宗達の伊勢物語

osamuharada2008-01-13

今年も早々から嬉しいことに、出光美術館が絶好調ですよ。 むかし男ありけり、と云えばもちろん在原業平の、ラブロマンス『伊勢物語』をモチーフにした絵画群。屏風や色紙など、特に俵屋宗達とその工房の作品が素晴らしい。 平安王朝の貴公子にして歌人在原業平(ありわらのなりひら)を主人公にした、有名な歌物語ができてから、六百年後の江戸時代初期に、ルネッサンス(文芸復興)が起きた。 宗達ダ・ヴィンチミケランジェロに匹敵する大芸術家といえるでしょう。 絵画史上、平安時代に生まれた大和絵の技法を踏襲して、さらに大胆でモダンに発展させた、日本民族が誇るべき天才です。先月の尾形乾山もそのルネッサンスの一員といえますね。 水を敷いて、その上から絵具をたっぷり滲ませた溜込たらしこみ)の技術は、日本の自然感を表現するに、これ以上は考えられないほど素晴らしい技法です。その宗達溜込技法が圧巻の、今展覧会の目玉は、出光美術館蔵と住友の泉屋博古館蔵、二つの「伊勢物語図屏風」。まったく同じ絵であるのは、人気商品だったからで、多分他にもまだまだ存在していたからでしょう。 さらに現存はしていないけれど、もともと宗達伊勢物語「絵巻」が必ずあったはずです。その絵巻でお馴染みのそれぞれシーンが、独立した色紙になって、これもまた沢山の愛好家の需要があったと思われます。 今より四百年前の大芸術家が、千年前の世界を夢見る想いで描いているわけですから、ここには久遠の時が流れています。それなのに宗達の絵の前にたたずむと、たったいま描き終えて筆を置いたばかりのような、瑞々しいフレッシュネスを感じさせるのは何故でしょう。時を超え、次元をも超越して存在するもの。これこそが神韻の芸術というものなんでしょうね。 
出光美術館 http://www.idemitsu.co.jp/museum