ニコ生で白石晃士の『暴力人間』を見た。

おーーーとこーーーーみちーーーー!おーーーーとこーーーーーみちーーーーーーーー!エンドロールとともに歌いだす輩が満載。(コメ消してたのでわかりませんが、弾幕できてたみたい)白石監督本人が最高傑作と言っておられる『暴力人間』(97年)。これまでなかなか観れる機会がなかったのだが、ホラー特集ということでニコ生で昨夜公開されたので鑑賞。

監督自身もコメントで語っていたが、この作品は、ぴあフィルムフェスティバルで、本物のドキュメンタリーと思われてしまって落選してしまったという背景がある。本作品以外でも氏の作品は、モキュメンタリーという体制をとっているが、「人間が何か驚異的な力に取り憑かれる」といったことを描いていて、『オカルト』であれば、日雇い労働者(派遣)の男が殺人事件に遭遇し妙な力を得て使命を果たすまでを、最初はヘコヘコしながら、時にビールをあおり調子に乗ったりするという人間の裏面を描いていたし、「コワすぎ!」の工藤Dにしても、命をかけながら、得体の知れないものへの執着を描いている。

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だからモキュメンタリーと言っても、とても生々しく人間の一瞬を描いている。『暴力人間』のセルフリメイク『バチアタリ暴力人間』(11年)の導入部、暴力人間の笠井と山本は白石監督に「お前あれは本当なのかよ本物なのか?」と自分の作品について問われた白石監督は「本物だ」と言う。モキュメンタリーではあるが、先に行ったように、人間の裏面や執着心のようなものをうまく描いている。そう言った意味では「本物だ」と言っても嘘にはならないと認識しても良いような気がしてしまう。


前段が長くなったが、本作『暴力人間』は、『バチアタリ暴力人間』とストーリーは殆ど変わらない。ただ、「バチアタリ」はある程度メジャーになってからのセルフリメイクということもあり、観客を楽しませる面においてボリューミーになっているし、余裕があるし見せ方もうまい。こちらはこちらで大傑作。対して『暴力人間』には、そういった余裕のようなものは感じられない。ひたすら「怖い」「痛い」「生々しい」で埋め尽くされている。白石監督作品のキャラの付け方は毎度うまいなーと関心するのだけど、今作の暴力人間・笠井と稲原についても”マジでヤバい人”(元ヤンらしい)のように感じられ、映画部員が本気で”遊ばれている”と感じてしまった。映像と音楽もチープながら、圧倒的な暴力描写。ビビったのはドリルドライバー?って言うんですかね。暴力人間の先輩のような人が白石さんのケツにぶち込んでいるときに、あれで首筋ギリギリまで勢い良くドライバーが回転しているところと、ラストシーンの暴力のときに電柱にぶつかっちゃうシーンが凄く怖かった。それに、音も加工一切無しということで、演出なしの本物の音がリアリティを引き立てている。

そのリアリティさってのは、白石監督の壊れた眼鏡からも察するに、本気で金がなく映画にのめり込んで作品を作っていたのだろうと感じられる。だから、それ以降のいくつかの作品が物語っているように、よくわからないモノ・コトへの執着のようなものが、この映画にはギュウギュウに詰め込まれているのだ。いや〜〜、これは凄い傑作ですね。大傑作です。


総括すると、セルフリメイクについては窓口が広がり、(暴力人間よりは)多くの人が楽しめそうな作品だし、原作の『暴力人間』の”生々しさ”は圧倒的であるし、青春映画でもあるのではないだろうか?んーーこれは超えられない作品と本人が言うのも頷けますね。どちらも最高だし大傑作です。

また、次作の『ある優しき殺人者の記録』がそそろそ公開ですが、こちらも凄まじい気配がします。公開が待ち遠しい!!おーーーーとこおおおおおーーーーみちーーーーーーーーーーー!!!!

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