これだけは、はっきりさせたいこと

私は代替的世界観にもとづく、医療を全否定するつもりはないけど、ホメオパシーの科学的根拠がジャック・ベンベニストによって証明されたといいつづける人々は、無知あるいは、詐欺師である。

「水の記憶」事件 - Skeptic's Wiki

文献12によると当時ネイチャー誌の編集長だったジョン・マドックス氏はベンベニスト博士の主張が間違っていると認識していたにもかかわらず、公開科学論争のきっかけになればという目的で信頼のおけない論文を掲載してしまったようだ。この論文に対する科学界の反応は「物議をかもす」というレベルのものではなく、「ネイチャー誌は掲載を断固拒否すべきだった」という批判が殺到した。さらに悪いことに、マドックス氏の思惑どおり、科学的な反証が得られたにもかかわらず、ベンベニスト博士の論文は、無限希釈した水溶液にも薬効があるとする民間療法「ホメオパシー」の科学的根拠として引用されるようになってしまったのである。

それと、いくつかのサイトでベンベニストが2回の「ノーベル賞受賞候補にあがった」とあるが、イグ・ノーベル賞のまちがいだと思うのだが、どうだろうか?

追記

FREEさんのコメントのあと気になって、ベンベニストの経歴を調べてみた。ほんとにノーベル賞の候補になった可能性も憶に一つであろうが、ないわけでないからである。一つわかったのは、ベンベニストが「水の記憶」でノーベル賞の候補となったと主張してわけではかならずしもないことである。例の事件の前はけっこう著名な学者だったようだ。

Obituary: Jacques Benveniste | Science | The Guardian

From 1965 to 1969 he worked at CNRS, the French cancer research institute, and from 1969 to 1972 at the Scripps Clinic and Research Foundation in California. He made a name for himself as one of a team that isolated a blood hormone called platelet-activating factor.
(彼は血小板活性因子という血液ホルモンを分離したチームの一員だった。WIkipediaの英語版にはベンベニストが発見者とされている。)

Benveniste published 230 scientific papers, many of them in reputable journals. Towards the end of his life he compared himself with Galileo and repeatedly stated that he was in the running for a Nobel Prize. He won not one but two of the satirical Ignobel prizes awarded by a gang of Harvard scientists - the 1991 chemistry prize for showing that water has memory, and the 1998 one for a paper showing that information can be transmitted over telephone lines and the internet.
(彼は230の学術論文を出版し、その多くは名立たる雑誌に掲載された。人生のおわりには、自分をガリレオになぞらえ、ノーベル賞への途上にあるとくりかえし語った。)

この記事ではノーベル賞うんぬんは、彼の主張として書いてあるが、以下のように実際に候補にあがったかどうかは別として、噂になってはいたことを指摘する文章もある。ただし、著作権が"What Doctor Don't Tell You"なる団体であり、ベンベニストと交流があることが、明記されている。

Healthy.net - Page

National Institute for Health and Medical Research (INSERM) - the most prestigious organisation in all of France - he distinguished himself by discovering PAF, or platelet-activating factor, which is involved in allergies such as asthma. By the age of 50, Benveniste had received one of the most prestigious scientific honours in France. Rumour also had it that he was in line for a Nobel prize.

印象としては「水の記憶事件」以前のベンベニストは相当優秀な研究者であったことは確かだが、彼の周囲でもこの程度の表現であるとすれば、彼がノーベル賞の候補に実際にあがった可能性はそう高くないのではないだろうか。ましてや、2回候補にあがったというのは、イグ・ノーベル賞と勘違いしている可能性が高いように思う。

ただし、上記は推測にすぎないので、反論があれば歓迎するし、もし、ノーベル賞の候補になったという証拠があれば(状況証拠でもかまわない)、教えていただければうれしい。

でも、次のようなのって、酷いんじゃない。

http://www.homoeopathy.co.jp/introduction/world_T20021203.html

BBCによる厳密な実験結果が「水には記憶がない」ということを支持するものであったため、ホメオパシーには科学的根拠がないというこれまでのホメオパシー反対論者の唯一の根拠を後押しする形となりました。奇しくもベンベニスト博士が水の記憶の論文を発表した後に、「あの実験は幻想だった!」とする反対論文が紹介され、ベンベニスト博士が世界の物笑いの種となったように、今回もアイルランドの科学者の結果が否定される形となりました。

ベンベニスト博士は、一時はノーベル賞候補と言われながら(実際に何回かノミネートされていた)、現在では科学界から完全に無視されている状況となっています。しかし、それはホメオパシーの科学的根拠がないということであり、ホメオパシーが治癒をもたらすという事実を否定するものではありません。今の科学ではホメオパシーを説明できないということだけです。しかしながら、ホメオパシーを支持する科学者は、ますます「物笑いの種になる」、というのが世界の実情となっています。

多分、科学的根拠という意味を誤解してます。これを読んで下さい。「ホメオパシーが治療をもたらすという事実」が統計的に否定されているのです。

ホメオパシーFAQ - Skepticism is beautiful

6. 現代の科学では分からないというだけでは?

確かに現代の科学でわからないことは多いと言えます。意外かもしれませんが、現在認可されている薬でもどのような仕組みで効くのかが分かっていない薬もあります。では、なぜそのような薬が現代科学の権化とも見られている西洋医学で用いられているのでしょうか?

これは「3. 別に科学的根拠がなくても治ればいいのでは?」で説明したように、仕組みがわからなくても、効くか効かないかの“事実”を確かめることができるからです。よく読んでいただければ、現代の科学で仕組みがわからなくても、よく効く薬は「現代科学で認められた」薬になることは理解できるでしょう。

つまり、現代科学で認められない薬というのは、試験をしていないか、副作用が大きいか、検出するのが難しいほど小さい効き目しかないか、全く効かないかということです。

ホメオパシーは二重盲検などのきちんとした試験をして、副作用は確認されていませんから、検出するのが難しいほど小さい効き目しかないか、全く効かないかということになります。

現代科学で分からないかもしれないのは、効く仕組みであって、効くか効かないかではありません。