この世は、大きな者と小さき者とが存在する。
いつか大きくなってみたいなーと、小さき者は思う。
大きな者は、小さくなってみたいなーと、思っている。
大きくはなれないけど。
小さくもなれないけれど。
運が良ければお互いの世界を覗ける瞬間があるんです。
それは緑が日一日と濃くなる、雨上がりの森で起こりました。
こっちにおいで。こっちにおいで。
いつものように、朝からくろんどの森をさまよっていると、
草むらから小さな声で誰かがささやいた気がしました。
あれ、何だろう。
じっと目を凝らすと、「ニョロリ」が、小さな声で歌を歌っているではないですか。
と、思った瞬間。すーっと自分の体が小さくなった気がしました。
あれ、あれ。
さっきまで、覗いていた小さなキノコが見上げるほどのになっている。
くすくすと、笑い声が聞こえる。
振り向くと、小さな小さな森の精がにっこりとほほえんだ。
こんにちは。
よくいらっしゃいました。
あなた、小さくなってみたいと思っていたでしょ。
さあ、一緒に小さな世界を覗いてみませんか。
差し出された手に触れた瞬間、ふっと体が浮かび上がり、小さな小さな探検が始まった。