卯年

今年はウサギ年ということで、飛躍の年になることが期待されてはいるものの、世間はまだまだ厳しい情勢が続いているようで、超就職氷河期などとも騒がれていて、はたして飛躍に繋がっていく年になるのかどうか、期待はしたいところです

さて、干支であるウサギについてですが、干支を意識したわけではありませんが、うちもウサギ(ミニウサギ)を昨年から飼っていまして、正月の元日に5羽の子供が生まれました。ウサギを飼うのも初めてですし、もちろん、繁殖を見るのも初めてですので、いろいろと興味深かったです

ウサギと言ってもミニウサギですから、日本の野ウサギと違っていわゆるアナウサギですから全く別物です。英名はノウサギがヘアーで、アナウサギがラビットという具合に、一般の人には区別がついていないどころか、下手をすれば同じ種類くらいに思っているかもしれませんが、実際は絶対に交配することのない別種です

アナウサギの特徴は、名前の由来のとおり穴を掘って巣穴として利用することと、ある程度の集団で社会性を持って生活することに特徴があります。巣穴を掘って生活しているため、体全体が小さい・足が短い・跳躍力が低いなどの身体的な特徴を備えていて、おまけに集団での生活もでき可愛いことから、古くからペットとして交配飼育されてきたようです。ペットショップでミニウサギとして販売されてはいますが、実際はアナウサギの仲間の交配雑種で、雑種の総称としてミニウサギと呼ばれているものなのです

さて、このミニウサギを少し繁殖させてみようと思い立ち、秋頃から観察を続けてきました。ほおっておいても勝手に交尾して子供を産んでしまうようですが、本来ならば穴を掘って巣穴を作りその中で産むわけですから、人工的な巣を飼育ゲージのなかに入れてやれば、より良いだろうと思って、交尾をしただろうと思われた時に人工巣を作ってゲージの中に入れてみました

ミニウサギはペットですから室内飼育をしている人がほとんどだと思いますが、うちは外に小屋を造りその中で飼っています。ですから、実際に観察できる時間も朝夕の水と餌を補給するごく短時間しかありませんが、不思議なことに、ある日 「あっ、交尾したな」と、交尾をする姿を見たわけではありませんが、交尾したのを確信し巣箱を作って入れてみたのです

最初のうちは、雌もこの巣箱の中に喜んで(?)入っていたので、この巣箱の中で子供産むかなと思い、巣箱の中に保温材として稲藁を入れたりしてみたのですが、暮れになるとこの巣箱を動かすようになってしまい、アレレレ・・・とも思ったのですが、これは何かあるのに違いないとも思い、暮れも押し詰まった12月29日には雄を隔離し、小屋内に再度大量の干し草を入れてみました

そうしたら、その干し草を小屋の隅に運びだして巣らしきものを作り始めたのです。入れておいた巣箱を小屋の外へ出そうかなとも思ったのですが、出産の兆候が出始めているのに刺激を与えるのは良くないだろうと考え、そのまま放置しておき様子を見ていました

晦日の日には兄が亡くなりいろいろと忙しかったのですが、夜に帰ってきて様子を見ましたら、干し草を積み上げて巣状にしたものの上に今度は自分の毛を抜いて重ね始めているのがわかりました。出産も近い事を確信し、できるだけ刺激を与えないように気をつけることにしました

元日になり、朝小屋を覗きますと、小屋の隅に積み上げた干し草の上には前の晩に見た数倍も雌の毛が積み重ねられているのがわかり、いよいよ出産かと・・・期待も膨らみました。しかし、良く観察していますと、毛が積み重ねられた場所を雌ウサギが通過する時は、そこを飛び跳ねて移動していることがわかり、これは既に出産しているだろうという確信に変わりました

夕方になり、水と餌補給をしている時に、再びじっくりと観察することにしました。ウサギの裸子は見たこともありませんが、親の大きさから推測しても恐らく4〜5cmくらいでしょうし、人間に聞こ
えるほど泣くこともないでしょうから、さて、どのような方法で出産を確認しようかと考えてみました。たのですが、さすがに手を入れて積み重ねられた毛を動かせば雌にストレスを与えそうですし、さりとて大量に積み重なった毛が邪魔をしていて、このままでは、中の様子を伺い知ることはできません。仕方がなく雌が見えない位置にいる時に、細い棒を使い外からソーッと毛の固まりをめくってみたところ、子供の姿を見ることはできませんでしたが、残っている毛が動くのを確認することができました。やはり子供がいた・・・と、一安心しソーッと元に戻しておきました

その後は、授乳しているような動きも確認できましたし、次の興味は、いつになったら巣から出てくるのかです。こんな寒い時期に裸子を出産したわけですから、そう簡単に巣から出てくるとは思えませんし、子供の成長の様子なども見たことはないので、まったく手探りでの観察ですから、なかなか楽しいです

4日ほど経過すると、なんとなく積み重ねられた毛の量が減り始めた事に気がつきました。小屋自体は板で作ってありますが、雨対策にと上部と側面はビニールで覆ってありますので、水分が入り込むことはないので、水分により圧縮されるようなことはないし、毛がどこかに動いたような痕跡もないので、ちょっと不思議に思ってみていました

その後も、見るたびに毛の量が減り続けていましたので、雌親が食べていたのでしょう。試しに糞を調べてみますと、ウサギの糞は丸い粒状になっているのですが、なかには固まって固形状になっているものもあり、調べてみると中に毛が入っているのを確認しましたので、やはり雌親が食べていたようです



この写真は、出産から1週間後の7日に撮影したものです

この時点では、そこそこ毛が伸び始めてはいますが、寒い時はマイナス7〜8度くらいにはなりますので、こんなに寒い野外なのに大丈夫かなとちょっと心配すら覚えますが、まあ、親がこのようにするのだから大丈夫だろうとも思いました

もちろん、まだ触ることもできませんから、大きさは推定になりますが6〜7cm程度だろうと思われます(人間の匂いがついてしまうと親が食べてしまう可能性があるから触らない方が良いとの判断です)。親の毛については、まだ多少残ってはいますので、この写真からでもわかると思います。出産時にはこの20倍はあったものと思われます

これほど寒いのに、こんなので大丈夫なのかと心配していたのですが、さすがに動物は強いもので、日ごとに大きくなっていくのがわかるようになりました。もちろん、まだ自分で餌を食べることはできませんので、栄養は親からの授乳のみです

子供が大きくなるのにつれ、驚いたのが親の飲む水の量と、食べる餌の量です。雄は別に隔離して飼育しているのですが、1日当たり最大で水は20倍程度、餌は5倍程度を食べる日もあるくらいですから、相当の量のカロリーを消費していることがわかりました。これは想像していた以上で、まあ、雄の倍くらいは水や餌を消費するだろうとは考えていましたが驚きでした。特に出産後2週間〜3週間の間が驚くほど水を飲み、餌を食べていました

生後3週間くらいまでは、寒さをしのぐために固まっているだけの子供達でしたが、1月21日から、成長の早いものは巣から出てきて動くようになり始めました。きっと、暖かければもう少し早くに動き出すだろうとは思いますが、まあこんなものかもしれません

1月23日には、一番成長の早いものが早くも餌を食べるようになりました。大きさも10cm以上になり、特に毛の長さはかなり伸びてきているのがわかります



こちらの写真は1月25日に撮影した近影です。日増しに大きくなっているのがわかり12cm以上になっており、体高もだいぶでてきてまるで鞠のような感じになってきました

ノウサギのように後ろ足が発達しているわけでもありませんので、それほど跳ねることはないだろうと思っていたのですが、こんなに小さな体でも一丁前に飛び跳ねます(笑)。飛び跳ねると言っても、ノウサギが飛び跳ねるように前方に跳躍するのではなく、真上に飛び上がるような感じで飛び跳ねています

すでに、どの子供も餌を食べるようにはなっていますが、まだまだ雌の母乳を欲しがるものもいます。それでも、この調子では今週末くらいになればすべて餌だけで育つようになるだろうと思われます

たかがアナウサギで、しかも、その生態の一部に触れただけではありますが、生物の観察は新しい発見だらけでなかなか面白いものです