黙然日記(廃墟)

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産経抄の牛肉観。

産経抄】5月22日 - イザ!
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/column/opinion/394073/

 「外遊」という言葉が定着して150年ほどになると思いますが、いまだに「外国で遊ぶこと」と思っている人が多いのは驚きです。「遊」には動き回るという意味があります。現在の天文学では「惑星」の用語で定着しましたが、かつては人呼んで「遊星」でした*1。天球の一点に張り付かず動き回るからです。野球の遊撃手は、バッテリー以外でいちばん忙しいポジションでしょう。そもそも「遊撃」は軍事用語で、「遊軍」も類似の用語です。どこかの新聞政治部の遊軍担当は、本当に遊んでいる可能性もありますが。
 テロや伝染病はいつ発生するかわかりません。外遊中に伝染病が発生したら責任を問われるのでは、大臣の外国訪問は不可能になります。その留守を預かるために副大臣政務官という役職があり、大臣がその場にいなくても対処できる体制になっているわけです。こうしたフォロー体制があるから大臣は不要だ、などという暴論を、いったい誰が言っているのでしょうか。そして、大臣は外遊すべきでない、外国とのトップ交渉は必要ないというのであれば、それこそ大臣不要論であり、ものすごい論理矛盾をきたしています。
 赤松大臣のメキシコ・キューバ・コロンビア訪問はEPAFTA交渉に関わるものでした*2。この3カ国の農林水産についてはまったく詳しくないのですが、メキシコといえば思い出すのは、米国でBSEが発生して牛肉が輸入禁止されたとき、一部外食チェーンが米国産と質が近くBSEも発生していないメキシコ産牛肉を採用したこと、つまり、質の良い牛肉を輸出する国だということです。メキシコとのEPAFTA交渉は、国産牛肉農家の保護に関して、(緊急事態を除けば)重要な会談だったのではないでしょうか。
 最後の段落にある「百歩譲って」って、品のない表現ですね。ネットではもう当たり前のようになり、「1万歩」とか「1億歩譲って」といった表現を見かけますが、これでは際限なくインフレーションを起こすばかりで、美しい日本語とはとても言えません。わたしは最近意識的に、「一歩譲って」、どんなに許せないと感じてもせいぜい「一歩も二歩も譲って」でとどめるようにしています。

*1:少なくとも1967年12月ごろまでは、愛をこめて使われていた単語のようです。

*2:農林水産省/赤松農林水産大臣の海外出張について http://www.maff.go.jp/j/press/kokusai/kokusei/100430.html