児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・不同意性交・不同意わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録・性的姿態撮影罪弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

掲示板書き込み放置が不作為による幇助とされて逮捕された事例

 掲示板の違法情報放置というのは開設行為を作為の実行の着手として正犯として構成することもできます。
 出会い系サイトの現状をみると、売春目的の書き込みが行われることを予想して開設したと評価して、誘引の正犯で立件することも考えられます。
 でも、売春誘引罪は、自分に売春をする意思があることを表示することとされているので、他人が売春する場合には、正犯にはなれないわけです。で、幇助になっている。
 あとは、なにを実行行為ととらえるかですね。作為にするか、不作為にするか。不作為にすると、作為義務=削除義務の根拠を問われます。

出会い系サイト最大手 違法書き込み放置容疑で社長を逮捕 愛知県警
2005.02.03 中部朝刊 35頁 読売新聞社 
容疑者は昨年十一月から今年一月にかけ、出会い系サイト「」に、売春目的の文書が書き込まれていたのを知りながら、文書を放置した疑い。

正犯は、5条3号の誘引罪でしょうか。

売春防止法
第5条(勧誘等)
売春をする目的で、次の各号の一に該当する行為をした者は、六月以下の懲役又は一万円以下の罰金に処する。
三 公衆の目にふれるような方法で客待ちをし、又は広告その他これに類似する方法により人を売春の相手方となるように誘引すること。

刑事裁判実務大系 風俗営業・売春防止
広告その他これに類する方法により人を売春の相手方となるよう誘引すること(三号後段)
1 人を売春の相手方となるよう誘引すること
「誘引」とは、相手方に直接接することなく、自分に売春をする意思のあることを間接的に表示して誘いかけ、相手方となる者の申込みを待つ行為をいう。本号における誘引は、「広告その他これに類似する方法により」という限定があるので、相手方が不特定であることを必要とする。
広告等の内容のみから売春の相手方を誘っていることが明らかでないときでも、広告等のなされた場所、態様などを総合的に考慮し、売春の相手方となるよう誘っていると認められれば、誘引に該当する。
2 広告その他これに類似する方法
広告に類似する方法でなければならないから、社会通念上、多数人を相手とする募集方法でなければならない。新聞、雑誌等に広告を掲載するほか、看板を出したり、貼り紙、写真を掲示し、チラシ、名刺を領布し、拡声器を使用するなどの方法が考えられる

「児童買春事件のノウハウを有料で教えて」という弁護士さん

 関東方面の弁護士さん。
 ノウハウなんてありません。FAQ読めばわかります。弁護士が嫌がる性犯罪弁護の定石。
 有料で教わっても、次の事件が来ないから、投資が回収できません。
 だいたい、死んだ人が生き返らないのと同じで、弁護人がいくら頑張っても、真の「被害者」救済・真の「被害」回復ができないんだから。

児童買春・ポルノ昨年の被害者過去最多に (読売新聞)

http://www.npa.go.jp/safetylife/syonen21/syonenhikoh16.pdf

 児童ポルノの被害者は、警察が数えるのを失念しておったということでしょ。
 今回の統計から、氏名が判った者をカウントしはじめたので数が増えた。
 氏名不詳の被描写者を全部カウントすると2〜3桁違うんじゃないですか?
 こんな状況なので、数え方を変えると急に増えた・激増したようにも統計つくれます。

http://news.www.infoseek.co.jp/topics/society/childabuse.html?d=03yomiuri20050203it13&cat=35&typ=t
児童買春・ポルノ・虐待、昨年の被害者過去最多に (読売新聞)
児童ポルノ事件の被害者も、一昨年より16・9%も多い83人に上り、児童を性的欲望の対象にする犯罪の深刻さを裏付ける形になった。

http://d.hatena.ne.jp/okumuraosaka/20050113/1105759064
児童ポルノ都道府県別 態様別 被害者数(平成15年)
    総数 頒布 販売 陳列 所持  製造
総合計 71  1   19   8  16    27
北海道 1      1          1
東北合計9      5   1  2   1
東京  15  1   7      1    6
関東合計40     6   5  13    16
中部合計
近畿合計5     2    3
中国合計
四国合計1 1
九州合計

なお、関西のテレビ局の情報番組でこの報道を後追いする企画があったらしく、電話取材を受けたが、記者の第一声は
  児童ポルノの『被害者』って誰ですのん?
  児童買春の『被害者』って誰ですのん?
でした。
 個人的法益説で独走する奥村弁護士の神経を逆撫でするような質問。
 普通の人の認識としては、施行後5年でこの程度ですかね。
 そういう認識を改める切っ掛けを作ったという意味では、まじめに被害者統計を取り始めた警察庁を評価します。

スカートを捲った状態は、衣服の一部を着けない児童の姿態か?〜児童ポルノの限界事例

 控訴審弁護で、原審弁護人も謄写していない、被告人も見ていないという児童ポルノ該当性に関する捜査報告書を吟味しています。
 単なるパンチラじゃないですよ。スカート捲りあげてパンツはいたお尻が丸見えになっている写真。
 原判決に児童ポルノ画像の枚数が摘示されているので、1枚でも減らせれば原判決破棄になるんですが、お下劣な控訴趣意書になりそうです。

1〜6の画像は、衣服を全部つけているから、3号児童ポルノには該当しない。
 すなわち、1〜6の画像は、スカートをはいた児童がベッドの上に寝て、両脚をやや開いて、スカートを腰まで捲りあげており、下着(パンティ)が露出している構図であるが、下着も含めて、衣服を全部つけている。
 法文を確認しても、3号児童ポルノの要件としては性器の一部が見えているかどうかではなく、衣服を着けているかどうかが問題になるのであるから、上記画像は問題なく衣服を全部着けているというべきである。

三 衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの

 もとより少女がスカートをはいている状態というのは、下半身の下着はパンティのみであって、それが、社会通念上衣服の全部を着けた児童の姿態である。これは、スカートを捲りあげたり、スカートの下から覗いて撮影したとしても、「衣服の全部又は一部を着け」ているか否かには変わりない。全部着けているのである。
 主務官庁である警察庁の解説においても、スカートを捲った状態については指摘されていない。

「児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律」解説
警察庁生活安全局少年課執務資料(部内用)
平成11年7月12日
警察庁生活安全局少年課
7 衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの(第3号)
(1)具体的な例としては、全裸又は半裸の児童に扇情的なポーズを取らせた姿態を描写した写真等が考えられここれが性欲を興奮させ又は刺激する姿態であることが視覚により認識することができるものであれば、児童の性器等が描写されておらず、又はその部分にぼかしが施されているものであっても本号に該当する。
(2)「衣服の全部又は一部を着けないとは、社会通念上衣服と認められる物を全く着用していないか、又は衣服の一部を着用していない状態をいう。これに該当する具体的な例として、全裸の状態や半裸の状態が考えられ、通常の水着を着用している場合にはこれに該当しないと考えられるが、全裸又は半裸の児童の身体の上に、社会通念上人が着用する衣服とは認められないような透明又は半透明の材質により作られた衣しょう等を着用している場合には、「衣服の全部又は一部を着けない姿態」に該当する。

 これを衣服の全部又は一部を着けないというのであれば、それは「パンツをはいている」状態を「パンツをはいていない」と言っているに等しく、事実誤認ないしは法令適用の誤りである。

 視点を変えて、パンティの効用に着目しても、上記画像のような覆き方であっても、下着としての効用を充分に果たしているから、パンティを覆いていると評価すべきである。

青少年条例違反で罰金10万円(不拘束)

 西日本の事件です。
 被害児童から、親に発覚し、親から慰藉料請求と被害届が出た時点で受任した事件。
 警察には発覚しているので、厳密にいうと法律上の「自首」ではありません。
 午後に相談を受けて、夜までかかって準備して、翌日の午前中に被害届が出たと思われる警察署に当たりをつけて、証拠や上申書を揃えて、弁護人同伴で出頭しました。
 逮捕後の捜査を先取りする準備をして逮捕の必要性を減殺した。刑事さん曰く「いまやっとる身柄事件が片付いたころに逮捕状請求しようとおもとったけど、弁護士と被疑者でここまでされると、警察がやること無くなって、逮捕できんようになるがなぁ〜。県警本部からも『原則逮捕』の指示も来てるし、署長も入って捜査方針決まっとるのに、段取り狂って困るなあ〜。署長にどう報告するか?」
 被害者にも相当額での被害弁償を申し入れた。
 弁護士も余裕があったので、迅速に対応できた。
 逮捕されなかったので被疑者は満足。

 この事件は軽微な事例ですが、事例によっては、逮捕して、数時間拘束してもらうというのも、お灸になるんじゃないかと思います。(ショック効果)

米最高裁でのPtoP訴訟で、エンターテインメント業界に強力な援軍

 P2Pの次の課題は児童ポルノですね。
 著作権問題は、お金の問題ですし、著作権者と仲良くなれば済む問題です。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050125-00000008-cnet-sci
Christian CoalitionやConcerned Women for America、Morality in Mediaを含むこれらのグループは、ファイル交換ソフト企業の法的責任を免除する下級審の判決が、「匿名で分散型の、フィルタリングを受けない追跡不可能なPtoPネットワークの急増につながる可能性があり、こうしたネットワークを利用した幼児への犯罪行為を容易にしたり、これらの犯罪の摘発や調査をねらった警察当局による取り組みを阻害することにもなりかねない」としている。