VMware vSphere 5.1 の SR-IOV 構築手順 - (4) まとめ と SR-IOV の将来
まとめです。
SR-IOV の効果的なシナリオ
良いことばかり書いてしまいましたが、デメリットもあります。
vSphere 5.1 や KVM の SR-IOV はとてもピュアな実装です。
色々手を加えている Hyper-V と違い、VF を割り当てた仮想マシンは vMotion や HA・スナップショットなどが使えなくなります。
vMotion や HA が使えないなんて...
「仮想化のメリットが削がれる」と感じるかと思います。私もそう思います。
以前に Lync Server の例 を挙げましたが、こういった SR-IOV の対象になるようなエンタープライズ・クリティカル系のアプリは、MSCS や独自方式による 「アプリレベルの冗長化」 が必要とされ、HA や vMotion といった仮想マシンレベルの冗長化は取らないケースがほとんどです。バックアップについても、ハイパーバイザースナップショットではなく、きちんとした手法が求められます。
ブログタイトルのとおり、それなりの数の実案件に携わらせていただいていますが、仮想マシンが数百になるような大規模統合基盤・社内プライベートクラウドでは、どうしても数%くらい MSCS/WSFC を必要とするサーバーが残るものです。
そして、高度な冗長化が求められるアプリは、得てして高い性能を求めます。
SR-IOV は vMotion や DRS でバンバン移動するような一般サーバー用ではなく、
従来 "ご法度" とされていた重鎮ミドルウェア、つまり エンタープライズアプリの仮想化を実現する機能 と捉えるべきです。
具体的に思い浮かべると、、
I/O が激しかったり、サポートがうるさいものばかり。
つまり今後は、
仮想マシンレベルの冗長化で良ければ SR-IOV は使わず VMware HA で冗長化。
アプリレベルの冗長化が必要であれば SR-IOV + MSCS。
SR-IOV の将来
SR-IOV 単体だと Live Migration や HA はできませんが、
前回 のとおりソフトウェア仮想スイッチでは 10Gbps 超のスイッチングはかなり厳しく、将来的にはミドル〜ローエンド層の対応、つまり汎用化が必至です。
この部分については、IEEE 802.1Qbg (EVB: Edge Virtual Bridging) という
IEEE の標準規格があり、ネットワークベンダー各社が対応を進めています。
仮想スイッチ技術の標準「EVB」、ライブマイグレーション時の運用自動化へ
http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/COLUMN/20110920/368989/
SR-IOV 対応 NIC/CNA は量産化されました。あとはこれに VEB (Virtual Ethernet Bridges) や VEPA (Virtual Ethernet Port Aggregator) という拡張技術が加われば Live Migration や HA も実現できるようになります。
IEEE 802.1Qbg EVB, VEB/VEPA についての詳細は次の資料を参照ください。
- http://www.ieee802.org/1/files/public/docs2009/new-hudson-vepa_seminar-...
- http://h20000.www2.hp.com/bc/docs/support/SupportManual/c02044591/c02044591.pdf
- http://www.cisco.com/web/JP/product/hs/switches/nexus1000/prodlit/whitepaper...
ちなみに、Windows Server 2012 Hyper-V では SR-IOV と Live Migration の併用を既に実用化しています。こちらは VEB/VEPA ではなく、業界の誰もが「それやるか!?」と驚いた とても高度な実装 です。
VMware vSphere 5.1 で SR-IOV を利用するための要件
最後に、vSphere 5.1 で SR-IOV を利用するための要件をまとめておきます。
現行モデルであればそれほど大きな敷居はありません。
ですので現時点では SR-IOV は考えていなくても、これから仮想化用のハードウェアを調達するのであれば、将来のことも考えて SR-IOV 対応品を選んでおいた方が無難だと思います。*1
ハードウェア買い直すより、設定変更で済んだ方がマシですよね。
- NIC / CNA
- ゲスト OS
- SR-IOV VF 対応のデバイスドライバが用意されている OS
- Hyper-V と違い WS2008 R2 や RHEL でも OK
- 詳しくは VMware KB 2045704 を参照のこと
- SR-IOV VF 対応のデバイスドライバが用意されている OS
なお、上記のいくつかは VMware のマニュアルに記載がありますが、
最新情報については下記のチェックもお勧めします。
VMware KB 2038739: SR-IOV support status FAQ
http://kb.vmware.com/kb/2038739
2013.03.14 Cisco さんのホワイトペーパーを追加。一部の表現を変更しました。
2013.05.21 SR-IOV のゲストサポートに関する KB (2045704) を追記しました。