インタビュー領空侵犯

大和総研チーフエコノミストの原田泰氏が登場しています。

 ――ご専門のマクロ経済とは離れますが、無駄な残業を減らすには残業代を管理職が支払うようにすればよい、と主張されていますね。
 「昨年来続いた雇用ルールの見直し論議の中で、一部の会社員を労働時間規制から外す制度(日本版ホワイトカラー・エグゼンプション)の是非が焦点になりました。経営者側からは『無駄な残業が多いから制度導入はやむを得ない』との指摘がありました」
 「しかし、本来は残業は会社のためにするもの。社員に残業を命じるのは上司なので、その人たちに責務を負わせればよいという発想です」
 ――具体的には、どんな仕組みをお考えですか。
 「管理職にあらかじめ資金を渡しておき、そこから残業代を部下に支給するのがわかりやすいのですが、所得税の計算などがややこしいといった問題があります」
 「次善の策として、プールした資金から残業代を支払い、残った金額を管理職がボーナスとして受け取る制度を考えています。段取りよく仕事を進めれば部下の残業が減り、自分の収入が増えます」
 ――社員が“ただ働き”を強制されたりしませんか。
 「上司が『会社がケチだから我慢してくれ』と部下を説得することはあるかもしれませんが、『自分がケチなのでよろしく』とは言えないでしょう。たまにそんな上司がいても、職場で浮き上がるから人事評価は下がり、淘汰されていくはず。いわゆる“サービス残業”がますます増えることにはならないでしょう」
 ――ホワイトカラー・エグゼンプションの導入は結局見送られました。経営者側からみて「敗因」は何だったと?
 「国会提出前に『残業代ゼロ法案』などと論じられたことからみても、つぶれる運命だったといえます。そもそも『社員の働きが緩慢だから残業代を払わない』という経営側の理屈は成り立ちません。仕事に無駄が多いのは管理職の責任であり、その管理職をうまくコントロールできない経営者の落ち度なのです」
 「日本企業に時間外労働が多いのは、社員を安易に解雇しない経営慣行があったからです。景気が悪化して仕事が減っても簡単に人員整理はしないが、逆に業績好調で忙しくなっても社員を増やさずに残業でしのぐ。要するに、雇用の調整弁の役割を残業が果たしてきたのです」
 「終身雇用や年功序列といった慣行が崩れてきて今度は残業コストにメスを入れることになったのですが、過去の経緯を顧みずに社員を犠牲に強行しようとしたために猛反発を受けたのだと思います」
(平成19年4月23日付日本経済新聞朝刊から)

「領空侵犯」ですから部外者がデタラメを撒き散らしても当然かもしれませんが、それにしてもこれは凄い。余計なお世話ですが、これほどの有名な大物エコノミストがここまでまったく間違った思い込みで発言して恥ずかしくないのでしょうか。自分の値打ちを落とすだけだと思うのですが。まあ、こんなことをいちいち恥ずかしいと思っていたら「チーフエコノミスト」なんてやってられないのかもしれませんが。