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映画『40オトコの恋愛事情』(監督:ピーター・ヘッジス)観賞。★★★★★。
妹沢奈美氏が『Heartbeat Radio』の日本盤ライナーで間違えたせいで、ソンドレ・ラルケが『40歳の童貞男』のサントラを手掛けたって誤解が広まってるらしいけど、彼がサントラを手掛けたのは同じスティーヴ・カレル主演映画でもこっちの方!『The 40 Year Old Virgin』じゃなくて『Dan In Real Life』! 日本でも劇場公開しておけばバッドリー・ドローン・ボーイにおける『アバウト・ア・ボーイ』程度のインパクトにはなっただろうに、こんな投げやりな邦題でCS放映のみとは勿体ないにもほどがあるぜ。そりゃあ間違われるっつうの。
ソンドレ・ラルケのように捻ったコード進行/転調を使いまくるシンガー・ソングライターはたいていピアノをメイン楽器にしがち。しかし、彼はあくまでもギターをメイン楽器にしている点が面白い。ギターはピアノよりも(12平均律上においては)遥かに制限が多い楽器である。しかし、ピアノは自由度が高い分だけに逡巡を生みやすく、突き詰めていくと必要以上に複雑な楽曲を作ってしまう危険性があることも否めない。彼はそこを踏まえた上で、ギターが持つ“制限”をうまく利用することによって風通しの良い楽曲を作り続けている。*1
Simply Deadさんが指摘していたように、本作は一歩間違えると『マーゴット・ウェディング』のような傷口に塩を塗りこむような話にもなりかねない。しかし、ピーター・ヘッジスはそれを前作『エイプリルの七面鳥』と同様に必要以上にメランコリックになりすぎずに軽やかに描ききっており、まさにソンドレ・ラルケの楽曲群にも通じる味わいなのだ。この2人のコラボレーションは必然だったとしか思えない見事なマッチング。
ちなみにサントラには劇中でスティーヴ・カレルが歌い上げているピート・タウンゼントのソロ・ヒット「Let My Love Open The Door」のソンドレ・ヴァージョンも収録されているので、映画を観た人はこの為だけにでも買い。レジーナ・スペクターとのデュエット・ナンバー「Hell No」なんかも収録されているので、未見の人だって要チェックですぞ。