サザンオールスターズ「KILLER STREET」全曲レビュー②

昨日に引き続き、サザンオールスターズ7年振りのオリジナルアルバム「KILLER STREET」のご紹介です。このアルバムが2枚組だというのは紹介済ですが、今回は初回限定版が用意されており(もちろん、僕が買ったのも初回限定版です)、その特典として、桑田佳祐自らによるライナーノーツ付きブックレット、そして、レコーディング風景を録画したDVDが付いてきているのです!これを見れば、このアルバムの製作過程を見る事が出来ます。ちょっとしたヒマつぶしにいいかな、と思ったDVDでした。故に値段もちょっと高めですが、4,500円出す価値は充分あると思います。とはいえ、売れ行きはかなり好調みたいなので、1ヶ月もしないうちに初回版は売り切れそうです。
それでは本題に戻りましょう。今日はDisc2です。
  
1.ごめんよ僕が馬鹿だった
これは浮気がバレた男の弁解ソングだと桑田さんはライナーノーツで語っていました。しかし、何となく「可愛い」と思ったのはなぜだろう?サウンドはギター色を強めながらもキーボードの音がいい感じで乗っかっていて、どことなく爽やか!リリース前にラジオ等でよくかかっていたので聴く機会も多いのですが、このような、「ロック」と「ポップス」のちょうど中間のような音楽を作らせたら、やっぱりサザンの右に出る者はいないと、改めて実感しました!
  
2.八月の詩(セレナード)
前々作「YOUNG LOVE」に、「ドラマで始まる恋なのに」という曲があったのですが、それに曲調が似ているなと思いました。僕のイメージとしては、夏のよく晴れた日に田舎の一本道を走るときに聴きたくなるような音です。さらに言えば、山下達郎の曲にもこんな曲調のものがあったような・・・。サザンのアルバムは秋にリリースされることが多いのですが、こうしてちょっと前に過ぎた「夏」という季節を、ふと思い出させる曲を効果的に取り入れているあたりも、やはり「元祖・夏アーティスト」のなせる業でしょうか?
  
3.DOLL
一転して打ち込み色を全面的に打ち出した複雑な音で構成された曲ですが、このコーラスワークには、どことなく懐かしさを感じました。僕が子供の頃に車の中で聴いたサザンの曲(80年代のもの)のイメージもこんな感じだったからでしょうか?歌詞は、熱しやすく冷めやすい人間の身勝手な愛をテーマにしたそうですが、その特徴的な歌い方もあってか、歌詞の意味を理解するのには時間がかかります。これもまた、サザンならではの味なんですけどね。
  
4.別離(わかれ)
これまた、昭和の歌謡曲テイストが加えられた曲で、なぜかキャンディーズが頭をよぎった。曲の合間にセリフが入るのは、サザンとしてはレアケースだと思います。それにしても、これだけのキャリアがあると、温故知新というか、昔のテイストと今のサウンドを上手く織り交ぜた曲をたくさん生み出せるサザンの曲作りは本当に素晴らしい!だからこそ、幅広い年代層のファンを獲得し続けられるんですね。
  
5.愛と欲望の日々
2004年冬のシングルで、今年の正月に帰省した際、父親の車ではこの曲がヘビーローテーションになっていました。確か、J-POPとしては初めて、時代劇の主題歌になった曲ですが、それを意識してか、江戸時代の町娘たちが踊るビデオクリップはかなり秀逸な仕上がりでした!曲のイメージは70年代ディスコサウンドだと言いますが、江戸とディスコの融合が実にうまくいっているというか、とてもファンキーな作品になりました!歌詞は相変わらず、何言っているか分かりにくい「サザン節」で、けどこれがまたいいのです!何でだろう・・・。
  
6.Mr.ブラックジャック〜裸の王様〜
とても重い感じのロックチューンですが、これは、サザン得意の「社会風刺ソング」です。最近ではミスチルが社会風刺ソングを数多く放っていますが、やはり元祖はさらに強烈に社会を斬っています!ここで歌われているのは、「小泉首相郵政民営化法案を通したいが為に行われた解散総選挙」「道路建設に関する談合疑惑と官民の癒着」「北朝鮮の日本人拉致問題」そして、「憲法第9条」と、今の日本が抱える問題や愚行を皮肉っているものだと思います。裸の王様が誰の事を指すかは、みなさんもだいたい想像がつくのではないでしょうか?
  
7.君こそスターだ
2004年夏のシングルで、アテネオリンピックでの応援ソングとして知られています。そもそも、オリンピックのテーマ曲として代表されるのは、テレビ局の中継イメージソングだったのですが、それらを退け、一企業であるトヨタのキャンペーンソングが当五輪一番のテーマ曲になるというのは、トヨタの大量CM構成もあるにせよ、やはり曲を演奏しているのがサザンだったからだと思います。その今時流行らないようなタイトルにせよ、歌詞の内容にせよ、ものすごくストレートに表現していて、まさに計算されたかのような、アテネ五輪をはっきり頭の中に再生させてくれるような曲です。ある意味、サザンの歴史に残る名曲だと思います。
  
8.リボンの騎士
2枚組、ていうだけあって、恒例の「原由子ソング」も普段の倍です!こちらも間奏にセリフが入っていますが、原由子の場合は昔からやっていただけあって違和感ありません。このアルバムで一番、アダルトな雰囲気のある曲だと思います。歌詞もちょっとエロティックなものなのですが、桑田さんがその手の曲を歌うとかなり目立つのですが、原坊がやると・・・とても自然な感じがするのです。その辺りも非常に面白い!
  
9.愛と死の輪舞(ロンド)
昔の西洋の舞踏会をイメージしたような曲ですが、いろんな音の要素が混ざり合い、加えて意味不明な歌詞が乗っかっていることもあって非常に難解な曲になってしまいました。僕の文才では、残念ながらうまく表現できません・・・けど、この曲は、何も考えずにそのごちゃ混ぜな音を楽しんだ方がよさそうです。こんな紹介でごめんなさい。
  
10.恋人は南風
2003年のシングル「涙の海で抱かれたい」のカップリングですが、とてもいい出来だったのでアルバムに収録されてうれしいです。この曲も、八月の詩(セレナード)同様、よく晴れた田舎道で聴きたくなるようなサウンドに仕上がっています。こういった、「サザンにしては歌詞がちゃんと聞き取れる曲」は、40〜50歳代の方にも受け入れられると思います。
  
11.恋するレスポール
実はこの曲、桑田佳祐のソロ作品で採用する予定だった曲だそうです。(ライナーノーツより) レスポールというのは、多くのギタリストが愛用しているアメリカ・ギブソン社のギターの名前ですが、それがタイトルに出る辺りからも、この曲は生粋のロックチューンなんだろうな、と思いました。そう言えば、円熟味のあるギタープレイでロック界に君臨する名ギタリスト・Charが、ピアノが家に運ばれるまでの様子を、ピアノサウンドを全面的に打ち出したサウンドで歌い上げる曲があるのですが、このような「楽器をフィーチャーした楽曲」には、そのアーティストが、「本当に音を奏でることが好きな人なんだな」と、心底感心させられてしまいます。
  
12.雨上がりにもう一度キスをして
2003年リリースの「涙の海で抱かれたい」とのダブルAサイドシングルで、やはり2曲目というだけに地味な印象を受けますが、この曲を起用したJALのCM映像は強烈でした!桑田さんがスッチーに変装するという、爆笑CMだったのですが、その昔は「HOTEL PASIFIC」の音に乗せて、女装した桑田さんが昔懐かしの「OH!モーレツ」(今は亡き丸善石油(現:コスモ石油)のCMで、出演タレントの小川ローザのスカートがめくれる、セクシーCMの代表作)のパロディーをやってみたりと、何かと女装が好きなようです。それはさておき、この曲を聴いた時、思わず「夕方HOLD ON ME」を思い出してしまいました。なぜか夕暮れ時のビーチで聴きたくなる曲だと思いました。シングルとして聴いたときはあまりピンと来なかったのですが、こうしてアルバムの曲として聴いてみると、何となくこの曲のよさを再発見できたような気がします。
  
13.The Track for the Japanese Typical Foods called “Karaage" & “Soba"
どんなにビックになっても、サザンは「遊び」を忘れない。タイトルを訳すと、「そば&唐揚定食の歌」。しかもこの歌の出てくる「丸屋」っていうのは、サザンがこのアルバムを製作したスタジオの近くにある定食屋の名前だそうです。思いっきり丸屋の宣伝ソングになってます!この曲に影響されてか、CD買った日の夕食は唐揚定食でした!
これだけ遊んでおきながら、続けて「キラーストリート〜reprise」が流れ、対照的な2曲をくっつけて来たのは、この“おふざけ”を締める役割があるそうです。僕的には、ふざけたままでよかったと思うのですが・・・。
  
14.FRIENDS
サザン最長、8分22秒の大作で、岸谷五郎氏が率いる「地球ゴージャス」のプロデュース公演「クラウディア」の為に書き下ろした曲です。故に、劇中でのストーリーとリンクした、動きの多い曲に仕上がっていると思います。曲が進行するにつれて音が深みを増し、コーラスが力強くなり、一旦ピークに達した所で、最後は静かに終わるという、まさにミュージカルのようなミュージック!これが出来るアーティストは、やはり大物です!
  
15.ひき潮〜Ebb Tide〜
計30曲に及ぶこのアルバムのラストを飾るのは、とても静かで、まさにタイトル通り“ひき潮”のような曲です。アルバム全体が比較的アッパーなものが多かっただけに、例えて言えば、居酒屋で飲みに行ったときにシメで注文するお茶漬けのような、このアルバムを見事に締めくくった一曲です!こうして全体的に聴いてみると、最初から最後まで聴き応えありの全体的な仕上がりの秀逸さが、このラストチューンでさらに際立っていると思います。
  
  
このアルバムは最初に2〜3回聴いただけでは、その良さが分からないかもしれません。というのも、昔からの「サザンらしいサウンド」と、ソロ活動で培った「新しいサウンド」の両方がうまく融合されている上、アルバムの収録曲1曲1曲にそれぞれ異なったテーマがあることから、じっくり聴くことによってその世界観の違いを吟味する必要があるからです。けど、1週間も聴けば、きっと、このアルバムの素晴らしさを実感できると思います!やはり、30年近く日本の音楽界の最前線を走り続けたサザンは、日本一の偉大なアーティストだと言っても過言ではないでしょう!それを証明するにふさわしいアルバムだと思います。ぜひとも、幅広い年代の方に聴いて頂きたいです!
そして、このアルバムを引っさげての待望のライブツアーが年末にかけて行われます!日程は下記の公式サイトを見て頂きたいのですが、きっとチケット争奪戦になることは間違いありません!大晦日には恒例の横浜アリーナカウントダウンライブをやるなど、今後のサザンに目が離せない!
  
サザンオールスターズ 公式ウェブサイト
http://sas-fan.net