言うても仕方ないと思いつつ・・・お暑ぅございますね・・・ポスドクのNicです。


今日は久々に、日ハム以外の話題です。




今日知った、驚くべき事実・・・それは、




「わりと最近まで、標準和名には明確な定義がなかった!」ということです。




2005年9月に日本魚類学会が、定義とその使用範囲を明文化するまで、標準和名は慣習的に用いられていたのじゃった・・・(日本昔話風)。

 

日本魚類学会が定めた標準和名の定義を、瀬脳(2007)から抜粋すると、

「名称の安定と普及を確保するためのものであり、目、科、属、種、亜種といった分類学的単位に与えられる固有かつ学術的な名称である」と定義し、その使用範囲を「自然科学や教育、法律、行政等、分類学的単位を特定し、共通の理解を得ることが必要な分野での使用を推奨する」

ということだそうです。




Nicが一番知りたかったのは「標準和名も学名と同様で1種に1つの名前だよね?」

ということなのですが、上の文章を解釈すると、


分類学的単位に与えられる固有な名称とは、例えばひとつの種に対して適用される名称はひとつであるべきだということを意味しています。」 (瀬能 2007)


だそうです。




なので、「標準和名も、1つの種に1つ」ということでいいと、はっきりしてすっきりしたわけであります。




いやぁ、そうだろうとは思ってたんだけど、よく考えたら定義とか読んだことないなぁと思って、不安になって調べてみたら、案の定、最近まで定義されなくて、みんなみんなそういうもんだと思って使っていた、というわけなのじゃった・・・。




内田亨らの「新日本動物図鑑」には「動物の学名」(原文:江崎悌三、加筆:馬渡静夫)という文章が載っていますが、そこでは「和名は俗名であるからして・・・中略・・・全く国際的ではないものである。・・・中略・・・その命名、破棄などは全く自由なものなのである」とされていて、あせったしだいなのです。これはまぁ、その「動物の名称は常に学名が基本で、その次に和名を記憶するのが正当の順序であることを忘れてはならない」ことを強調した文脈上でのことですが・・・。

*注:和名という場合、標準和名だけでなく、地方名や品種名が含まれることもあります。

余談ですが、この「動物の学名」という文章はなかなかええと思います(←動物学のカミサマ見たいな人に対して超生意気発言)。なんというか、学者の当時の息遣いが前面に感じられるのです。図鑑を手にとることはあっても、この文章まで読む人はあんまいないかもしれない・・・けど、ちょいと読んでみてほしい。




今、うちが名前を付けようとしている生物は、形質は多型(色や形が生息環境によって違う)だけれども1種とされていたのですが、その違いによって和名というか呼称?が、それぞれについていることが分かったのです。その辺が混乱してて、図鑑によっては、その呼称(?)が標準和名的に記載されていたりして、いったいどうなっているのだろう・・・と、調べてみたのでありました。ウチがこれから作る出現種リストには標準和名と学名を併記するので、さほどの混乱はないかもしれません。でも、この先何年も続く調査だから、自分が直面した問題は、小さなことでもこつこつ解決していこうと思ってさ。




だいじょうぶか?説明できているか?本当は何者だと疑われてはいないだろうか(汗;)?







参考文献:瀬能宏 2007. 標準和名とは?差別的語を含む魚類の標準和名の改名をめぐって. 自然科学のとびら13号:10−11

http://nh.kanagawa-museum.jp/tobira/13-2/seno.pdf