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2009-06-14

[][]あずまきよひこの出した「応用問題」(後編)

前回は新旧『あずまんが大王』の絵柄の違いについて語ってみました。

あずまきよひこの出した「応用問題」(前編) - 三軒茶屋 別館

しかしながら、絵柄以上にびっくりしたのが「4コマそのもの」の修正。これには単なる描きなおし以上に様々なパターンがありました。

というわけで、今回は新旧『あずまんが大王』の4コマそのものの差分について備忘録代わりにまとめてみようかと思っています。

まず、新旧の差分ですが、以下の7パターンに分類できるかと思います。

(1)変更なし

(2)基本は無印と同じだが、トーンなど細かい修正がある

(3)新旧同じストーリーだが、一部の絵を描き直している。

(4)新旧同じストーリーだが、全部の絵を描き直している。

(5)新旧で一部セリフや登場人物が異なる。

(6)新旧でオチが異なる。

(7)新旧でお話そのものが異なる。

それぞれについて簡単に解説します。

変更なし

無印の4コマがそのまま収録されています。例えば、P99「9月partB」はほとんどが修正なしですね。(一部(2)あり)

絵柄の変化を理由とした修正が理由の一つだと思いますので、修正必要なしと判断した作品かと思われます。

2年生、3年生と巻が進むたびに「変更なし」のお話が増えていくんじゃないでしょうかね。

基本は無印と同じだが、トーンなど細かい修正がある

個人的にはこれが一番びっくりしたのですが、無印の4コマをそのまま収録しながらも、無印で貼っていたトーンが新装版では貼られてなかったりしています。

f:id:sangencyaya:20090613231554j:image*1f:id:sangencyaya:20090613231627j:image*2

無印では「口」や「人物の影」にトーンが使用されていましたが、新装版では無し。えらいすっきりしましたね。

絵柄の変化もありますが、トーンのあるなしでもだいぶ印象が違ってきます。

新旧同じストーリーだが、一部の絵を描き直している。

同じお話なのですが、一部の絵を描き直している場合があります。

例えば、「8月partB」で、ちよちゃんの別荘に行くために車の割り振りを決める「天国と地獄」。

1コマ目、2コマ目は描きなおされていますが*3、3コマ目、4コマ目は無印と同じ。

前回の記事で指摘した「目」や「顔」の違いが気になるコマと気にならないコマがありますので、新装版用にカスタマイズしているような印象を受けます。1つのお話の中に新旧の絵が混在しますので、けっこう気をつけて描いたのでは、と妄想しました。

新旧同じストーリーだが、全部の絵を描き直している。

新旧同じストーリーですが、まるまる全ての絵を描き直しています。

初期のお話が多いですね。「有名な4コマ」(1話目とか、「ララララブラブラブレター」な話とか)の場合やはり変更するには勇気がいるでしょうし、(6)の「オチ違い」への布石にもなっていると思います。

新旧で一部セリフや登場人物が異なる。

全部の絵を描き直し、新旧ほぼ同じストーリーですが、一部セリフや登場人物が異なっているお話があります。

f:id:sangencyaya:20090613231711j:image*4f:id:sangencyaya:20090613231749j:image*5

例えば、オチのセリフが変わっていたり、

f:id:sangencyaya:20090613231810j:image*6f:id:sangencyaya:20090613231837j:image*7

チャリンコをパクられたのがしまうー千尋だったりしています。

セリフのカットなどは、1コマあたりの情報量をあえて「減らす」ことで贅肉をそぎ落としシンプルな笑いを生む、という効果があるかと思います。このあたりは読者の想像力を喚起し笑いを生む『よつばと!』の手法に通じるところがあるのかもしれませんね。

新旧でオチが異なる。

途中までは同じお話だったのに、オチが変わっているお話もあります。

例えば、4コマではないですが子猫を拾うエピソード。

f:id:sangencyaya:20090613231909j:image*8

このオチが、

f:id:sangencyaya:20090613231932j:image*9

こんな感じになってます。

おそらく無印の既読者であれば、「あれ?」という「スカシ」を味わうことになるかと思いますが、逆にそれが作者の狙いなのかもしれません。作者自ら「応用問題」と言っていますが、無印を読むことで予想していた「オチ」から逸脱する。例えば上記のお話のように「ツッコミ」という「動」だったオチが一同呆然とする「静」のオチに変更される。「静」のオチそのものは『よつばと!』でも使われていますので「新装版が初めて」という読者でも楽しめますし、一方無印の読者も差分によるギャップを楽しめるという、二重の意味で巧い造りになっていると思います。

新旧でお話そのものが異なる。

無印に収録されていたのに新装版には収録されておらず、その代わりに追加された4コマもあります。

巻末には「補習」という書き下ろしもありますが、それとは別に挿入されているお話があり、これらもまた無印読者にとっては「二度美味しい」スカシとなっています。「どうしてあの話がなくなったんだろう」とか妄想しがいがあると思いますし(笑)、10年という月日をしんみりと味わう楽しみもあるかと思います。


新装版『あずまんが大王』では数々の修正、描き足し、描きおろしがあり、作者あずまきよひこのこだわりが感じられます。無印の読者も楽しめると思いますし、もちろん『よつばと!』から入った読者も楽しめるつくりになっていると思います。そして新装版と無印の差分を比べるだけでもまた楽しめる、まさに再読性たっぷりのマンガです。

来月、再来月と続刊がでますが、本棚から無印を引っ張り出して、楽しみに待ちたいと思います。

【ご参考】『あずまんが大王 1年生』新旧比較表 - 三軒茶屋 別館

あずまんが大王1年生 (少年サンデーコミックススペシャル)

あずまんが大王1年生 (少年サンデーコミックススペシャル)

*1:あずまきよひこ『あずまんが大王』巻1,P115

*2:あずまきよひこ『あずまんが大王 1年生』P115

*3:ちなみにセリフも「3人」から「三人」へと細かに修正されています。

*4:あずまきよひこ『あずまんが大王』巻1,P9

*5:あずまきよひこ『あずまんが大王 1年生』P9

*6:あずまきよひこ『あずまんが大王』巻1,P23

*7:あずまきよひこ『あずまんが大王 1年生』P23

*8:あずまきよひこ『あずまんが大王』巻1,P58

*9:あずまきよひこ『あずまんが大王 1年生』P58

なまえなまえ 2009/06/15 21:18 >新装版『あすまんが大王』
何度もうなずきながら記事を拝見してたのですが
ここで吹きました^^;

フジモリフジモリ 2009/06/15 22:40 あ、ほんとですね。こそっと修正しました。
ご指摘ありがとうございます。(ぺこり)

KSKKSK 2009/06/16 01:23 >4コマの使い方も、今見ると昔のは甘いなと思えます。

>なんで4コマとしても、今だから描ける要素を入れました。
>いきなり応用問題を出しても大丈夫なんかな?って不安はありましたが。
>描いている方としては、表面的な部分は変わってますが、あずまんがのコアになる考え方は
>そのまま使って描いています。〜

>〜今自分に出せる一番いい形、があれです。
>それが変わっていくのは、自分ではいいことだと思っています。
>それをどう読むかは、読者の皆さんにおまかせします。

応用問題ってのは単純に補習編での四コマの書き方の事じゃないんでしょうか?
ゲッサンで初めて読んだ人にとっては、まだキャラとして大阪とかしてても平気!
っていきなり言われても初読みの人は解らないですし
榊さんだってスポーツ万能のクールキャラを飛ばして怖がりだったりな内面を書いてます
こうゆうキャラの特徴を考慮した上での四コマを応用問題だと言ってるんだと思います

新旧でオチが異なる。と新旧でお話そのものが異なる。
以外はその記事ではあてはまらないと思うのですが…あげあしを取るようですいません

フジモリフジモリ 2009/06/16 06:45 >KSKさん、コメントありがとうございます。
「応用問題」という言葉の解釈ですが、旧(基本問題)を知っているからこそ新(応用問題)を楽しめる、という意味合いで、拡大解釈かもしれませんが、新旧の差分をご紹介する言葉として、「応用問題」という言葉を用いました。実際の作者の意図する発言と異なるかもしれませんが端的に記事内容を説明する言葉として借りましたのでそのあたりご寛恕いただければ幸いです。

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