去勢された人材

先日バンコクに行く機会があって、
そこでJAPAN FESTAなる、日本への留学誘致の会社が行っているイベントがあったので、
ちょっと見ていました。
そこではタイ人のティーンエイジャーが大好きなアイドルグループの
ダンスコピー(要は口パクパフォーマンス)をするというコンテストが
行われていたのですが、ほとんどが韓国のアイドルグループのコピーでした。
日本にもジャニーズ系、AKB系、モー娘系、Perfumeなどのアイドルがいると思いますが
それらのグループのダンスを真似するタイ人は一人もいませんでした。
JAPAN FESTAなんだから出場者ももう少し気を使ってもいいのではと思ったのですが、
憧れに純粋な10代のタイ人です。たぶんこれが現実なのです。

国内市場がそこそこあって、積極的に海外にPRしていないということもあるでしょう。
別にエンターテイメントを輸出しなくてもやっていけるという事情もあることでしょう。
なんとなく寂しくもありましたが、その要因をいろいろ考えてみました。

日本の貴族には昔からお稚児さん文化、ロリコン文化というのが根強くあります。
幼くて性の臭いを感じないものを「いとをかし」と愛でる文化ともいえましょうか。
それが次第に拡大していって、最近では一般社会でも男性性、女性性の希薄化というものが
起こっているように思います。

会社でもコンプライアンスを意識した取組の中、
男女均等という風潮もあり、男性性は希薄化しつつあります。

現在テレビを席巻しているオネエブームがすんなり受け入れられているのも
ある意味そういった土壌が社会や組織に根付き、
人々がオネエを受け入れやすくなったということもあるでしょう。

韓流スターの中でもチャングンソクさんの人気が日本で高いのは
チャングンソクさんの中性的な魅力に要因しているからに思われます。

中性的なもの好きな傾向を受けて、
日本のテレビもそういったものを取り上げる機会が増えていき、
人材を供給する芸能事務所のアイドルも
その需要に沿った人材を輩出するようになっています。

一方、お隣韓国では東方神起から始まるボーイズグループや
少女時代などのガールズグループなどセクシーで本格的な美男美女のグループが成功しています。
私から見ると日本のアイドルと韓国のアイドルの一番大きな違いは「セックスアピール」です。
男らしく、女らしく、そういう魅力を最大限に引き出しているのが
韓国のアイドルグループだと思います。

なぜ韓国ではセックスアピールというものを強く意識しているのか
いろいろ考えた上で、私が至った結論は「兵役」です。
韓国では今も38度線をはさんで同民族の隣国と戦争状態にあります。
そこで男性には兵役が義務づけられているわけです。

兵役という国防を男性に担わせている→性差を意識せざるを得ない社会
ということが言えると思います。
だから若いうちから男女の性差というものを明確に意識して人間が教育されていると思います。
裏を返せばそれだけ性別の意識が強いということで、
性差に起因する性犯罪やセクハラが日本より多いということもあげられます。

対する日本はアメリカの軍事傘下に入っているおかげで
国軍と言うものがなく、男子に兵役がありません。
そうすると性差を意識する機会というのはグッと減ってきます。
島国ということで国防に関する意識も低いというのが現状です。

でもだからこそ、性差を意識しない社会づくりができて、
共同に社会に参画できる風潮ができてきた半面、
性を意識する機会が減り、それをむしろ表面的にはないものにしようとする
傾向があります。

タイなどの国は成長過程の国で、また隣国と地続きのため、
国防意識が高く、性差を意識する機会が日本より多いのでしょう。
だから、そこの需要に満たす人材を輩出する韓国のアイドルが
現在もてはやされているのだと思います。

つまり去勢された人材というのは
平和繁栄国家日本の象徴ということなのです。

しかし、そこに私は一抹の寂しさや不安を感じます。
私がレディーにも関わらず女装時に男性性の象徴である毛を処理しなかったり
身体を敢えて鍛えたりしているのは、そんな社会へのささやかな抵抗なのかもしれません。