「SFマガジン」6月号「スプロール・フィクション特集」

「見下げ果てた日々の企て」の2003/05/04(http://picnic.to/~mhk/diary/diary0305a.htm#03/05/04)を見て、書店でチェックしてみた(要するに立ち読み)。

ノンジャンル、ジャンル越境的な作家・作品を集めるとなると、想定範囲が広いので結局それぞれの評者が好みのものを持ち寄っただけの漠然としたものになりやすい。『アンダーワールド』も『わたしたちが孤児だったころ』も『マザーレス・ブルックリン』も入れて良いなら、ほとんど何でもありだな……という感じ。現代文学の紹介だったらそれこそ『サロン・ドット・コム』でも読めば良いわけで、どうせなら「SF縛り」の基準でも設けたほうが良いんじゃないかと思った。『黒い時計の旅』(歴史改変)や『フェルマータ』(時間停止能力)なら可、とか。

『半落ち』直木賞落選の波紋

いまさらの話題ですが、上記のリンク先の記事は『半落ち』の結末を明かしているのでご注意。Mystery Laboratory(http://www5b.biglobe.ne.jp/~mystery/)より。

この件は、『半落ち』への賛否が「結末が現行の法制度のもとで成立するのか」という考証的な問題に集約されてしまったような語られかたをしていて、ちょっと違和感をおぼえる。

槍玉にあげられた「考証問題」に関していえば、これは主人公が「実現可能性がある」と主観的に信じられれば成り立つ話だったはずなので(作中では「実現」していないし、そもそも前提条件の成立する可能性がきわめて低い)、致命的な欠陥とは思えない。

ただ、『半落ち』はもともと結末部分の説得力が弱い話なので、けちをつけられるのは無理もない。さすがに直木賞の選考委員も「考証問題」だけを理由に落選としたわけではないだろう。鬼の首を取ったように「事実誤認」を強調したのは、林真理子側の戦略上の失策だったんじゃないかと思う。まあ、突っ込みやすいと思ったんだろうけど。