産婦人科女医の独り言

つぶクリ院長のつぶやきです。ためになる保証はありません。

たらい考

みなさま

たらい 救急車に乗ったことはありますか?

私はですねえ、「母体搬送となった患者さん(妊婦)に同乗する」という形で、乗ったことがあります。

えぇそれは、何回も!!

結構、乗り心地は 悪い です。


非常時に乗るものですから、こちらも緊張(一応)している。という悪条件もありますが、

とにかく・・・

揺れる。

そして、 一般車両は、けっこう譲ってくれない。  

(リアル。)(かなり怖いです)


そんな中、「優先車両風」に走行するものですから、交差点などでは急な減速をする訳ですよ。

往路は、緊張しているものですから大丈夫です。

復路(帰り道)は、サイレンも鳴らさない(法令?により)ので、時間がかかるのです。

緊張もなくなっているので、、、


酔う酔う。


・・・酔う話は、おいておいて。

また 「救急車たらい廻し」の情報が入って来ました。(ちょっと前になりますが。)



これ、心がざわっとするニュースですのよ。

その意味は・・・
1、(医療関係者の感想ですが、)「たらい廻し」は、悪意がある表現である。実際には、「受け入れ不可能な状態」なのだ!!!

2、(一般市民の感想。想定。)何年も前から指摘されているのに、まだ解決されないのか。自分がその立場になったら困るから、早く改善してくれないかなぁ。

・・・などなど、いろいろな意見・感想があるものと推察します。

立場的に、1 の側ですが、自分が急な病に倒れた時を想像すると2、も他人事ではありません。

言い古された感がありますが、敢えて救急医療の現場を表すのならば・・・

○ 「きつい」(医師だけの話で言うならば、当直明けに通常業務をこなしている医師が圧倒的多数)
○ 「危険」(酔っ払いや、ケンカや、精神疾患 などで 普通にお話が出来ない患者の割合が著しく高い=救急外来では、暴力事件・未払いなどのトラブル多数)
また、自分の専門外の診療をしなければならない当直体制の病院もあり、医療過誤(ミス)/訴訟 などのリスクも高いことが予想されます。
○ 「もうからない」(当直医の経済的メリットはほとんどないですが、病院経営的にもほとんどないと思われる)

・・・で、あります。

こんなことを書くと、『当直していない開業医が何を言う!!!』と叱られそうですが、

現役医師は、こんなことをアピールしている余裕はないと思われるため、あえて書きます。
(15年以上、2次以上の救急病院にて当直業務に携わってきたしね・・・・(^_^;))

この問題に関しては、たくさんの意見やブログが出ておりますので、

私が知っている、周産期医療=産科当直の話をしようと思います。

分娩取り扱いのある病院でも、産婦人科当直医は、一人です。
そして、自宅待機(オンコールとも言う。緊急手術など当直医だけでは対応できない時に呼び出される)医師が一人。。。と、いうのが大部分の病院での当直体制でしょう。(大学病院や、総合周産期センターなどはまた別なレベルとなります。)

この一人の当直医が、夜間帯の診療に携わります。
一人で・・・
・分娩に立ち会い(傷の縫合や、新生児の診察などもその仕事です)
・救急外来をこなし(生理痛の方、お腹が張っている妊婦、内科からの依頼患者など)
・入院患者の訴え(痛い、気持ちが悪い、眠れないetc.)に対応し
・他院からの母体搬送依頼の電話を受ける

などなどなど、多彩な診療行為に携わる訳です。

突然ですが、ここでクエスチョン。

Q.「他院から、妊娠32週、骨盤位(逆子)、前期破水」で母体搬送依頼が来て、入院が決まったら、産科当直医は何本電話をかけなければいけないでしょう?

A. (1) 3本
 (2) 6本
  (3) 10本以上

ヒント;逆子の破水の場合、早めの帝王切開が予想されます。