音読完了

 日曜日に二時間、月曜日に三時間弱、火曜日にも三時間弱で全てのページを音読いたしました。我ながらアホですネ。

 小説家の佐藤さんですが、アタクシはどちらかというとこの方の新書の方が好きです。個人的な視点でありながら、ちょっと突き放した客観的なところもあり、なんともいえぬ語調で読めるので、ついつい音読してしまうのです。
 だいたい新書は三百ページ弱なので、そんなに時間はかからない筈なのですが、この『ヴァロワ朝』は結構な分量があったので、音読は快感なのですが、ちょっと大変でした。
 さてそのヴァロワ朝、有名な王様はジャンヌ・ダルクを見殺したような百年戦争の勝者シャルル七世とか、晩年のレオナルド・ダ・ヴィンチを保護して『モナ・リザ』あるいは『ジョコンダ』と呼ばれる名画をルーブル美術館に残してもらったフランソワ一世とかいます。
 他には『税金の父』シャルル五世とか、その息子の『狂王』シャルル六世とか、ノストラダムスに死を予言されちゃったアンリ二世とか・・・いろいろ、いろいろ・・・
 個人的には賢王シャルル五世以外は、なんだかなーって王様が多いです。手放しで好きだなぁって言う人がいない。統計をとると前代のカペー朝に比べても、死亡年齢が低くなり、平均在位年数も短くなっている。え?一般に時代が下ると衛生状態、栄養状態が改善されて寿命が延びる傾向にあり、王様なので最前線に立つ頻度も低く、また立っても身代金なり政略なりにと使い道があるので戦死する可能性も低くなります。有名な黒死病の罹病も平民階級では高確率ですが、さすがに支配者階級はそれほどでもなく、現に王様は一人も黒死病で亡くなっていません。
 んじゃなぜなのか?佐藤さんはこれを中小企業的なストレスと言います。カペー朝の時代は領域も小さく、戦争の規模も小さく、個人的な才覚でどうにでもなりましたが、ヴァロワ朝になるとフランス全土の規模になります。そして権力も強大になり、ついにヨーロッパ全土相手とも互角に戦える実力を有するになりますが、フランス王は看板であり、精神的な支柱ではなく、代替のきく相対的なものに過ぎないのです。有体に言えば、臣下や臣民が気に入らなければ、王のいう事をいかなくてもいいや、と考える人がいたら、なまじ支配システムが完成されて王でなくても強大な権力に乗っかる事ができるので、大規模な反乱を起こしやすい。ヴァロワの王たちは必要にかられて自分たちがつくった巨大な統治機構に振り回されるという事になります。んでストレスで寿命を縮めた、という。
 面白い考え方ですネ。