フランス人形劇日記その5(9月21日)

 フェスティバル2日目です。この日の最初はスロベニアの LJUBLJANA PUPPET THEATREの"La Ferme des Animaux(動物農場)"です。

 上演を観ながら、元共産主義国家であったユーゴスラビアから独立したスロベニアの人たちが、どういう気持ちでこの演目を上演しているのか、ずっと考えていました。上演はスロベニア語で、けこみに英語とフランス語の字幕が出ていました。片手使いの豚の人形はよく動き表情もたっぷり、大型の動物は棒遣いです。ユーモラスな場面もあり笑えるのですが。「動物農場」は人形劇団クラルテや劇団うりんこも上演していましたし、ジブリ美術館ライブラリーからアニメ版のDVDも出ていますが、70年近く前に原作が書かれたにもかかわらず今日にも通じる内容であり、どれを観てもちょっと重い気持ちになります。愚かなのは指導者なのか、選んでいる我々なのか‥…。
 2本目はカナダの THE OLD TROUT PUPPET WORKSHOP
の"Ignorance(知らないこと)"です。

 マンモス(マストドン)の骨格を模したセットの前で、原始から現代までの人間の幸福を考えるみたいな芝居です。とにかく視覚的に素晴らしいのと、フランス語が解らなくても内容を理解できる作りが良かったです。
 3本目はフランスのCOMPAGNIE ATIPIKの"Pourquoi les fenêtres ont-elles des maisons ?(なぜ窓は家を持っていますか?←怪しい訳)"。これも紙のシリーズです。

 女性の役者二人が、いくつかの箱と棒から世界を作り出します。箱を積んだり棒を突き刺したり、中から何か取り出したりそれをピンチで留めたり。「お家遊び」みたいな芝居を幼児たちは集中して観ていました。
 それが終わって、デュカール広場に行くと、今年は広場に円い大きなテントと大きな劇場舞台ができていて、その円いテントの中には、プルチネラの舞台が5つほど並んで立っています。代わる代わるいろんな劇団が上演しているようで、その時もこんなのがやっていました。

 大人も子どもも一緒になって声を出し、大喜びです。
 そのあとフランスのThéâtre en Cielの"Circulaires du service des instruments de mesure"という演目を観ました。

 ネクタイをしてスーツを着たお爺さんが、延々とテキストを読む、その間、ときどきロール状のスクリーンが回る戸棚を開くといろんな道具や物が出てくるのだが、それをどうするということもなくまた読み続けるという、まったく面白くない。言葉が判ったら面白いのだろうか。現地の観客も真面目そうな顔をして黙って聞いているだけでした。
 その後はフランスの THÉÂTRE DU RUGISSANT。前回来たときは階層的な劇場で大がかりにやっていたのですが、今回は古い鉄道車両のような小屋で家族4人での上演です。

 演目は"Tout Seul(すべてだけ←怪しい)"。たった一人で孤島に居る老人のところにいろいろなモノがやってきます。狭い空間をうまく使って、人形だけでなく影絵やダンスもします。9歳の女の子も13歳のお兄ちゃんも立派な役者です。

 芝居はちょっと乱暴だけど、音楽(ほとんどをお母さんが担当)と工夫がすごい。終わったら21時ですが、土曜の夜ということもあってまだ通りや広場では大勢の人たちがお祭りを楽しんでいました。(た)