『美術館と建築』

本日刊行『美術館と建築』(酒井忠康監修、青幻舎)で、「美術館建築年表」と「関連書リスト」の制作を担当しました。合計38ページ分。

「美術館と建築」というテーマは割と昔から語られてきたように思っていたけれど、いざ調べてみると、意外とまとまった年表というものはなかった。だからそれなりに資料性は高いのではないかと思う。本自体が美術館連絡協議会という組織の30周年の記念出版なので、その加盟館140館はすべて記載するという与条件があり、そのために普段は建築作品としてあまり認知されることがない建物も設計者名付きで載せることになったのは、却って内容に複層的な厚みをもたせることになってよかった。建築畑の企画では、こうはいかなかったかもしれない。また、求められていたのが「読める年表」というものだったので、適宜短い解説を付けたり、竣工時の文章を引用したりしている。この年表の制作に実感を得て、『日本の建築批評がどう語られてきたか』の年表が生まれることになった。

全体を年表として時系列で並列的にまとめたのは、それが歴史の専門知識やそれに裏打ちされた確固たる歴史認識をもたない者にも作業を積み重ねていきやすい形式であるからだが、同時にそれぞれの時代や個人の考えをなるべく生のまま誌面に定着させ、より多くの読者に共有可能なものにしたいと考えたからでもある。なんらかの論文というものが、複数の多様な事象を抽象化し、それらを線形にほつれなく関係づけていくものだとすれば、この年表では各テキストを並列な要素として抽出しつつも、個々に具体性を残して、それぞれを開かれた状態にしておくべきだと思えた。