大沼ねこひ日記

三月の羊の製造以外(企画、営業、広報、売り子 +マイフィールドの喫茶、絵本、gallery)を担当。高崎→東京→大沼へ

夏のにおい(移住こぼれ話2)

長雨が上がって、夏のにおいがする。
夏至をはさんで前と後ろ。
言葉にならない何かが変わってゆく。


「哲学しに行くんでしょ。」
西荻窪の友だちFALLの三品さんが、引っ越す前にやにやしながら、
そう言ってくれたことがある。

三品さんはいつも、誰とも違う切り口で、私に新しい見方を
見せてくれる。まるで手品みたいに。丸い物を切り分けたら
星形になったみたいな斬新さで。

言われたときはぽかんとしたけれど、まもなくじわじわと
言葉が染みて来た。

手放した色々なもの。関係。新しい価値観。生活様式
同じ日本国内で、日本語も通じるはずなのに、外国みたいに違う。
それも見えにくい微妙な差異で、よけいに戸惑う。

家族の密度が濃い。
気象が激しい。(関東はなんて穏やかなんだろう)
自然が荒々しい。その分美しい。
月が近い。煽られる。
人との間に物理的な距離があるためか、独自ルールの人が多い。
お金よりも物物交換という経済システム。

ひとり旅が好きで北海道によく来ていたけれど、
旅した時とは全然違った。
戸惑って、何でここへ来たのだっけ、と思うようなとき、
三品さんの言葉がすっと足元を照らしてくれた。


新しいものを体感したくてここへ来た。自由になるために。
頭でわかれるひとは、こんなタイヘンなことやらないんだね。
体張って、ほとんど命がけでやった私はあほなのかしら。


わかっていたつもりの色々を洗い出すようにじゃぶじゃぶと
端から洗濯し続けた4年間。
今、ようやくお守りみたいに握りしめていた言葉を手放して、
新しい季節へ飛び込んで行く。