児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

児童ポルノ製造 顔写真提示で匿名起訴 起訴状にハンドルネーム=茨城

 地裁の支部名も秘匿されていますが、逮捕報道では地検の支部名が報道されていました。
 大分地裁などによれば写真撮らせて送らせるのはわいせつ行為で、相手が小学生なら強制わいせつ罪(176条後段)なんですけど、訴追裁量だとか言ってそこは弱気に脅迫罪・強要罪で起訴しておいて(強制わいせつ罪が成立するときは脅迫・強要罪は成立しないのに)、手続きだけに変な実績作ろうとして・・・という感じです。その程度の被害者保護に躍起。

児童ポルノ製造 顔写真提示で匿名起訴 起訴状にハンドルネーム=茨城
2014.06.03 読売新聞
 ◆地裁容認
 性犯罪被害者の再被害を防ぐため、水戸地検が被害者を匿名にして起訴した3件目の裁判の初公判が2日、水戸地裁支部であった。児童買春・児童ポルノ禁止法違反(製造)と脅迫などの罪に問われた男の裁判で、地裁側は「再被害の恐れがない」として実名への補正を求めたが、協議の結果、白黒にした被害者3人の顔写真を被告に示し、インターネット上で3人が使用していたニックネームを起訴状に載せる方法で匿名起訴を認めた。裁判は即日結審し、地検側は男に懲役2年を求刑した。

 起訴されたのは名古屋市西区、無職男(31)。2012年12月〜13年10月、ネット上で知り合った女子小学生2人、女子中学生1人の裸の画像を無理やり携帯型ゲーム機に送らせたなどとして児童買春・児童ポルノ禁止法違反(製造)と脅迫などの罪に問われている。

 地検側は、男が女児を狙った犯行を続けていることから「常習性と危険な性癖があり、再被害の恐れが大きい」と判断。被害者1人の実名を伏せ、ネットで使う「ハンドルネーム」にあたり、ゲーム機で被害者が使用していた愛称を起訴状に記載して2月26日に起訴し、残る2人も同様の方法で5月26日に追起訴した。

 これに対し、地裁側は「具体的で現実的な再被害の恐れがなく、起訴事実は可能な限り特定すべき」と実名記載を要求。地検側は「匿名を理由に公訴棄却の判決を出せば、高裁に控訴する」との考えを示し、5月21日に予定されていた初公判が延期になるなど、協議が続いた。

 地検側は3通の意見書を地裁側に提出。最終的に地裁側は再被害の恐れを認定した。地検側は2日の公判で、男が過去に別の女性の画像データを第三者に送信したことなどに言及しており、地裁側が判断を変更した要因とみられる。

 地検側、弁護側、地裁側は、被害者の顔写真を白黒にして男に示すことで合意。初公判では起訴状朗読後に弁護人と検察官が男の脇まで歩み寄り、3人の顔写真の添付された用紙を検察官が次々と証言台に並べた。

 水戸地検の匿名起訴で、昨年12月判決の強制わいせつ事件は地裁側が補正を要求しなかった。今年5月判決の強制わいせつ事件は、弁護側も匿名を求めたが、地裁側は再被害の恐れを認めずに実名に補正。初公判では、検察官が被害者名を書いた紙を提示し、被告が顔をそらして見ないようにする措置が講じられた。

自己の性的好奇心を満たす目的・自己の意思に基づいて所持するに至った者であり、かつ、当該者であることが明らかに認められる者の立証方法

 主観的要素については、警察からすれば、自白させることだと考えていると思います。
 自己の性的好奇心を満たす目的というのは、所持者の立場から立証されることになるでしょう。例えば、親が子どもの乳児のころの写真を持つとか、学術目的だとか、司法関係者だとかなら、「自己の性的好奇心を満たす目的」がないと言いやすい。
 そういう立場でもなく、「性欲を興奮させ又は刺激するもの」ような画像を持っていると、「自己の性的好奇心を満たす目的」があると言いやすく、「自己の性的好奇心を満たす目的がない」と言っても通らないでしょう。挙証責任が転換されているような気がします。

「自己の意思に基づいて所持するに至った者であり、かつ、当該者であることが明らかに認められる者」についても、所持罪における「所持の認識」とどう違うのかがわかりませんが、対象者が所持しているのであればあっさり認められるでしょう。「自己の意思に基づいて所持するものではない」フォルダなど、自分で作ったフォルダに入っていると、認めやすいでしょう。スパムメールに添付されている状況などを示せば否定されるでしょう。


児童ポルノ禁止法について、自民・公明・民主・維新・結いの5党による衆議院での合意案
http://taroyamada.jp/wp-content/uploads/2014/05/f7f0f191e6ccf9c3b31f1399957cac8d.pdf
第7条(児童ポルノ所持、提供等)
1 自己の性的好奇心を満たす目的で、児童ポルノを所持した者(自己の意思に基づいて所持するに至った者であり、かつ、当該者であることが明らかに認められる者に限る)は、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する。自己の性的好奇心を満たす目的で、第2条第3項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識できる方法により描写した情報を記録した電磁的記録を保管した者(自己の意思に基づいて保管するに至った者であり、かつ、当該者であることが明らかに認められる者に限る)も、同様とする。