Web情報のフローとストックを考える

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膨大な数の新刊配本と返品の繰り返しによって、いまや書店の棚はデッドストックならぬデッドフローと化している。

いまや多くの情報がWebで検索すればとれるようになってきている。Windows 95の普及から始まる情報の蓄積が、今年でもう十年を超えることになる。Webの情報の多くは、時事や流行もの、当時発売された製品の情報など時とともに価値を減じてしまう情報だと思われる。しかしながら、そうでないものもある。

Internet Archiveに代表されるWebサイト保存の仕組みは、情報を保存してくれているが、保存されている情報にたどり着くための目次はもっていない。検索エンジンInternet Archive内の情報を検索してくれるといいのだけれども。

最近私がお世話になっているはてなブックマークは、フローとしてWebを感じさせるようになっている。RSSによる更新配信も同様。数日見ないうちにどんどん話題が進んでしまう。この状況は、まさに上で引用した状況と同じ。デッドフロー。

Webでの情報配信は、始まりのときより速報性がアピールされていた。でも、私の考えるWebの使い方のもっとも適した方法は、保存する場としてである。フローのメディアではなく、ストックのメディアであるということ。紙の本や論文を50年分保存しようと思ったら、膨大な空間が必要となるが、電子メディアならば高々、部屋一室で済む。Wikiをはじめとしたコンテンツ管理システム (CMS) の普及やWeblogプログラムのパーマネントリンクなどで情報の保存という観点からすれば、従来よりもよくなってきているけれども、その情報への誘導の仕組みでいまだ突出したものがない。

毎年、毎月、毎日、はじめてWebに触れる人が発生しているのだから、その人たちがWeb上の有用な情報を有効に扱えるしくみができていないと、今に古くからWebに触れている人と新しくWebを使い始めた人の間に情報活用の溝が生まれ、人口の大多数を占めるWebを新しく使い始めた人々から「Webは役に立たない」という評価を受けるようになり、先細るようになるのではないかと思う。