野家啓一『物語の哲学』

面白かった。
オースティンの言語行為を少し変えて、物語行為論が展開されている。
「物語る」という行為を、オースティンの言語行為と区別し、経験を再構成し共同体で共有する行為と規定する。
そこから歴史についての考察がなされる。
後半では、虚構の存在論や意味論にも考察がなされる。
「物語」とは、<虚>と<実>の中間に位置し、それらを相互作用させる。
また、虚構における対象を、科学における理論的対象物と同様のものと捉える。
そして、科学、文学、哲学の区別を、種類の別ではなく程度の別であるとする。

物語の哲学―柳田国男と歴史の発見

物語の哲学―柳田国男と歴史の発見