緑川ゆき「夏目友人帳」(7)

他の人には見えないらしい それらはおそらく
妖怪と呼ばれるものの類。

妖(あやかし)が見える少年・夏目と、妖、それから人間とのふれあいを描いた作品です。
7巻が待ち遠しかった。



今巻で夏目が決して相容れることのできない人間が出てきました。自分のしもべにした妖さえも傷つける的場一門の登場です。名取は彼らを目の当たりにしてきたからこそ今のスタンスがあるわけで、作者さんがあとがきで書いてある一文

むかし自分が悩んだあたりを夏目がうろうろしているのを見て

は、まさにその通りだな、と。それじゃあ夏目に対してイライラするけどほっとけませんよね。と、微笑ましくなります。

今回もいい具合にミスリードが効いていて面白かったです。もう完全に「敵は的場」という構図で描いておきながら、実は狙われていた側だった、けどやっぱり的場は味方にはなれない、というダイナミックな流れが実に無理なくて凄いな、と。というか長髪の女は、よく考えてみると雨降るなか窓の外に立って、不法侵入して高一男子を連れ去ろうとしてたんですよね。怖い。

それと、未だに急に妖が出てくるといったホラー描写にビックリします。あと、コミカルな部分のバランス感覚が好きです。ニャンコ先生イカ食べながらオーライオーライとするコマとか、その後に潰されるニャンコ先生とか。

しかし何といっても今巻で私の中での柊ラブ度がさらに増したわけですが。何この切ない主従関係。お互いを大切にするあまりに柊は寂しい思いを味わいます。手助けをしたいのに、呼んでくれないからそれができない。そしてそれさえも、しもべすら容赦しない的場との対比になっていて作品として隙がないな、と感心します。もう本当に的場に食われてしまわないで欲しいです。名取を助けるために・・・とか本当にダメですよ。フリじゃないですよ。



今巻の特別編は今まで出てきた妖たちと一緒に遊ぶというお話で、とてもほっこりしました。本編がダークな分余計に。

三篠様も影以外のものも踏むタイプです。

とか声を出して笑ってしまいました。自分が感じたツッコミがそのままセリフになってたら笑ってしまうしかないです。夏目もこの幸せが続けばいいのに、と思う特別編でした。


それからこの巻には初期の頃の短編が載っています。絵柄が初期の絵柄でそれだけで嬉しい気分になりました。他の初期の恋愛作品と同じように切ない系のお話です。ですが、ある飲み物を飲むと不思議な力が出るという設定も、らしい、と思いました。まだまだ単行本に未収録の作品もあるようなのでもっともっと読みたいです。


7巻では、相容れない人間と受け入れてくれる妖。という感じで人間と妖が見事に対比になったわけですが、将来、夏目はどちらの道に進むのか。その揺れ動く様も楽しみにしたいと思います。



夏目友人帳 7 (花とゆめCOMICS)

夏目友人帳 7 (花とゆめCOMICS)