スペインのタイル

osamuharada2005-10-03

4年前パリに滞在した時は、写真学校に通っていた娘のアパルトマンが、オベルカンフ通りにありました。ある日その通りの先をブラついていたら、スペイン製タイル専門店の飾り窓を見つけて、美しいターコイス・ブルーのタイルの展示に目が釘付けになりました。店の奥にも様々な色彩と文様のタイルのサンプルが山のようにあります。もともとスペイン陶器が好きだったので、すぐにタイルも同質の美しさだとわかります。中に入ると夢中になって一つずつ手に取り眺めては、唸ってしまいました。色もデザインも、南の国の明るさに満ち満ちています。ブルーもグリーンも濃淡の幅が広く、彩度は鮮やか、色合いだけでもうっとりするほどです。イスラム時代の名残のアラベスク模様も、スペイン風にゆるく崩れていい感じ。いくつもある引き出しの中にもまた色々なサンプルが、これでもかというように、めくるめく出てくるので実に興奮してしまいましたね。2階へあがる階段の壁にも貼ってあるので、見とれてなかなか先に進めない。やっと2階にあがると、実際にタイルを張った大きいカウンターや棚、鏡、洗面台まわりの見本が設置されてあり、これらを見た頃には、いよいよこの店に住みつきたくなっていましたよ。
奥のオフィスの壁にもタイルのサンプルは達していて、親切な店のお兄さんにどうぞと言われて、くまなく遠慮なく見せてもらいました。ここはもうパリではなく、スペイン南部のアンダルシア地方ですよ。宝の山に入りながら、このままおめおめと帰る気にはなれず、通訳がわりの娘に交渉させました。つまりタイルというものは、一枚ずつでも売ってくれるものや否や。するとまたあっさりどうぞということなので、喜び勇んで買っていると(一枚どれも5百円くらい)ダンボール2箱分になってしまったので、重たいから船便に頼んで、凱旋気分で帰ってきたようなわけです。お兄さんの顔にはちょっと呆れた感がありましたけれど。
去年、島のアトリエの横にBARをつくったおり、漆喰壁の一部にはそのタイルのいくつかをオブジェのようにレイアウトして貼り付けました。縦に2列、26枚を選びました。写真はその部分です。やっと落ち着く場所を得て、タイル達も心なしか喜んでいるように見えました。