北園克衛

osamuharada2005-02-02

アヴァンギャルドの詩人、北園克衛を知っていますか? ぼくは高校1年の時(凄い昔ですね)に、通学の途中、青山学院のはす向かいにあった詩専門の「中村書店」で知りました。はじめに買った詩集がこの写真の『若いコロニイ』でした。装丁に引かれてのジャケ買いでしたが、その詩を読んですっかり夢中になりました。やがて熱病に罹ったようになって、散歩にも旅行にもたずさえて暗記してしまいました。それは、例えばこんな詩。

      朝のCHANT

   シィプルの上に
   朝の郵便機が光りの直線を引いた
   遠い山のアミのために
   僕はコロナのタイプライタアを打ってゐる
   一本のアブダラを喫ふそのひまも
   スヰトピイの花花の上で
   電話のやうに唄ってゐる
   ガラスのやうな
   透明な人よ

この詩集、高校生のぼくが古本屋さんで買えたのですから、500円くらいでした。それが今はン万円になってるらしいのです。ともかく他の北園克衛の詩集や同人誌『VOU』(これは当時古本で1冊50円なり)も今では手に入れるのが困難なのですね。特に装丁デザインでも素晴らしい仕事をしていたので(なにせジャケ買いです)、現代のグラフィック・デザイナーの間でも大変有名になっています。これまた昔話ですが、ぼくの36歳(1982年)に、『ぼくの美術帖』という自著でとり上げた頃は、北園克衛は時代から忘れ去られていたような感じがしたものでした。
詩集というものは、だいたい100とか200部くらいの発行部数なので、古書店で値が上がってしまったら、もう今の若い人には買って読むことができなくなるんじゃないかと危惧して、ぼくは詩人の菊池肇さんと、デザインのほうのぼくの弟子である吉本義巳君の3人で、“北園克衛.com” なるサイトをつくりました。まだ完全ではありませんが、全詩集と短編小説など順にデータ化して、誰でも読めるようにしています。もし興味がおありでしたら是非読んでみてくださいね。
http://www.kitasonokatsue.com