公開3日目!!

sabaku_m2008-02-04

関東地方では、2年ぶりの大雪という極寒の渋谷から発信しております。
昨日降った雪が、街のあちらこちらに固まりながらうずくまっていて、なんだか不思議な都会的風情を感じます。

今回、『砂の影』の上映中に、渋谷のユーロスペースでは、
特製☆8ミリT-shirtを販売しています! 2000円
さりげなく、袖元にちらと見える8ミリカメラ。
大人向けのシックなデザインなので、今の時期には重ね着にもどうぞ♪
サイズは、MサイズとキッズMサイズです。(女性の方にはキッズサイズがジャストです)

【その時、渋谷では…❸】


 −「エクス・ポ」「nu」のデザイナー戸塚泰雄さんにインタビュー−

  

―うまく商品化されてしまう以前の混沌とした魅力がありますよね。


戸塚 試写のあとで、プロデューサーの越川さんに感想を伝えようと思ったんですけど、うまく言葉にならなかったんですね。この映画は何かひとつの明確なメッセージがあるわけではないし、それこそ観るたびに違った表情を見せると思うのですが、それは、混沌というのとはまた違うかもしれませんが、商品化されてしまう以前のそれに近いものを感じます。ひと言では言えないものの豊かさ、みたいな。誤解されたらもったいないなと思うのは、8ミリを起用したのは、ノスタルジーとかでは全くなくて、8ミリを媒介にしたときに、これまでとは違った何かになるんじゃないか、そして現在の映画としてすごく批評性をもちうるんじゃないか、といった期待と賭けがまずあってのことだと思うんです。結果的にも、8ミリでないと、蝉の鳴き声や夏の陽射しのあの感じは出なかったでしょうし、それが登場人物の心理とも見事にマッチしていて、その相乗効果で、すごくざわざわした感じが出てるんですよね。


―デザインでも、何かをひとつ置いた時にそこにしか置けなかった、そうなってしまった感じってありますよね。ミリ単位の正確なことではなくて、そうにしかならなかったという…。


戸塚 DTPが普及する前は、デザイナーは「こういう風にやってください」って指定紙を印刷所に渡して、実際に形にするのは印刷所の写植屋さんたちだったんですよね。そうすると、デザイナーの思い通りに仕上がらないこともあれば、予想を上回る出来になることもあって、いずれにしても、その過程でひとが介在することで、どうしてもズレが生じてしまう。そのズレこそがすごく大事だと思うんですよ。いまはデザイナーがデスクトップ上でフィニッシュワークまでできるので、そうすると、印刷所はそれをそのまま印刷するだけでよくて、以前のようなズレがなくなったんですね。それによって、ざわざわした感じの何かが失われるということは自覚したほうがよくて、でもそれは、個人ではどうにもできない領域で。そこに何かを介在させるとして、それは一体何なのかっていうと、やっぱり他者しかないと思うんです。


―複数の人間の視点と、複数の人間のズレを一枚の印刷物が持つんですよね。そのズレの魅力はある深みと厚さがあって、きれいじゃないかもしれないけど、でも、世界の有りよう事態がそういうことだと思うんです。


戸塚 映画もそうですよね。8ミリでは、台詞や音は同時録音できないので、録音用にもういちど同じ演技をしてもらって、あらためて音を撮ったと聞きましたが、そこにも何かあるな、と思います。編集の段階でズレのないように音を合わせたところで、元が違ういじょうは確実にズレがあるわけで、それはさきほどの割れ目の話にも通じますね。


―戸塚さんが「エクス・ポ」のデザインを組んだ時に、「どう組んだかよくわからない」という、ハマっちゃった、という感じもそうですね。


戸塚 やっているうちに形になっていく、その過程はすごい面白かったですね。で、いつのまにかできちゃった、みたいな。ふつう、雑誌って、台割に従って作業をするのでそういうふうには出来ないのですが、そういうやり方でやれると、意図せぬところに割れ目が生じているかもしれなくて、ということは、それって、商品化以前の混沌したものに近づける行為でもあるかもしれないですね。(続く)