シューマン

 私も名前ぐらいは知っています。いや名前だけではなく「トロイメライ」を作曲した音楽家であることも承知しております。しかしそれではセロ弾きに曲を注文した猫程度のものであり、とてもシューマンを知っているとは言い難いでしょう。ロベルト・シューマン、このところ気にかかるのです。
 きっかけは吉田 秀和大先生の評論、「近代文学」1950年5月号に掲載されたもので、「言葉のフーガ、自由に、精微に」にも採録されています。最初にこの評論を読んだ時には何のことかさっぱり解らず、つい最近読んでも相変わらずチンプンカンプンでした。奥泉 光
の「シューマンの指」という小説は、シューマンを主題?にしたユニークな読み物で、シューマンという音楽家を知る上では、こちらの方が分かりやすく面白かったのですが、“作家の目”というバイアスがかかっていますから、その辺りを踏まえておかないとシューマンを知ったことにはならないと思います。まあしかし、私ぐらいのレベルにはちょうど良いシューマン入門書とも言えるでしょう。
 ともかくそれやこれやで今年になってシューマンピアノソナタのCDを3枚ほど買い求めまして、遅ればせながら天才音楽家の片りんに触れることが出来たのです。
 話はまるでシューマンとは関係ないのですが、音楽CDの値段がえらく安くなっているのには驚いています。千円台あるいはそれ以下でも買えるのにはびっくりです。おかげで3枚もいっぺんに買ったのですが、内田 光子のピアノソロはいいですね、最初にこの人のCDを買ったときには2500円ぐらいしました。まあそんなことはどうでもよく、シューマンという音楽家ピアノソナタが、とてつもなく詩的であることはこの3枚でよく分かりましたが、「解りました」と言うほどには分かりませんでした。
 私が買った3枚のCDには「ダヴィッド同盟舞曲集」や「クライスレリアーナ」、「謝肉祭」「幻想曲ハ短調」などいわゆる有名作品ばかりですが、私にとってはみな初めて聴くものであり、ある意味では衝撃的でした。やはり「トロイメライ」だけではないのでした。不覚をとったと後悔するばかりです。もちろんこの3枚ぐらいではシューマンのシの字さえも分かったとは言えず、これからも吉田大先生のような理解は得られぬままに終わるでしょうが、ピアノソナタというジャンルに興味が持てた、それが収穫でした。



ロマンチック・シューマンをたのむよ・・・。