デザイン思考の道具箱

デザイン思考の道具箱―イノベーションを生む会社のつくり方

デザイン思考の道具箱―イノベーションを生む会社のつくり方

著者は,デザイナーかと思いきや,慶應義塾大学環境情報学部教授,株式会社オプティマ代表取締役という肩書きをもった人で,インタラクション・デザインの研究をされているそうです.タイトルから,世間一般で言われるデザイナー(プロダクトデザイナー,グラフィックデザイナー,Webデザイナーなど,つまり狭義のデザインをする人)の話かと思ったのですが,もっと大きな組織運営や経営につながるようなテーマでした.

僕はモノづくりに携わった仕事をしているのですが,僕自身が最近よく感じている,本書でいう広義のデザインに対するさまざまな問題に関して言及されていて,個人的にはかなりヒットした本です.広義のデザインというのは,以下の文から汲み取れるかと思います.

デザイン戦略の本質は,デザイナーと組んで製品やサービスをつくることではない.経営,生産システム,あるいはサービスのあり方すべてに,デザイン思考を適用してくことである.

こういったデザイン思考やデザイン戦略という考え方は,GEやP&G,ナイキなどでは既に取り入れられているそうです.また,2006年のダボス会議ではデザイン戦略がテーマになっていて,ビル・ゲイツエリック・シュミット(GoogleのCEO)なども参加していたそうです.それだけ注目されているという証拠ですね.

じゃあ,デザイン思考とはなんだ?っていうのと,どうやって経営や生産システムに適用していくんだ?という疑問が浮かんできます.

ものすごく簡単に言うと,『「創造のプラクティス」を「創造のプロセス」に沿って実践していくことで,会社組織全体をイノベーションを生み出す組織に作り変えていくこと』です.そして,この「創造のプロセス」と「創造のプラクティス(道具箱)」が本書のメインテーマとして説明されているのです.

創造のプロセスとは下図のようなフローになっています.これ自体は特に目新しいものではないそうです.ただ,それぞれの実践方法などは,IDEOという有名なデザインコンサルティング会社などの手法などを取り入れたもののようです.

本書は,モノづくりを生業をされている方なら是非読んでみる価値はあると思います.特に組織が硬直化して,新しい発想によるオモシロイ商品が開発できてないのならばオススメです.

ただ,1点だけ言わせてもらうと,iPodの成功例をメインの題材としているのですが,若干後付け的な感じもします.つまり,「デザイン思考」を実践したからiPodは成功した,ゆえに,「デザイン思考」を実践すればあなたも第2のiPodをつくれますよというのはかなり論理が飛躍しすぎなのかなと.まあ直接このような論理が展開されているわけではなく,僕がそう感じただけなのですが.なので実際のイノベーションはそんなにスマートではないということを差し引いて読むとちょうどいいかもしれません.

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