映画『Happy Endings』
(監督・脚本:ドン・ルース)
★★★
DVDのジャケットには「『熟れた果実』の監督が送る」と書かれていて、『偶然の恋人』がなかった事にされているドン・ルースの最新作は、確かに『熟れた果実』に回帰したかのようなブラック・コメディなのであった。
ドン・ルース組であるリサ・クドローの血みどろ交通事故シーンに「彼女は死んでいません。だってこの映画はコメディだし」という字幕が被さるオープニングと、とってつけたような薄ら寒い「幸福な結末」が訪れるエンディングは、彼の洗練された悪意がたっぷりと堪能できる素晴らしい仕上がり。ただ、その間の大半が普通の群像ドラマになってしまっているのが惜しいなあ。「堕胎」や「近親相姦」や「同性愛」といった扱っている題材が「らしさ」に溢れているだけに尚更。まだ『偶然の恋人』での不調を引きずっているんだろうか。
『熟れた果実』ではモノローグの使い方が巧みだったが、本作では前述したように字幕の使い方が巧み。『チアーズ!』のボンクラ君でお馴染みのジェシー・ブラッドフォードは、ズーイー・デシャネルと共演した『Eulogy』に続き、こういう捻くれたインディー・コメディ映画の常連になってきた感がありますな。好演。マギー・ギレンホールが歌うビリー・ジョエルのカバー「Honesty」「Just The Way You Are」が非常に印象的。