茂木健一郎さんの講義を聴く

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直接PWSについての内容ではありませんが、認知科学の分野からPWSの行動の問題を考える上でのヒントをいただけそうです。

茂木健一郎さんの講義が聞けます。感覚的クオリアと志向的クオリアの説明も出てきます。(転載許諾済み)
文化服装学院における講演「クオリアを着ること」Wearing thequalia
http://www.qualia-manifesto.com/index.j.html
講義録はこちらです。
http://www.qualia.csl.sony.co.jp/~kenmogi/lectures/qualiafashion20031217.MP3



茂木さんからメールいただきました。

てつろうさま

リンク、まったくかまいません。
娘さん、いろいろご心配なこともあるでしょうけれども、
てつろうさんのように、広い関心を持たれている
父親を得て、幸せだと言えるのではないでしょうか。

茂木健一郎
2003年12月20日

ありがとうございます。これからもよろしく御願いします。


以下の文章はてつろうによるメモと感想です。

非常にユニークな内容がありました。
1つは、脳の運動野からの出力は一度脳の外に出してみないと自分にも分からないらしい。運動野と感覚野と脳内では情報としてはっきり意識できるやりとりはないとのこと。
これは大野耕策先生のプラダーウィリー症候群のある子は「しゃべる割には、聴覚言語能力が悪い」可能性がある、というお話に繋がる部分ありますね。

もう1つは、幼児の発達について、幼児はAとBと二つの選択肢があればどちらか目新しいものを選ぶ傾向がある、但し、その実験の場面ではお母さんの膝の上に居るような安定した状況の中での話。不安な状況では安定したものを選択するかもしれないとの事。お母さんの膝の上のような安全基地のようなものが幼児には必要不可欠であるとの事。衣服はスキンタッチであり、母の愛撫のようでもある。衣服はまた他者との関係性の上で重要な機能を持つ。
幼児は他人との関係性に圧倒的に影響を受けながら育つ。関係性の数だけ、いろいろな自分がある。そのいろいろな異なる自分を肯定するのが人間である等々。

新しい発想は、脳が脱抑制した時(通い慣れた道とかで)に生じやすい。脳は安全基地があって初めて冒険ができる。冒険、不確実性自体をエンジョイする態度がないと環境に適応できない。合理性だけでは判断できない不確実な場面では、「感情」が大きな役割を果たす。等々

プラダーウィリー症候群の行動の問題を考える上でいろいろと参考になる部分あると感じました。

他人との関係性によって成長し、不確実な、いろいろ異なる自分を「感情」の働きによって肯定するのが人間であるとするならば、PWSの場合、「自分」へのこだわりの部分が強くて、異なる自分やそのシチュエーションを受容するのが難しいのかもしれない。「感情」面の問題もその辺りに深く関わるのだろうと想像する。(でも、これはPWSというより子育て一般にも、私達の普段の生活での意識にも、共通して言えることですね)

皮膚の摘み取りというのも、単に皮膚の問題だけではなく、やはり心や神経の問題と直結しているんだと、改めて思います。
うちの娘はまだ大きな問題はないのだけれど、少しずつ現れるであろう、様々な事を、丁寧に聞こうと思います。