昨日からの記録・1

昨日、ホールの若い元気な女子がひとり、厨房にきて俺を呼んだ
今夜一緒に飲まないかと言う
お兄ちゃんがエロ漫画家の女子も一緒だから、できればそっちも二人連れで来てほしい


あまりに急だったので、自分が辞めることに関して
うだうだ言われるかなと思っていた
でも実際は二人とも自分のことを知らなくて
あんな店辞めてやる!とかみんなで言い合いつつ
渋谷でしゃぶしゃぶ食った


単に自分の上司の悪口を聞いてもらいたかっただけらしい



おれの方は早上がりした愛媛の同い年にわざわざ来てもらった
例によって給料日前日に金があるわけもなく
お兄ちゃんがエロ漫画家の女子にご馳走になったのだが
なんか気兼ねしちゃって面白くない


てことで朝までカラオケをおごってやる
朝になったら給料はいってるからね




お兄ちゃんがエロ漫画家の女子は未だに吐き癖が治っていなくて
カラオケ屋入った時からもう吐くために便所に行ってた


カラオケはまあ楽しく朝まで過ごしたけれど
お兄ちゃんがエロ漫画家の女子がすっかり酔ってしまっていて
オレの太ももをスリスリしながら
あたしのナヤミを聞いてください先輩〜と言う


コレはひょっとして・・ついにセックスか?
てオレは思う
しかも部屋に行ってもいいですか?そこで話したいんです〜と言う
当然それ以外考えられない
とりあえずジョナサンに待たしといて部屋片付けて、
あれしてこれして・・と一瞬で考える




じゃ先輩この子しっかり見ててくださいね!という
同僚女子と愛媛の同い年の了解も得て
わくわくして帰ろうとするも
まだ地下鉄がうごいていない


どっか喫茶店みたいなとこで待とう、て言うも
あたし待つのキライなんですお金ならあたしが払いますから
と言われるまま二人でタクシーに乗り
渋谷から上野まで向かう



神田あたりで吐き癖女子が起き上がって
突然、持っていた紙袋の中身を全部放り出す


すいません吐いていいですか・・・



えっここで?じじゃあちちょっと運転手さーん



万世橋のたもとまで女子はなんとか耐えた
ゲロの中身を見つめつつ背中をさする俺


手突っ込んでいいですか・・・


ええ突っ込んでください



女子の右手には吐きダコがある
拳を口の中に突っ込んで、ぶるぶると身を震わせながら吐こうとするも
もう胃酸が出てくるだけ
えづくこともなく、川の流れより静かに女子は吐いた



ずっとタクシー待たせとくのも面倒なので
結局そこで俺が清算する
大事にしてやんなよ・・・と運ちゃんに言われる
よけいなお世話だ



昨日からの記録・2

万世橋のたもとにマーキングしてから
オレたちは歩いて帰ることにした


酔い覚めの若い女子の例に漏れず
彼女もヤケクソな事をベラベラと
家に向かうあいだ中しゃべっていた


しゃっくりが止まんない・・・あー死ぬかも
つーか死にたい・・・死んでもいいですか?
いや死んじゃだめアタシ。生きる!生きるアタシ
先輩のうちってお風呂ないんでしたっけ?・・トイレもないんですか?マジありえない・・・普通じゃ考えられないですよ異常ですね
いや!だめ先輩なんだからそんな事言っちゃ!ご迷惑をおかけして・・申し訳なく思っております・・・



イライラしながら黙って聞く
父親の話も聞いた
殴られてるとかいうのは聞いた事あったけど
相変わらず虐待されているようで
死ねとか言われるらしい


どうすればいいのかわからないと言うので
これが悩んでる事かと思ったけど
マジ気の毒としか言いようがない、って言ったら
先輩はいつもそうですねって笑われた



だってしょうがないんじゃない?親子だって合わない親子ってのがあるんだよ。
適当な距離が見つかるまで向き合うしかないんじゃないの。(知らんけど)



一応予定通りに浅草通りのジョナサンで待たせる
やっと帰宅してカビ臭い部屋を片付ける
会社から持ち帰ったピースごはんが
ネズーに喰い散らかされていて
糞が床に点々と・・・


昨日持ち帰った大根のそぼろあんかけが
カバンの中で破裂していて・・・
アイホンやら割り帳やらぐちょぐちょ



発狂寸前で掃除機をかける朝7時



昨日からの記録・3

ジョナサンから二ケツで部屋に連れて来た、
お兄ちゃんがエロ漫画家の女子は
入るなり座布団に頭のせて
10秒で寝入った


布団をかけてやって
オレは履歴書をそこで書く
書いたら測量会社に電話して
少しのちに断られることになる



昼がすぎてもまだ寝ていて
こっそり写真とったら起きた

・・先輩いま写真撮りませんでした?


うん撮ったよ。


・・・



コンビニでスピリッツといろいろ食材買ってきて
お好み焼きを作ってやる


食い終わると同時に女子はまた寝て
おれは洗濯物を出しに行く
帰ってきて眉毛と鼻毛を切る


乾燥まで終わった服を机でたたみ、
お菓子を買いに出る


戻ったのが4時半前
携帯見てたら眠ってしまう
5時に起きたけど女子はまだ寝ている



吐いた直後はヤクが抜けたパルプ・フィクションのミア
みたいな顔してたけど
いまは赤みがさして汗をかいて
赤ちゃんみたいだなと思ってずっと眺める



六時ごろに急に女子は目覚める
よく寝てたねおかげでこっちはぜんぜん寝てないよと言い
黒田硫黄の漫画にこういうシチュエーションのがあったなという話をする



一緒に手作りのうまいクッキーを食い
麦茶を飲む


実はオレ五月いっぱいで辞めっから、て言うと
あたしも何にもやりたくないからやめようと思って、
悩み事はその事です
と言う
フーン



駅まで送ってやる
お世話になりました、と行って階段を下りていった



やれやれやれやれ
やれやれやれやれ!



やっと眠れる



柏木さんのポスターに張り替えてみた
こうすればもっとマシな子が泊まりにきてくれるかもしれない
いや無いな