ゼロ・サウンド・テクスチャー

ゼロ年代中期のエレクトロニカ・アルバムの100作レビュー。

ゼロ・サウンド・テクスチャー/第6回

●6回目。つまり51枚目から60枚目まで。

●今回は「アブストラクト・ヒップホップのミッド・ゼロ的展開」です。05年から08年の間の「エレクトロニカな耳」でも聴けるアブストラクト・ヒップホップを取り上げています。私は本格マニアでもファンでもないのですが、どれも非常に素晴らしい盤です。

●この時期、ある種のヒップホップに「ビート/テクスチャー」の感覚がより増幅されている印象があります。まさに「00年代的音響感覚」がもう一つの角度から浮かび上がってくるかと思います。

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[CD]Mumbles『a Book Of Human Beats』

Book of Human Beats

Book of Human Beats

Aceyalone『A Book Of Human Language』のインスト・アルバム。センスフルなサンプリングと深いビート、乾いたトラックの質感が素晴らしい。まさにスプリチュアル・ジャズ・ヒップホップ。05年。


[CD]Dabrye『Two/Three』

Two/Three

Two/Three

エレクトロニカ・ヒップホップのダブリーの3rd。今回は多くの著名MCを起用。だが同じくらいに重要なのはトラックのディープさ。テクノもエレクトロニカニューウェイブも呑み込んだ貪欲/ドープなビート・オブ・テクスチャー・トラック。凄い!06年。


[CD]J Dilla『Donuts』

Donuts

Donuts

遺作である。短いトラック。荒いサンプリング。ズレるグルーブ。ザラついた質感。レコードへの愛。そこに横溢する祈りにも似た音楽への愛。ビート・ミュージックのある種の完成形にして、永遠の未完作品。なぜって?それが音楽だから。音楽は鳴り続ける。06年。


[CD]Madlib『The Beat Konducta: Movie Scenes, Vol. 1-2』

Beat Konducta 1-2

Beat Konducta 1-2

別名義Beat Konductaをアルバム名にした作品。短いトラックで大ネタ使い(M4のクラフトワーク!)を駆使し、サンプリング・ミュージックの核心の革新のごとき作品となっている。06年。


[CD]Dday One『Loop Extensions』

Loop Extensions

Loop Extensions

LAのビートメーカーによるインストゥルメンタル・ヒップホップの傑作。サンプリング・ループ特有のズレを孕んだ、枯れた質感とグルーブが最高。当初500枚限定でプレスされ、あのカット・ケミストも買い逃したという逸話もあるほど。07年。


[CD]Block Barley『Dead At The Control』

Dead at the Control

Dead at the Control

ドイツ「Hong Kong Recordings」。ダーティーアブストラクト・ヒップホップ。複数のテープレコーダーを使い、テープループを作りだしていったという。その即興的なザラついた質感が実にクール。07年。


[CD]Omid『Afterwords3』

AFTERWORDS 3

AFTERWORDS 3

Low End Theoryダディ・ケヴのAlpha Pupからリリース。LAのビートメーカーの「Afterwords」シリーズの3枚目だ。多彩なBPMのビート・トラックに、繊細で奥行きのテクスチャーを満喫できるアルバムとなっている。サンプリング・センスがもたらすサウンド・メイキングのセンスが実に素晴らしい。07年。


[CD]The Opus『Blending Density』

シカゴのプロダクション・ユニットによるセルフMIXCD。彼らの10年に渡るトラック/ミックスワークを凝縮した一枚となっている。細やかなサンプリング・センスと多彩なビート・ワークをスミからスミまで満喫できる。07年。


[CD]TTC『3615』

Ttc

Ttc

驚愕のフレンチ・ヒップホップ。フレンチだからではない。トラックの狂いっぷりにである。素っ頓狂なリズムに、調子の狂ったMC。聴いたことあるようなないような摩訶不思議なビート。プロデュースはメンバーらに加えDJ Orgasmic、Para Oneなど。07年。


[CD]Flying Lotus『Los Angeles』

Los Angeles [解説・ボーナストラック2曲収録・国内盤 ] (BRC196)

Los Angeles [解説・ボーナストラック2曲収録・国内盤 ] (BRC196)

もはや説明不要なほどの傑作。00年代ヒップホップのとりあえずの終結点にして集結点。00年代的エレクトロニカ/音響的な繊細なレイヤーと、00年代的ヒップホップ的なズレを孕んだオーガニックなビートが、ここに融合と融解。まさに超傑作。08年。