詩歌と戦争―白秋と民衆、総力戦への「道」 (NHKブックス No.1191)

詩歌と戦争―白秋と民衆、総力戦への「道」 (NHKブックス No.1191)


北原白秋をダシに,貫く棒の如きおぞましいニツポンのジョジョーを裁断する好著。絶望の2013年初頭に読むにはピッタリか。しかし,「大東亜地図」なる白秋の厨二病詩はスゲェ<この国のダダイズムはココに終着したのだな。

・明治期の国家主義においては「国民にする」という訓育が課題であったのですが,大正時代のこの自由主義においては「国民である」ことがすでに前提になっているということ
・童謡のみならず民謡の創作にまで及んでいる他者の存在の消去という問題を考えていくと,実はそもそもその創作方法の基礎にある本質主義という思考が「本質的」に他者の存在を後景に追いやるものであると思い至ります。
日本青年館というのは,明治天皇昭憲皇太后を祭神とする明治神宮の造営に多くの青年たちが勤労奉仕で貢献し,それを当時の皇太子が顕彰したのを記念して,…作られた社会教育団体
・白秋の詩的世界は,一大植民地帝国の建設に進む同時代の日本の時代精神と次第に深くその基調を合わせるようになっているのだと分かります。
・「千曲川旅情の歌」に始まるいくつかの詩は,内容的には文字通りの愛国詩,戦争詩ということは出来ないけれど,当代を代表する抒情詩として人々の情感に訴え,日本の自然や人々の繊細な思いに十分な共感をかき立てることで,この国への心情的な一体感を形作るためには不可欠な構成要素とみなされている。
・この「基地国家」は,冷戦状況下での他国の独裁政治や戦争を自国にとっては好都合な前提条件とし,そこで特別に生まれる営利チャンスを自国経済の成長のステップにしてきていて,その意味でこの国家は,独裁と戦争に寄生する「経済成長」志向だったと見なければなりません。