ハレルヤという名前のシフォンケーキ

 個展の展示方法が大体決まったので、あとはもう少し中身を練るだけだけ。全力を尽くして面白いと思うことをするけれど、それが果たして他の人に面白いと思ってもらえるか、見当がつかない。見当がつかないけど、もし面白いって思ってもらえれば、見当がついたことをやるよりも、きっとすごく嬉しい。
 なんじゃこれ、とか。もっとこうすればよかったのに、とか。意外に面白かったじゃん、とか、いろんなふうに言ってもらいたいな。遠慮なく。挑戦ってこういうことなんだろうと思う。
 今日は、ハレルヤという名前のシフォンケーキを買ってきて、家でいただいた。ふわふわの食感と卵の優しい味と甘すぎない滋養に満ちたおいしさ。ケーキには詩が添えられている。ガケ書房の小さなスペースで販売をしていた。1日限定、売切れるまで。確固とした世界観を持ったお菓子ブランドNOWHEREMAN。また来月の販売では違うお菓子が登場するそうです。ブログで情報を要チェックです。
 優しいお菓子は無条件にわたしを幸せにしてくれるのに、わたしは一体何やってるんだろう…と、ここに書くのも情けない、しょうもない憂鬱さにとらわれて、自転車をこいで帰っていた。こんこんと内から湧き出る表現したいという思いは、達せられなかったら溢れて溺れそうになるけれど、表現し続けていれば、それはそれで、自己満足という言葉に絡めとられて空虚な思いを抱くときがある。
 日が暮れかけた鴨川は、暑くも寒くもなく、ちょうどよかった。川の音を聞きながら、個展準備が終わってから読もうと思って買った1Q84・Book3を開いて読み始めた。春樹の、野生のケモノの筋肉のように無駄のない鍛え上げられた華やかな文章。文のひとつひとつを美しいと感じながら、自分とまったく関係ない世界に引き込まれていく。自分が薄れて周りの風景に溶けこんで行く気がした。個展準備で頭がいっぱいだったから、久々の読書だった。わたしがわたしで在り続けることは、しんどいことなんだ、と思った。ときどき、わたしから離れたい。逃げ出したい。かけがえのない幼子を人にあずけてひとときの自由を味わう母親のように、わたしはわたしから離れて、のびのびしたい。離れられない大切なものなのだけど、ひとときの換気がわたしを生きやすくする。離れて帰ってきたら、再び愛せる気がする。で、ひとときあずかってくれるのが小説なんじゃないかなあ、などと思うと少し元気になった。
 小説って何だろう。そのことについて、作家の高橋源一郎さんが毎晩24時にツイッターでつぶやいています。ツイッターに登録してなくても、リンク先を読むことができるのでよかったらどうぞ。
 http://twitter.com/takagengen
 1回に140字しか書けないから、何かを論じるには言葉足らずで説明も足りないけれど、その分、自分で考えることができる。毎晩、いろいろなことを思う。
 さて、何だか暗いけど、とても腹が決まって落ち着いた気分です。目の前の自分のやるべきことを一つ一つ精一杯やっていきます。