イノベーションのジレンマ
イノベーションのジレンマ 増補改訂版 (Harvard Business School Press)
- 作者: クレイトン・クリステンセン,玉田俊平太,伊豆原弓
- 出版社/メーカー: 翔泳社
- 発売日: 2011/12/20
- メディア: 単行本
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噂どおりのスゴ本でした。序章から衝撃的な文章で始まります。
優良経営企業の場合、すぐれた経営こそが、業界リーダーの座を失った最大の理由である。
さらに、
顧客の意見に耳を傾け、顧客が求める製品を増産し、改良するために新技術に積極的に投資したからこそ、市場の動向を注意深く調査し、システマティックに最も収益の高そうなイノベーションに投資配分したからこそ、リーダーの地位を失ったのだ。
と述べられています。
本書の内容は、「Life is beautiful - 図解、イノベーションのジレンマ」 にわかりやすく書かれているのでここでは省略し、自分の気になった部分について自分の意見を書いてみたいと思います。
その前に、「Life is beautiful - 図解、イノベーションのジレンマ」 で書かれている、DVDやBlueRay/HD-DVD、iTunes のあたりは全くもって同感です。僕も「DVDレコーダが普及しない本当の理由」で同じようなことを書いていますけど。
顧客との緊密な関係
顧客の意見に熱心に耳を傾けることはビジネスの原則だと思っていましたが、破壊的技術に対しては逆にそれが失敗の原因になると書かれています。これはある意味合っていると思います。
しかし、最近は必ずしもそうとは言えないような気がします。企業側は破壊的技術を使ったどんな製品/サービスがでてくるのか、またそれにどんなニーズがあるのかわからないということも多いです。なぜなら、既存のビジネスで利益を拡大することに精一杯で、破壊的技術についてウォッチしていなかったり、また特定の分野にだけしか注意を向けないからです。
むしろ、顧客の方が、そういった破壊的イノベーション(シンプル、安い、便利)に敏感だったりします。情報ネットワークも企業側より顧客側の方が、信頼できる高速なそして深い繋がりをもっているとも思います。
登れるが降りられない
バリューネットワークの中で、上位市場には進出できるが下位市場には進出できないことを言っていますが、この原因のひとつが、マネージャー(中間管理職)にあると述べています。これはまさにその通り!だと思います。
現場のメンバは、チャレンジングな仕事(破壊的イノベーション)をしたがり、そいういった提案をするのですが、それが実現したことはほとんどなく、逆に意味ないんじゃないかというような仕事が振ってくることが多いのです。持続的イノベーションにすら相当しないものも多いですねぇ。
その原因は、本書に書かれているように、ズバリ自分の保身に走る中間管理職です。短期で評価されるがゆえに、長期的な視点で物事を考えて抜本的な改革や、新しい破壊的技術をつかうような冒険ができなくなっているのです。本書とはちょっと意味合いが違うのは、会社のことを考えていないというところ。
まあ文句を言ってもはじまらないですけど、「人を変えるのではなく自分から変われ」と言われますが、大企業になればなるほどそれは現実には難しいですよね。
そういう意味では、市場規模に見合った小規模な独立した組織をつくる、ということをやってみたいと思います。「少人数の優秀な人材でアジャイルな開発」、本書を読んでいてそんなことがたびたび頭をよぎりました。