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前作『Valor Del Corazon』から約1年という短いスパンで届けられたジンジャーの最新ソロ・アルバム。非常にパーソナルな楽曲が満載だった『Valor Del Corazon』から一転して、今作ではジンジャーのロックンロール・エンターテイナーとしての側面を前面に押し出した、シルヴァー・ジンジャー5名義で発表された傑作『Black Leather Mojo』の正統な続編といえる内容に仕上がっている。
しかも、現在の自身のバック・バンドに「Sonic Circus(音波のサーカス)」なんて名前を付けているだけあって、これは英国の伝統であるミュージック・ホールの現代的な再現でもあるのだった。バラエティに富んだ楽曲群の中に40名を超えるゲスト陣が入れ替わり立ち替わり登場する、ビートルズの『Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band』に良く似たアルバム構成になっているのは、つまりその証左なのである。
ソングライティングの方も『The Wildhearts Must Be Destroyed』前後の不調を吹き飛ばす鋭い切れ味で、少なくともここ5年ではベストといえる出来。チープ・トリックがプログレッシヴ・ロック化したかのような「This Bed Is On Fire」を筆頭に、お得意の転調を繰り返す長尺曲が多く収録されていることからも、現在の彼の充実ぶりを窺い知ることができるだろう。「Can't Drink You Pretty」では、ブライアン・セッツァーの「Take A Chance On Love」そっくりなイントロと辻褄を合わせるように、途中からきちんとジャズ・スタンダードの「In The Mood」に雪崩れ込むなど、アレンジもいちいち遊び心満点で楽しすぎるったら。
前作の唯一にして最大の問題であった貧弱な音質も改善されており、2007年を代表するロックンロール・アルバムとして万人にお勧めしたい傑作。サンスクリット語で「マンコ」を意味する「Yoni」をアルバム・タイトルに冠してしまう中学生レベルのユーモア・センスも含め、相変わらずジンジャーはどこまでもボンクラで信頼できる野郎だぜ。全12曲61分。
音楽データベースをみんなで作ろう♪さんのレビューも必読のこと。