ペニンシュラ型

~私とあなたの不可避な壁~

女性誌に連載の『よつばと!』と言うべきか。

flat 1 (1) (BLADE COMICS)flat 1 (1) (BLADE COMICS)
著者: 青桐 ナツ
発売日: 2008-09-10

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昨日も取り上げたコレ。あとで読み返したら知らん間にシャレっぽくなっててハズい。


そんなことはどうでもよくて、大切なのはこの作品が面白いということですよ、あなた。
幼児かわいいよ幼児。


超マイペースな高校生の平助が、年の割に超我慢強い幼稚園児の秋くんの世話を見る、というのが基本的なあらすじ。


タイトルで『よつばと!』を引き合いに出しちゃったからそれとの比較点をあげるけど、まず、よつばみたいな子供っていないじゃないですか。
確かによつばは僕らが思う子供らしさみたいなものの記号を寄せ集めて描かれてるキャラクターで、だからこそ、よつばの行動とか周りとの関係にまつわるあの作品独特の面白さが出てくると思うんだけど、子供って実際はあんなに単純じゃないじゃない。
確かに経験とか知識が大人に比べて浅いから、思考が単純になっちゃうってのはあると思うんだけど、感情面では子供も色々なものを抱えてるわけですよ。
だからこそ幼児期の経験がトラウマになったりするし、親がケンカしてたら止めようと気をひいてみたりする。


この『flat』の秋はその点よつばよりもよっぽど現実に近い。
よつばは気に食わないことがあったら、やんだとかに文句言うし、悲しいことがあれば涙を流すんだけど、秋はいやなこと、悲しいことがあってもガマンする。
子供だから表情に出てしまうこともあるけれど、相手の気をつかって(つかいすぎて)相手に頷いてしまうし、思ったことがあっても相手に言うことが出来ない。
そのあたりの秋の気持ちはわかるし、なんでそこ正直にしないんだよ、と読んでるこっちが悶えたりする。
でもだからこそ、自分の気持ちが伝わった時の秋の嬉しそうな顔が本当にかわいい。そりゃ平介も頬赤らめて『やだ!かわいい!』とか言っちゃうわ。


個人的な話をすると、私はディスコミュニケーションの要素が入ってる作品が好きなことが多いんだけど、その点でも気持ちを伝えられない子供っていうことで、この作品は琴線にヒット。


もひとつ言うと、よつばとの世界には成長がない。よつばの経験や思い出が増えるっていう面はあるけども、あの作品の大人たちはみんな、よつばに自然に同調できる、ある意味で子供な正確なので大人と子供にさしたる違いはない。よってあの世界に成長はない。
だけど、『flat』だと秋の行動をみて平介が自分を省みたり、秋自身が素直に自分の気持ちを表せるようになっていったり(まだちょっとだけど)とキャラクターの成長がある。高校生ぽい青臭さとか子供のほんとうの純粋さとかがよくこのあたりに出てて良い。


まぁそろそろそんな小難しいことは抜きにしよう。
秋と平介以外のキャラクターもステキなんですよ。超マイペースっていわれてる平介のつるんでる友達も実はかなりのマイペースだし、秋のお父さんが秋が可愛すぎていじめたくなっちゃうのはわかるし、(それであんまり秋に相手にされないところがまたいい。)登場人物一人一人が作品の雰囲気を作ってる。


あと平介に恋する長谷さんがツボすぎる。素直クールってやつ?
にしても良すぎる。一話しか出てないのに。平介はズルイ。


最後にいえば、私はマンガで食事を大切にする作家さんを好きになる傾向が強いのですが、(よしながふみ先生とか)この作者さんも丁寧にお菓子とか描いてくれるから素晴らしい。


とりあえず、友達に薦めまくろう。本当にいい作品です。


秋かわいいよ秋。
長谷さんいいよ長谷さん。