パスポートの発給が2009年度から、県内全31市町村の役所・役場で可能になることになった。これまで実施してこなかった南魚沼市、川口町でも発給できるようになる。県は3日の県議会12月定例会で、両市町へ発給権限を移譲する条例改正案を上程する。
 パスポートの発給は県の事務だったが、旅券法改正で06年度から新潟市三条市などに順次移譲してきた。しかし、未実施の自治体の住民は引き続き、戸籍謄本を地元の役所で取得した後に県の窓口に申請する二度手間を強いられていた。特に、川口町民は長岡市の県地域振興局まで出向く必要があり、早期移譲を求める声が上がっていた。外務省によると、既に発給業務を全市町村に移譲しているのは広島、佐賀、岡山の3県。県行政改革推進室では「県民にとって利便性の高い行政サービスとなる」としている。
 条例改正案ではパスポート発給のほかに52項目の事務・権限を移譲。(1)埋め立てなどで発生した新規土地の確認(2)有料駐車場の届け出−など6項目で全市町村への移譲が完了する。また、農地売買の許可権限を新たに14市町村(計28市町村)に移譲。農地転用許可を9市町村(計12市町村)に移譲する。県は06年度から3年計画で206項目の移譲を進めている。

少し古い記事となりましたが,完全に見落としていました.同記事では,新潟県において,旅券法に基づく一般旅券の発給等に関する事務が,2009年度より,全市町村窓口で実施されることになったことを紹介.
同県HPを参照すると*1,本年度までに,県内市町村に段階的移譲が進められており,南魚沼市と川口町が残すのみとなっていた.同事務の県内全市町村移譲は,検討中の県もあるものの,実績としては全国的にも4県目.お馴染み,「条例による事務処理特例」制度の経過観察の一環として,お話を伺いに行かねば.
同事務の移譲.域内移動が限定されている方には利便性は向上する.一般的にはそれほど窓口に行き,手続きを行う頻度が高い文書ではないものの,勤務先・通学先等との関係で日々区域を越えて移動する人にとっては,従来の県庁等における発給業務が可能であることが,その利便性が高いことも想定される.また,各市町村でも同事務を実施する場合,既存の市民課等が処理する場合とパスポートセンターを設置する場合もある.そして,域内移動が限定されている方には,より身近な市町村内の支所において申請を可能とするところもある.しかし,その場合も,結局は,交付・受取は本庁・パスポートセンターとされている*2.移動は多かれ少なかれ強いられることにはなり,市町村へ移譲された場合でも,都道府県で処理していたころと同型の「マトリョーシカ」の如き,移動の入れ子構造がそこには見られる模様.個人的には,各庁舎での,選択的申請・給付が可能とならないかとも思うが,制度上・手続上は難しいのだろうか.考えてみたい.
なお,蛇足.「身分証明書,国勢調査,旅行許可証のような装置は,したがって,国家建設の要素として,徴兵制や課税と単に同等であるだけでなく,実際はそれらをうまく実施するために不可欠であり,また,時とともにこれらの活動を可能にし,あるいは少なくとも実施できるようにした行政の道具として,それらに対して上位に立つ」*3ともされるパスポート.「国家による持続的な国民の掌握の構築に果たした桁外れの役割」(25頁)を果たす文書でもあり,5月15日付の本備忘録でも取りあげた外国人登録制度とともに,一連の住民把握・登録関連諸制度と並び,行政観察上も考察を深めるに値するテーマ(と思うのは,下名だけなのだろうか).同種のテーマに関しては,個人的には.調査統計制度から接近ができるのかなあ,とも思いつつ駄文を作成してみたものの,これもまた(他のテーマと同様に)玄関先に掲げてある表札を確かめた程度の観察と記録しか進んでいない.自治行政の観察を離れるならば,取り組んでみたいテーマと観察対象.

*1:新潟県HP(行財政改革・情報公開県から市町村への事務・権限の移譲)「平成20年度に市町村に移譲する事務・権限

*2:例えば,両津市を参照.両津市HP(新着情報:2007年4〜6月)「両津・相川・羽茂支所でもパスポートの申請ができます

*3:ジョン・トーピー『パスポートの発見』(法政大学出版局,2008年)24,25頁(いろいろなお仕事の締切が目白押しの現状で,余分なもの読むまいと思いつつも,思わずページを開いてしまう)

パスポートの発明―監視・シティズンシップ・国家 (サピエンティア)

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