分散OS: 人間を抽象化する

先週は成人式だったが、WIDEプロジェクトも今年で発足20年だそうな。

WIDEはご存知の通り(?)Widly Integrated Distributed Environmentの略で、その名は大規模で広域におよぶ分散型コンピューティング環境を実現しようという思想を表している。

先日、次世代のインターネットを考えようという集まりで、村井先生も出席されたパネルを聴く機会があった。ここ数年、ネットワーク研究者の間では、アメリカのGENIプロジェクトや日本の新世代ネットワークのように、2020年ごろの実現を目指したポストインターネットを研究しようという話題で盛り上がっている。キーワードは"clean slate design"。つまり、過去のしがらみを忘れて、「白紙」状態からインターネットを設計し直そうとしている。

閑話休題。村井先生は、分散システムをオペレーティングシステムの視点で見つめ直す必要があるのではないかという話をされていた。中でも心に残ったのが、計算機資源の抽象化ではなく、計算機が人間をどう抽象化すればよいのかという話だった。UNIXでは、uidでユーザを識別している。一方、分散システムにそれに相当するものがあるだろうか? この点に関してはPlan9UNIXと大差はない。では、電子メールアドレス?現状では識別には全然使えない。村井先生自身も解を持っている訳じゃないみたいだけど、人間の抽象化ができれば、セキュリティとか認証とかスパムとか、現在のインターネットの問題の多くが解けるのではないかと主張されていた。以前、「今OSを自作する意味は?」で、

ハードウェアがどんどん安く,高性能化している現在,汎用OSにとって,もっとも貴重な資源といったら,人的資源なのではないだろうか.となれば,OSの設計者は人的資源,つまり生産性か?を最大化するようなシステムを考えなければならない.

と書いたけど、そんな視点があるとは考えなかったな。

私の想像力では、正直、それがどこまでインパクトのあるものなのかわからなかったけど、面白いテーマなんじゃないかな。