児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

“有害サイト”規制法案 自民特別委 議員立法で提出へ

 削除義務も、議員立法ですか?

“有害サイト”規制法案 自民特別委 議員立法で提出へ
2007.10.23 NHKニュース (全489字) 
 自民党の青少年問題に関する特別委員会は、インターネットの有害情報などから子どもを守るため、インターネットのサイトやゲームソフトなどを規制するための法案を、早ければ来年の通常国会議員立法で提出することを目指す方針を確認しました。
 携帯電話やパソコンが子どもたちにも広く普及するなかで、出会い系サイトなどを通じて知り合った相手に誘われて、子どもたちが性犯罪や暴力を受ける被害が増えています。
 こうした現状を踏まえて、自民党の青少年問題に関する特別委員会の幹部が、きょう会合を開き、有害情報から子どもを守るための法案を議員立法で国会に提出することで一致しました。
 法案の内容としては、▽有害サイトを運営する業者や個人が、民間団体などからの削除の依頼に応じないケースもあることから、規制を検討するほか▽有害なゲームソフトやDVDなどに対する規制の内容や罰則が、都道府県によってばらつきがあることから、全国共通で規制を行うことを盛り込みたいとしています。
 特別委員会は、今後、法案の具体的な中身について検討を進めたうえで、早ければ来年の通常国会議員立法で提出を目指すことにしてます。
NHK

 「子ども」と言われると総論では反対できません。
 プロバイダ責任制限法が民事責任について削除しなかったという不作為責任としている以上、刑事責任についても、不作為犯として作為義務の根拠や内容を検討すべきです。そういう議論ができるんですか?議員さん。下手すると不注意なプロバイダ・掲示板管理者が続々捕まります。

出会い喫茶の「客に手を出してはいけないというルール」

 「女性無料」なのに「客」なのか?という疑問はさておき、
 客が客に手を出すのはいいけど、店員はだめということでしょうか。
 風俗営業者が従業員に実技指導と称してみだらな行為をすること(児童淫行罪)はしばしばありますけどね。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20071025-00000060-mai-soci
調べでは、容疑者らは24日午後7時35分ごろ、同区南4西3で乗用車に乗っていた同店元従業員で胆振管内洞爺湖町の無職男性(23)の携帯電話を壊し、運転席から引きずり降ろそうと腕を引っ張るなどした疑い。
 男性は7月から同店に勤務。客の高校2年の女子生徒と食事に行くなどしたことがばれ、罰金を要求されたため、9月に逃げていた。容疑者らは24日に来店した女子生徒に頼んで男性を呼び出してもらい、待ち伏せしていたという。

「被害調書の被害者の連絡先はマスクさせていただきます」という検察官

 ↓の条文を拡張解釈して、被害者の供述の住所・電話番号が消されていることがありますが、これでは事実確認や被害弁償が妨げられます。

第299条の2〔証人等の安全配慮〕
検察官又は弁護人は、前条第一項の規定により証人、鑑定人、通訳人若しくは翻訳人の氏名及び住居を知る機会を与え又は証拠書類若しくは証拠物を閲覧する機会を与えるに当たり、証人、鑑定人、通訳人若しくは翻訳人若しくは証拠書類若しくは証拠物にその氏名が記載されている者若しくはこれらの親族の身体若しくは財産に害を加え又はこれらの者を畏怖させ若しくは困惑させる行為がなされるおそれがあると認めるときは、相手方に対し、その旨を告げ、これらの者の住居、勤務先その他その通常所在する場所が特定される事項が、犯罪の証明若しくは犯罪の捜査又は被告人の防御に関し必要がある場合を除き、関係者(被告人を含む。)に知られないようにすることその他これらの者の安全が脅かされることがないように配慮することを求めることができる。

 だいたい、刑訴法299条の2による処置は、「関係者(被告人を含む。)に知られないようにすることその他これらの者の安全が脅かされることがないように配慮することを求める」だけであって、およそ全く開示しないことは許されない。
 しかも、そもそも弁護人が被害者の連絡先を知ることは、同意・不同意を決める前提として事実確認に不可欠であるし、弁護人の事実確認は「被告人の防御に関し必要がある場合」に他ならないから、刑訴法299条の2による処置として連絡先を秘匿することは許されない。
 また、弁護人が被害者に対して慰謝の措置を講じることは正当な弁護活動であって、およそ「証人、鑑定人、通訳人若しくは翻訳人若しくは証拠書類若しくは証拠物にその氏名が記載されている者若しくはこれらの親族の身体若しくは財産に害を加え又はこれらの者を畏怖させ若しくは困惑させる行為がなされるおそれがある」ではないし「関係者(被告人を含む。)に知られないようにすることその他これらの者の安全が脅かされることがないように配慮すること」を条件とすれば支障がないから、被害弁償関係で被害者に連絡することも、非開示の理由とはならないと思います。

 まあ、弁護人としては、検事の都合のいいとこだけ請求されるというのなら、不同意にするわけですが、そうなると、検察官は、被害者を証人として請求することになって、どのみち、弁護人に住所を明らかにすることになります。

第299条〔証人等の氏名等開示と証拠等の閲覧〕
検察官、被告人又は弁護人が証人、鑑定人、通訳人又は翻訳人の尋問を請求するについては、あらかじめ、相手方に対し、その氏名及び住居を知る機会を与えなければならない。証拠書類又は証拠物の取調を請求するについては、あらかじめ、相手方にこれを閲覧する機会を与えなければならない。但し、相手方に異議のないときは、この限りでない。
②裁判所が職権で証拠調の決定をするについては、検察官及び被告人又は弁護人の意見を聴かなければならない。

 福祉犯の被害者が尋問されることは法律も予定しているから躊躇することはない。

第157条の4〔ビデオリンク方式による証人尋問〕
裁判所は、次に掲げる者を証人として尋問する場合において、相当と認めるときは、検察官及び被告人又は弁護人の意見を聴き、裁判官及び訴訟関係人が証人を尋問するために在席する場所以外の場所(これらの者が在席する場所と同一の構内に限る。)にその証人を在席させ、映像と音声の送受信により相手の状態を相互に認識しながら通話をすることができる方法によつて、尋問することができる。
一 刑法第百七十六条から第百七十八条の二まで若しくは第百八十一条の罪、同法第二百二十五条若しくは第二百二十六条の二第三項の罪(わいせつ又は結婚の目的に係る部分に限る。以下この号において同じ。)、同法第二百二十七条第一項(第二百二十五条又は第二百二十六条の二第三項の罪を犯した者を幇助する目的に係る部分に限る。)若しくは第三項(わいせつの目的に係る部分に限る。)若しくは第二百四十一条前段の罪又はこれらの罪の未遂罪の被害者
二 児童福祉法(昭和二十二年法律第百六十四号)第六十条第一項の罪若しくは同法第三十四条第一項第九号に係る同法第六十条第二項の罪又は児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律(平成十一年法律第五十二号)第四条から第八条までの罪の被害者
三 前二号に掲げる者のほか、犯罪の性質、証人の年齢、心身の状態、被告人との関係その他の事情により、裁判官及び訴訟関係人が証人を尋問するために在席する場所において供述するときは圧迫を受け精神の平穏を著しく害されるおそれがあると認められる者
②前項に規定する方法により証人尋問を行う場合において、裁判所は、その証人が後の刑事手続において同一の事実につき再び証人として供述を求められることがあると思料する場合であつて、証人の同意があるときは、検察官及び被告人又は弁護人の意見を聴き、その証人の尋問及び供述並びにその状況を記録媒体(映像及び音声を同時に記録することができる物をいう。以下同じ。)に記録することができる。
③前項の規定により証人の尋問及び供述並びにその状況を記録した記録媒体は、訴訟記録に添付して調書の一部とするものとする。

 尋問しても、住所くらいしか聞くことないわけですが、それは証人カードに書いてくれるから、本人に言わせるいわせる必要もない・
 それなら、最初から住所なんてマスクすることなく開示して、安全が脅かされることがないように配慮してくださいと注意喚起すれば足りる。
 こんなことわかっているのにマスクしてくるんですよ。
 そのくせ、日本人の場合は年齢立証として戸籍謄本(本籍地!)を付けざるをえないわけで、検事さんが何がしたいのかがわかりません。

「ポルノ禁止法違反で裁判に」県内で新手の架空請求

    「全国犯罪・児童・わいせつ物被害者の会」
なんて嘘。
 今のところ、購入罪はありません。

http://www.nnn.co.jp/news/071025/20071025004.html
ローカルニュース 2007/10/25
「ポルノ禁止法違反で裁判に」県内で新手の架空請求
 鳥取県消費生活センター米子市末広町)に、県内の二十歳代の男性から「ポルノ禁止法違反で裁判になる。このまま放置すると三年以下の懲役、三百万円以下の罰金になる」などという刑事訴訟裁判通達書と書かれた封書が届いたとの相談が二十二日までに寄せられた。同センターは架空請求として県民に注意を呼び掛けている。
 同センターによると、男性は以前に迷惑メールからアクセスしたインターネットサイトでポルノDVDを購入したことがあり、身に覚えのあることから怖くなって、書面にある「全国犯罪・児童・わいせつ物被害者の会」を名乗る架空の団体の連絡先に電話したという。
 同センターでは「書面の団体、弁護士ともに実在しないもの。身に覚えのない請求や不審な請求があった場合などは、相手に連絡せず、近くの消費生活センター各相談室に相談してほしい」と呼び掛けている。

 警察には相談しにくいし、弁護士は相談料高そうだし・・・。

組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律は難しい

 法律はこうなっている。

組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律
第2条(定義)
2 この法律において「犯罪収益」とは、次に掲げる財産をいう。
一 財産上の不正な利益を得る目的で犯した別表に掲げる罪の犯罪行為(日本国外でした行為であって、当該行為が日本国内において行われたとしたならばこれらの罪に当たり、かつ、当該行為地の法令により罪に当たるものを含む。)により生じ、若しくは当該犯罪行為により得た財産又は当該犯罪行為の報酬として得た財産
4 この法律において「犯罪収益等」とは、犯罪収益、犯罪収益に由来する財産又はこれらの財産とこれらの財産以外の財産とが混和した財産をいう。

第10条(犯罪収益等隠匿)
犯罪収益等(公衆等脅迫目的の犯罪行為のための資金の提供等の処罰に関する法律第二条第二項に規定する罪に係る資金を除く。以下この項及び次条において同じ。)の取得若しくは処分につき事実を仮装し、又は犯罪収益等を隠匿した者は、五年以下の懲役若しくは三百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。犯罪収益(同法第二条第二項に規定する罪に係る資金を除く。)の発生の原因につき事実を仮装した者も、同様とする。
2 前項の罪の未遂は、罰する。
3 第一項の罪を犯す目的で、その予備をした者は、二年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

 前払いで借名口座に振り込ませたという事実関係。

事実関係
被告人は,児童ポルノであるDVDを不特定多数の者に有償で提供していたものであるが,別紙犯罪事実一覧表記載のとおり,犯罪収益である前記DVDの提供代金合計105万円を,A銀行に開設され被告人が管理する借名口座であるB名義の普通預金口座に振込入金させて同口座に預け入れ,もって犯罪収益等の取得につき事実を仮装したものである。

 こういうのは普通、前金ですわな。じゃないと不払いとかコピーして返品とかされるから。
 こういう事実関係があったとして、児童ポルノ提供罪の実行行為は有体物であるDVDが動き始めてから受取人の利用しうる状態になるまでだから、実行行為としては、お金の授受や有償性の要素はない。販売罪じゃなくて提供罪ですから。

 そうすると、時系列的には、
  1 利益の取得
  2 児童ポルノ発送
  3 提供罪既遂
となって、振り込ませた段階では、提供罪は着手されていないので、犯罪行為により生じたもの・犯罪行為により得た財産でないから、犯罪収益に当たらないと言えそうですね。
 参考文献を紹介しますが、秋山検事も研修員もお悩みだ。

秋山実「組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律10条1項の犯罪収益等隠匿罪を積極的に適用した一事例」研修 第662号

 何とかして収益だと言わないと困りますね。
 前提犯罪が事後的に成立することが成立要件になるなんていう名古屋地裁半田支部H15.5.8が紹介されていますが、これだと、児童ポルノが未着になると仮装罪も成立しないことになりますよね。借名口座に代金入っているのに。

 さらに、前金で宅配の場合、送料が入ってますよね。買い主も納得済み。現実の送料は犯罪収益に当たりません。返信用切手を同封して申し込んだときの切手は収益じゃないから。
  福岡高裁H13.6.29
  福岡高裁H18.12.20

 SASE(elf-addressed stamped envelope 返信用切手と封筒同封)ということばを思い出しました。送料は切手になって、受取人の利益に帰するわけです。
 

有害サイト規制、賛成9割=児童ポルノの「単純保持」禁止も−内閣府調査

 一気に来ましたね。
 児童ポルノ規制に表に出て反対する人はいませんから。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20071025-00000120-jij-pol
有害サイト規制、賛成9割=児童ポルノの「単純保持」禁止も−内閣府調査
 子どもたちに悪影響を及ぼす恐れのあるわいせつ画像などインターネット上の有害情報について、内閣府が25日発表した特別世論調査結果によると、約9割が国による規制を求めていることが分かった。雑誌やDVDなどに関しても、「規制強化すべきだ」との回答が8割に達した。有害情報のはんらんを懸念し、規制強化を求める声が強まっていることがうかがえる。
 政府は7月、有害情報に関する関係省庁の検討会議を発足。年内をめどに規制を含む対策を取りまとめる予定だが、「表現の自由にも配慮しながら検討したい」(内閣府担当者)としている。
 ネット上の有害情報規制は現在、通信事業者などの自主規制に委ねられているが、国による規制に賛成の人は90.9%。反対はわずか4.5%だった。
 有害情報が都道府県条例で規制されている雑誌、DVD、ゲームソフトなどに関しても、80.8%が「規制を強化すべきだ」と答え、「現状程度」13.8%、「緩和すべきだ」1.0%を大きく上回った。
 また、児童ポルノを他人に販売・提供することを目的としない「単純保持」は、児童ポルノ禁止法の処罰対象外となっているが、単純保持への規制にも賛成の人は9割を超えた。 

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20071025-00000013-yom-soci
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20071025-00000129-mai-soci
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20071025-00000941-san-soci

有害なんだから規制するというのはわかるんですが、何をどう規制するかが問題です。
児童ポルノの削除義務についても、東京高裁と名古屋高裁が判断から逃げ回ってます。

追記
摘発された児童ポルノの実物なんかを見せれば、もっと「規制すべき」が増えたでしょう。

http://www8.cao.go.jp/survey/tokubetu/h19/h19-yugai.pdf
【資料6】
現行の法令(いわゆる児童ポルノ禁止法)では、児童ポルノの所持について、他人へ提供することを目的として持つこと等は規制されていますが、個人が自らの趣味として単に持っているだけでは処罰されません。
これに関して、個人が持つだけであれば他に害を及ぼさないため現行のままで問題はないとの意見があります。一方、被写体となる児童の権利を守る観点から、単に持っているだけでも処罰の対象とすべきとの意見があります。
※ 「児童ポルノ」とは、写真、ビデオ、DVDなどであって、次に示す児童の姿を描写したものをいいます。
1 児童による性交等の姿
2 児童の性器を触る姿等であって性欲を興奮・刺激させるもの
3 衣服を着けないか又は衣服の一部を着けない児童の姿であって性欲を興奮・刺激させるもの

Q6 〔回答票21〕児童ポルノを単に持つことも法律で規制することについてどう思いますか。この中から1つだけお答えください。
(69.6)(ア)規制すべきである
(21.3)(イ)どちらかといえば規制すべきである
( 3.5)(ウ)どちらかといえば規制すべきでない
( 1.2)(エ)規制すべきでない
( 4.4) わからない

追記
 児童ポルノに入れてしまうと、せっかく固まってきた解釈がおじゃんになります。
 規制したいならわいせつ図画とか有害図書でやればいい問題ですよ。

http://tb.itmedia.co.jp/tb/news/articles/0710/25/news140.html
「漫画・イラストも児童ポルノ規制対象に」約9割──内閣府調査
内閣府の「有害情報に関する特別世論調査」によると、実在しない子どもに対する性行為などを描いた漫画・イラストも規制の対象とすべきという回答が合計約9割に。ネット上の「有害情報」を規制すべきという回答も約9割に上った。
2007年10月25日 22時16分 更新
 内閣府が10月25日発表した「有害情報に関する特別世論調査」によると、実在しない子どもに対する性行為などを描いた漫画・イラストも規制の対象とすべきという回答が約6割に上り、「どちらかといえば規制すべき」との合計は約9割に上った。

 現行の児童ポルノ法は漫画・イラストを規制対象にしていない。調査では58.9%が「規制の対象にすべき」とし、「どちらかといえば対象とすべき」との合計は86.5%だった。一方、「どちらかといえば対象とすべきでない」は6.6%、「対象とすべきでないは2.5%」にとどまった。「わからない」は4.5%だった。