにここまでする道理はないのだけど.どうせ恩を仇で返されるのがオチだし.
案の定彼は喜び勇んで巣の前で頑張っていた.
ちゃんと採れたようです.良かったね.
もう一頭いたのでこれはぼくが採ろうとしたが,だめでした.ぐう.
あともう一回ナガコバチが来ていたのにまた逃げられました.おえええ.
今日はだめみたいですね.
今晩もナイター.
開始早々ムラサキシャチホコ.これ見たことなかったんだよね,まあ台湾で見るもんじゃないよね.
あとナイター中イヌが複数飛来してビビりました.
そして夜見回り.
これぞ本物のCatascopusで,sauteriという種.
ちなみに一番雑魚.でも好き.かっこいいもん.
超巨大Ascetoderesの再来かと思ったが,アカツヤツツヒラタムシでした.
台湾まで来て採るもんじゃないよね.
taiwana.今回2頭しか採れていない.
あと夜の材ってよく穴にハチ入ってるけどどうやって出せばいいんでしょうね.スプレーは無駄でした.
こんなのも.バイカダです.あまり見れるもんじゃないという話も…….
3/29.
今日から今回のメイン調査地へと決めた東部での採集.
まわりにも行ったことある人いないし,採集地もぜんぜんわからん.
それでも,行かなくちゃいけない時ってのがあるんですよ.
悠久の時をひたすら運転し,東部のクソ田舎へ.
採集地を探しますよ
あと東部は雨でした.おい!
ロケハンで終わり.T君はナイターをしようとしなかった.別に,しなくていいけど.
3/30.
スッキリしない天気.
まず,昨日行った場所にいきませう.
ちょいちょいドロバチ(チビドロくさい)が飛ぶけど,全体としてほ〜〜〜〜とんど虫がいない.
ナゾノハナがあって無限にジョウカイを引き寄せていた.仕方がないから綺麗なジョウカイをつまんでカミキリを採っているごっこをした.
死にたくなりましたよ.
午後はちょい別の場所.
ここもまぁ〜〜〜虫がいねぇ.
Xylocopa collarisのオス.ヒヨコみたいでかわいいね.キンバエなみにウジャウジャいるけどな.
で,そのcollarisさんちには押し入り強盗みたいなやつがいるんですね.
この島唐辛子,もとい,ヒラズゲンセイをつまんで,やわらけ〜って言ったらひめのちゃんが「ゲンセイって軟らかいもんじゃないですかw」って言ってきて結構イラッとした.んなこと知ってんだよ.
あとやたらヤワいのはテネラル気味だからでした.
ちなみに夜にここに入ったらマジで怖かったです.最初から最後までヤブだし,毒蛇踏んだらおしマイマイ.
そしてCeropria(formosanaな)しかいなくて頭に来た.ここクソやんけ.
しかしこの場所はのちに本気を出してくるのである……
3/31.
今日もすっきりしない天気.たぶんずっとこんな天気なんだろうな,嫌になる.
今日は全然違う場所に行くことに.
ロケハンなしなので一発勝負.海外でリスキーな真似は避けたいね.
林道沿いに歩いていくとアカメガシワが.コ(コオロギバチの略です)が来ていたのでここでしばらく張ることに.
ボケーとしてるとまあ来る来る,ココドロコロパロパポリドロドロココココという感じだ.
一頭だけやたら格好いいホソギングチRhopalumが採れた.いやマジで格好良いので.うん.
フツーのRhopalum.
適当に切り上げて,奧まで行く.
立ち枯れがたくさん.たくさんでもないか.
あっ,君知ってるよ,ヤエヤマムネマダラトラでしょ.
台湾まで来て採るもんではないわな
あと立ち枯れにハチがいた.
サメハダギングチLesticaの一種.おそらく一番普通のLesticaなんだろうね.
ナミギングチEctemnius……ではなく,Piyumaという属のギングチ.もちろん日本にはいません.
すご〜〜〜くEctemniusに似ているが,後翅のjugal lobeがかなり小さいので簡単に見分けられる.
そんなん分かるかって?ぼくも現地では完全にEctemniusだと思ってたしねぇ.
採りたかったギングチなので嬉しかったが,実は前回台湾に行ったときに採っていたという……
ハチは結構採れたが,ここではたぶんぼくが一番欲しいハチは採れないだろう,ということで午後は最初に行ったとこへ.あそこが一番採れそうなんだよな.
・・・いくらスイープしてもほんのわずかなヒメバチコマユバチしか入ってこねえ...
キンイロエグリタマムシ.網に無限に入ってくる.
もちろん欲しいハチはとれません.
あとナイターもカスでした.
後編に続く..