EoMの魔術

 和訳を再開。RQ2をマングースに注文したので、劇的な変化が予想される戦闘まわりはすっ飛ばして、EoM独特の魔術のほうを優先することにしました。
 以前購入したときに書いたような気もしますけど、EoMでは魔術ルールが旧版ストームブリンガーの路線に回帰しています。つまり召喚一本槍(後続サプリでルーン魔術や夢関係が追加されますが)。これは私としては歓迎したいですね。
 全体としてルールが洗練されて運用しやすくなった「エルリック!」と「ストームブリンガー第5版」ですが、こと召喚にかぎっていえば、デーモンや精霊を単体召喚するのに必要なマジック・ポイントがPCのものの数倍に達するため、かなり重たいものになっていました。その主たる理由には、能力値ひとつごとにMPを割り振らなければいけなかったことがあげられます。
 対策として、たとえば生け贄をささげてMPをブーストするという手段がありそうなものですが、そのあたりはフォローされずに終わってしまいました。このため、BRP的な呪文の行使が単発プレイでは主体になるという今ひとつストームブリンガーの特長を生かし切れない不満があったのは事実です。
 今回、デーモンの召喚に必要なマジック・ポイントは、1ポイント費やせば全ての能力値に1D8ずつつくようになっています。つまり、3ポイント消費して召喚すれば、STR、CON、SIZ、INT、POW、DEXにいたるまですべて3D8振って能力値とすることができるわけです。実際にはデーモンの種別(戦闘、願望、知識、移動、防護)に応じてさらに能力値に修正がつきます。また、能力値以外にさらに追加でMPを消費すれば、デーモンの種別に応じて追加ボーナスを与えたり、あるいは第5版で言うところの“魔力”にあたる〈混沌の諸相〉をランダムにつけたりすることができます。
 この結果、適当な場所と用具を準備して1D8時間かければ、魔術師本人のMPだけで有能なデーモンが召喚できるようになっています。
 精霊については、召喚に費やしたMPがイコールSIZとなります。その他の能力値は精霊の種別ごとに自動的に算出されます。
 なお、エレノインやマティクの生き物などの「ユニーク・クリーチャー」は、個別の召喚呪文として習得することになっており、消費するMPも固定されています。また、こうしたクリーチャーは儀式をいちから編む必要がないために、1D8分間での即時召喚が可能です。ただし、即時召喚では失敗が即災厄を意味するので注意が必要です。
 召喚には魔術技能のひとつである〈召喚儀式〉技能の判定を用います。召喚した後の命令は、これも魔術技能に類する〈使役〉技能を用いて下します。下せる命令はひとつだけです。デーモンの滞在時間は基本1時間で、MPを追加1点消費するごとに1時間延長できます。
 〈召喚儀式〉判定でファンブルしたり、ユニーク・クリーチャーの即時召喚を失敗したりすると、バックラッシュが発生します。表でD100を振って結果を決め、能力値の低下や悪くすれば即死までの影響をこうむります。
 第5版での不満として生け贄ルールの不在を挙げましたが、EoMでは存在します。供物が動物ならばそのPOWの半分、人間などの知性体ならばPOW分だけ、その召喚に使えるマジック・ポイントが増えることになっています。ただし、知性体を捧げるとそれだけ魔術をもたらす神々との〈契約〉が1%ずつ増えるため、術者の栄達や破滅が近くなるとも言えます。

(追記)
 デーモンへの命令の下し方だけ、「技能」章の〈使役〉技能の説明に飛んでいるので正直レイアウトとしてどうかと思うのですが、要は術者の〈使役〉とデーモンの〈精神抵抗〉技能での対抗判定で成功すれば命令を1個聞いてくれる。失敗なら去っていく。ファンブルなら支配が解けて襲われる。といったようになります。

EoMのカルト

 ストームブリンガー第5版でのカルトはゲーム的な影響をもたらしませんでしたが、EoMはマングースルーンクエストの系列に属するだけあって、カルトへの所属が重大なゲーム上の意味をもたらします。
 カルトは主に〈上方世界の神々〉や〈精霊の王〉に対する信仰組織です。単体の神格への信仰とはかぎらず、〈剣の統治者〉カルトのように三柱を一度に崇拝するところもあります。ちなみに後続サプリでは祖霊崇拝や英雄カルト等も追加されます。信者は5ランクに類別されます。平信者、入信者、侍祭、司祭、チャンピオンです。このうち、ルール的な特典を得られるのは入信者以上の会員資格を持つ者だけです。

〈契約〉技能

 カルトへの入信を果たした者は、そのカルトに対する〈契約〉Pactという特別な技能を獲得します。この技能は初期値が「CHA+入信時にささげたPOW量」で、以後は通常の技能と同じように成長させられます。また通常の成長に加えて、〈召喚儀式〉技能を用いるたびに1%、人身御供を行うたびに1%上昇します。召喚の頻度が少ない〈法〉のカルトでは、カルト技能が10%上昇するたびに1%増えます。
 〈契約〉は神性介入に使います。守護神の助力を仰ぐ場合、D100で〈契約〉以下を振らねばなりません。このとき成否にかかわらず〈契約〉は一定量減少します。
 また、入信者が侍祭に昇格するためには〈契約〉が50%以上ある必要があります。侍祭になってから一定の期間と充分な功績をあげれば司祭に昇格できます。
 〈契約〉が100%に達すると、神格化の可能性が発生します。以後100%以上であるあいだは一年に一回、D100を振って「神にささげたPOW×5」以下を振ると神の次元に呼ばれて永遠のしもべとなり、NPC化します。逆にいえば、100%未満ならばこの可能性はないので、頻繁に神性介入を試みればこのある種の破滅はふせげます。

カルト技能、加護、制約

 カルトに入信すると、特定の技能(カルト技能)の成長コストが低下します。
 侍祭になるとカルトが提供する魔術を学べるようになります。魔術は必要な魔道書を手に入れれば独学でも修得できますが、魔術を提供するカルトに入るのが一番手っ取り早いでしょう。なお、カルトによって召喚できるデーモンや精霊の種別は決まっています。最高位であるチャンピオンになると高レベル能力である伝説的能力Legendary Abilityを獲得できます。
 また、各カルトには加護Giftと制約Compulsionが設けられています。入信者になるとまず制約を1つ、望むなら加護を1つ得られます。加護の獲得は無料ではなく、重いPOWコストがかかります。以降、侍祭、司祭、チャンピオンと昇格するごとに制約を1つずつ取り、加護を獲得するチャンスを与えられます。加護は、これらのほかにもプレイ中に神々から提供される恩寵として獲得することができます。この場合もコストとひきかえですが。
 制約は、そのカルトの特徴をあらわす性癖や恐怖症といったもので、グローランサのそれに類似していますが、加護はコストが高いだけに強烈で超自然的な効果をもたらします。若返りや蘇生、不死、性転換、永続的にしたがうデーモン等の従僕、安全な隠れ家となる次元の創造、などなど……。

各種のカルト

 EoMコアルルブで紹介されているカルトは以下の通り。

  • 精霊カルト:グローム、ストラーシャ、カカタル、ラサ
  • 混沌カルト:アリオッホ(単体)、〈剣の統治者〉(マベロード、キシオムバーグ、アリオッホ)、〈死のもたらし手〉(チャードロスとハイオンハーン)、〈恍惚の耽溺〉(スローターとバラーン)、〈藍色の尼僧団〉(エクオル女神)、〈囁くものたち〉(ピアレー)、〈沈黙の監視者〉(マルク)、ナージャ
  • 法カルト:アーキン、ドンブラス、ミッゲア、〈トーヴィクの仮借なき騎士団〉

 ゴルダーがいない……。