書評 〜M&Aで生き残る企業、消え去る企業

M&Aで生き残る企業、消え去る企業」(堀紘一、藤田勉共著)を読んだ。

この本で、堀氏が述べている「社格」については、なかなか面白かった。社格とは、人間について人格があるように、会社について社格があると見たらよい。

社格」を形成する要素には、会社の理念、社員、取引先、などの幾つかが列挙され、それぞれに解説があった。

理念は、聞こえがつまらなく、そういう意味で「軽視されがち」(堀氏)であるが、そもそも理念は普遍的に支持される「考え」がベースにあって、そういう考えがいつの時代でも正しいからこそ、今でも使われ、そして当たり前の結果として言い古されている。問題は、「実行できない人たちのほうにある」というのは同感だった。

「考え」を浸透させるのが企業文化だったり、そこで綿々と引き継がれていく人なのだろう。この話を自分が勤める会社ついて、考えてみた。僕が勤める会社は、規模も小さく、歴史も浅い。なので、今働いている人たちがそういう考えを繰り返し浸透させていくこと、特に会社をひっぱっているリーダーたちがそれを率先すること、が極めて重要である。

そう言えば、僕が今の会社に転職したときも、企業理念に惹かれて決めたところがあった。企業理念は、その内容があたり前に聞こえるだけに、口に出されることは多くない。しかし、そうだからこそ、意識的にかつ繰り返し語らないと浸透しない部分があるのだろう。

工夫も必要である。たとえば、それを実際に具現化する人が表彰されるとか、認知されるといった、仕組みの存在は効果的だと思う。

理念というのは、「今の環境が辛い」といった逆風下における処方箋になる。また、「目先の収益に追われるようになった」といった変化に対して、暴走を防ぐ特効薬にもなる。本書でも、住友家の家訓に「浮利を追わず」とあることが紹介されていた。

日本の経営者にはプロが少ない、とか、サラリーマンの上がりで短期の視点でしかリーダーの仕事をしない、といった問題意識が書かれていた。本来の姿は、長期の視点で、かつ社会的な通念での自らの存在意義をもって経営にあたることだろう。その本来の姿が、理念同様しっかりしていることは、単年度のビジネス・パフォーマンスを良くする基盤になると思った。

M&Aで生き残る企業・消え去る企業

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