ゆったりした大河のごとく

orion10142004-09-09

WCアジア一次予選【インド代表VS日本代表】
先発:GK川口、DF田中誠、宮本、中沢、MF福西、小野、加地、三都主、本山、FW隆行、高原
アジア杯のチームをベースに、ジーコ監督は小野、本山、高原を組み入れた。一種のアジア杯+海外組バージョンか。
それにしてもFWのスーパーサブとして使われる本山の、代表でのトップ下は初めて。守勢に回るチームを相手に、本山の動きで前線を掻き回そうという判断か。
いずれにしても高原、本山、小野という組み合わせは準優勝したナイジェリアユースでの実績はある。

[前半]
試合前から予想されていたことだが、試合開始から5バックでただ失点しないことだけを目標に懸命に守るインド代表。守り倒せばそのうち暑さと時差で日本代表は身体的・精神的に疲れてくる。
インドの作戦はそうだったようだ。
少なくともそういう意味ではインド代表のスティーブン・コンスタンチン監督は主力の2人がいない中うまくやっていたし、10代の若手を使ったりしてこれからこのチームを成長させようという監督の意図は感じることができた。
そして、ボールは日本が持つも、終始インドペースで、彼らの思ったように試合は流れた。
チームとしての力の差や選手の個の力の差は歴然としているのにも関わらず、アウェーでガッチリ守る相手に対して1点取るのは大変なことだ。早めに1点先行さえすればゲームの流れはこちらが引き寄せられるはずなのだが。息苦しいまま前半は過ぎていく。
日本もロングボールを縦に放り込んでるだけだったが、前半のまったり感ついては選手もその辺りは自覚してプレーしてはいるのだろうが。これでは本山が生きない。

それにしても、画面から感じるインドという国のゆったりした空気の”まったり感”。静かで重たい12万人という大観衆の存在感。
まるで異質な空気に包まれ異次元世界にいるようだ。ガンジスを流れる大河のごとくゆったりと過ぎ行く時間。
日本代表もボールは持てども、カルカッタコルカタ)の肌にからみつく空気に包まれて、チャンスは作れどもなかなか決定的な場面は作り出せないでいた。

インド代表も、チャンスの場面はそれほどなかったけど、インドの選手がボールを奪おうものなら、その瞬間にうなりを上げて地の底から湧き上がってくるような大歓声。
それまでの静けさがまるで嘘のように。
日本代表には俊輔がいない、アツは控え。となるとセットプレーからの得点も見込みにくい。
それにしても、日本代表は前半のCK10本すべてがインドの堅い守りとGKナンディの頑張りで封じられていた。

前半タイムアップ寸前、左サイドでパスを受けた三都主がドリブルで持ち込み右足でシュート。GKがはじいたボールを隆行が左足で蹴り込みごっつあんゴールで先制。1−0

私には前半だけでなく、後半に入っても前線の高原と隆行が合ってないし役割分担がはっきりしてないように見えた。
高原については、深く言及している「Any given sunday」さんのBLOGは興味深く読めた。


それにしても、ソルトレイクスタジアムのハーフタイムの30分間の停電には驚いた。サッカーにはよくあるとのことでジーコも中断中にサインなどして愛嬌振りまいていたが。インド到着からの歓待ぶりに気を良くしていたのだろう。気軽に(契約書にも?)サインするのはジーコの特徴ではあるけれど(笑)

[後半]
後半14分、ゴール正面からの25mFKを小野が見事に抑えを利かせてゴール。2−0。
ゲーム全体の15本のFKのうち見事な小野らしいワンバウンドの弾道だった。
後半22分、動きの良くなかった高原に代えて久保。これくらいの時間からなら腰痛でも久保は脅威だ。
後半26分、久保が受けたボールを左の三都主にうまくはたき、左から上げたボールに福西がいい位置取りでヘディングシュート。やはり久保のチープ力と攻撃の基点になる動きは一流。3−0。(いつの日かまた見たいぞ、クボヤナギ)
後半28分、田中誠に代えて藤田。これで4−4−2に。というか宮本・中沢の2バックといってもいい状態。藤田のチームメイトへのあれこれ指先・指示みると安心感がある。
後半38分、本山に代えてオガサ。4−4−2なら、オガサ・藤田のコンビがいい。オガサは少々でもボール奪われない。
後半42分、オガサの右CKに中沢が頭で流し、ファーから走りこんだ宮本の芸術的な右足のゴールで、4−0。宮本は代表2得点目。あの宮本の足技凄いぞ。ミヤモトスペシャルか?
4点とっての無失点。日本代表もインド相手に当たり前に勝ったけど、長い停電があったものの、選手たちの後半の集中力と粘り強さはアジア杯の経験が生きていると思った。ジーコは監督業に馴染み始めたのか選手交代も良かったと思う。
やはり1点取った後のリズムは日本代表側にあった。

これで、オマーンとの得失点差も逆転し一次予選突破に大きく前進した。オマーン戦は一次予選の正念場となるが、ジーコは、海外組を使ったベストメンバーで戦うだろう。
これまで、一次予選ってこんなに息苦しいものって誰かに教えられているのか、以前よりレベル下げてるのか知らないけれど、代表チームのこの戦い方は今後も続く。確かに選手は良くやっているけど。

[俊輔]
さて、このゲーム、腰の具合が悪くて大事をとって参加できなかったが、俊輔がいたらどうであっただろうか。
同じレベル以上の相手ならともかく、私にはこのアジアのインド戦のようなゲームこそ俊輔向きのゲームと思えた。守備的な相手が外へハネかえすしかないゲームでCK12本、FK15本とセットプレー多かったし。
[ヤナギ]
参加しなくて正解。見知らぬ場所への移動に弱い純粋培養のヤナギは、異次元空間に到着して熱と下痢症状でホテルで寝てるかも知れなかった。だから、シシリーに残って良かった。
シドニーでも、00年アジア杯でもそうだった。レバノンでは滞在中8割はベッドとトイレの中だった。だから、今回、シシリーに残って良かった。
トルシエの時のコンフェデでは臀部痛めて合宿から強制送還だったし、WCも決勝トーナメントには首痛めて出場できなかった。ヤナギには不向きで危ないインドなんかには一生行かせられない。だから、シシリーに残って良かった。
ジーコさん、ヤナギのことはしばらくそっとしておいて下さい。

[アツ]
このゲームでは、個人的には相変わらず両サイドにはあの二人しかいないの?といういつもの疑念が生じた。二人とも頑張っていることは確かだけど。
「どのチームとやっても同じ選手でばかりではなくてぇー。」特に左サイドは例えば、アツとか、三浦とか、三浦淳宏とか、いるだろうに(笑)
暇だから、ハーフタイムで、リフティングして12万人にサービスしてたよ。あのためにインド行ったのか?

「インド戦の内容を受けて」

『だからこそ、サッカーだけに限らず「本質を読み取る眼」が問われてくる。』という鋭利な文章には考えさせられたことは確か。
(このようなよくまとまった文面を切り取るのは良くないことだろうが)私はこの方の文章の隠れファンなのだが、久しぶりの投稿であり日頃からも好ましく思っているので少し紹介。

『少なくともジーコジャパンは、トルシエ・ジャポンの文脈では到底語りえない。むろん、それはジーコジャパンの在りかたが正しいとか正しくないとか言うのではない。ただ、いまさらジーコジャパンを「戦術」「技術」面で解釈しようとするのは愚かなことだと思うのだ。
彼らのデキを最も左右しているのは、疑いなく「精神的な充実度」なのだから。それらは、活字になったもの(取材者のバイアスが掛かったもの)から読み取るのは困難なもの。
だからこそ、サッカーだけに限らず「本質を読み取る眼」が問われてくる。』(KINDさん)

一面では、確かに。

『例えば、フィジコの「気合だ!」発言が槍玉に挙げられている。確かに、このコトバは同業者からみれば批判の対象になるのは間違いない。全(前)時代的な発言であり、プロフェッショナリズムの欠如を疑われるものでもある。だが、そんなフィジコが選手からの信頼を得ているとしたら、彼を「前時代的だ」と批判することにはさほど意味を持たない気もする。
結局重要なのは選手とスタッフとの信頼関係なのだから。
本番で空中分解したアテネ五輪代表と、本番で徐々に結束を固めていったアジアカップの日本代表。その違いは、そこにある気がする。』(KINDさん)

多くの問題や課題は積み残されたままなのだが、なんとか苦心惨憺の末、階段を少しづつ上りながらも果たして結果は出してる。その辺りの読み取りや分析、総括めいた書き方には時期的に未だ早いのかも知れないが、アジア杯を途中にはさんだ一次予選における変遷を表現した文章としては、非常に明確で面白いので紹介しておきます。