無断リンク禁止禁止論の幾つかは電波

念のため書いておくと、本稿は「同種族を食べるのは自然の摂理に反するのでカニバリズムは許されない」といった、仮に結論が正しいとしても理由付けが明らかに間違っている物を指摘する物であって、必ずしも反対意見に与する物ではない事をあらかじめ断っておきます。
なにせ世間には、全否定しないと全肯定とみなす1bit人や、結論さえ気持ちよければ論証過程は一切問わない人がたくさんいらっしゃるわけで、そういう人は味方にも噛み付くので傍ら痛いんだけど「かたはらいたし」は「傍ら痛し」であって「片腹痛し」では無閑話休題


さて、世間ではなにやら無断リンク禁止を禁止しようとするモヒカン族が跋扈しているようですが、その中の幾つかは見るに耐えなかったのでこんなエントリをば。
(20070112追記)出典、多分http://yaplog.jp/tinycafeshop/archive/2のコメント欄だったんじゃないかと思うんですけど、キャッシュってどうやって見るの?

「何かを許可する事は法的に可能だが禁止する事は法的に出来ない」

いや、マジでこんな電波な事を言ってる人がいるんです。我が目を疑いました。「だから『無断リンク禁止』には法的拘束力は無い」とこう来る訳です。どうして素人がしれっとウソつくかなぁ。つまり例えば「騒音防止のために夜間の工事を禁止する協定」とか「一定時間を超える労働を禁止する法律」は法的(何のこっちゃ)にムリらしいです。
ちなみに日本では契約自由の原則により、両当事者の合意があれば、強行法規や公序良俗に反しない限りどのような内容の契約も結ぶ事が出来ます。公序良俗違反とは例えば愛人契約がよく引合いに出されます。無断リンク禁止契約は公序良俗に反しません。無断リンク禁止が公序良俗に反するのであれば、パスワード等による認証を要求するページは全て違法サイトということになりますが、そんなわきゃありません。
(20070112追記)なんかこの部分を読んで「無断リンク禁止契約なんて成立していません」とか指摘する人がいるんですけど、そんな話題じゃないです。そうであるならば見出しのような「法的にできない」ではなくて「禁止契約は成立していない」と主張すればよいし、その主張は電波ではないです。

「技術的に無断リンクが可能である以上、これを法的に禁止する事は出来ない」

「技術的に人を殺す事が可能である以上、殺人を法的に禁止する事は出来ない。」どんだけアホやねん。
こうした理屈によるならば、技術的あるいは原理的に不可能な事についてしか法的には規制できない事になりますが、そういった不可能事はそもそも法で規制する必要はないです。「光の速度を超えて運動してはならない」という法律があったら教えて欲しい、ってのは皮肉なんだけども、本当にあったら見てみたいのでやっぱり皮肉ではないのかもしれない。

無断リンクが嫌なら技術的措置で対応すれば良い」

まぁこれ単体なら電波とは言えないんですけど、「だから、無断リンク禁止という文言にはなんら法的効果がない」または「だから技術的措置のとられていないならば無断リンクが禁止されていても無断リンクしてよい」という意味でこういう事を言ってる電波がいたりするのがやれやれです。
「殺されたくなければ抵抗すれば良い。だから殺人が禁止されていても無抵抗な人間は殺しても良い。」

「『無断リンク禁止』はインターネットを壊す」

これをblogに書いている人は自己矛盾に気付かないんでしょうか。いや、blogの記事じゃなくて編集画面の方ね。インターネット上のリソースは全て自由にアクセス可能でなければならないとすれば、パスワードによる認証やhttpsはインターネットを壊す悪者であって許されない事になります。現実のインターネットには無断リンクができないものが既にあり、それでも壊れてなんかいないので、かかる主張は理由がありません。
またこの類の主張をする人は1bit人であることが多々あります。誰か一人のサイトについて無断リンクが禁止されれば世界中の全てのサイトが無断リンク禁止されるかのようなわけのわからない理解をしていたりします。