本日鎌倉へ行く

sans-tetes2007-03-25

11時30分頃、江ノ電鎌倉駅に降り立つ。雨は上がっているが風強い。鎌倉へは友人に誘われて。何でも面白い写真家の展覧会を行っているとのこと。
写真家の名前は畠山直哉。「独自の視点で都市を切り取る」。展覧会の内容はその内容にふさわしい内容。「街」をどう見るかはそれぞれの視点、「街」のように見えて実は異なるモノへの視点もそれぞれの視点。中に住むに留まり、生活の延長としての視点しか持てぬか、同様の立場にあっても、ある時は観察者としての視点を持ちながら、「街」との同化を拒むも、更に強く密接なる関係を築くも、またそれぞれ。
「普段いかに我々が思考を停止しているか」同行者の言葉が心に残る。

その後、お決まり通り鶴ヶ岡八幡宮へ。久々に訪れた大銀杏は前より少し枯れていたようだ。虚の多いせいか、木から参道階段に栗鼠が三匹するする降りてくる。漢字に直すとよくわかるが、栗鼠は尾の大きいネズミにすぎない。これも同行者の弁。・・・三匹、この場で運命の変転を得た実朝、知章、そして公暁の後世か?などとは思うべくもなく愛らしく媚を売るような様に、参道の参拝客らは足を止める。ただし、それに触れてはいけない。畜生の持つ毒に抗する術は、人が森を離れてこのかた、永遠に失われてしまった。今、かような行動の結果、何が起こるかわからない。
正面、今は色の剥げ落ちた真ん中の橋、通行禁止になっていた。昔はガキ共の滑り台状態になっていた

宝戒寺〜妙本寺

曇り、時々雨の降る中市内を歩く。若宮大路は避け、東側の山になるべく近い路を選ぶことに。
宝戒寺。得宗家の屋敷跡。詳しくは御勝手に。山門前まで訪れた後、境内には入らず少しばかりの写真を撮って立ち去る。一度往来を出て、大回りして境内裏の山道に到る小道が見える。「腹切りやぐら」を通って山道に到り、鎌倉の東側を大回りして材木座方面に抜ける道だが、雨後のぬかるみもあり本日は敬遠。
路沿いに、南へ。若宮大路を避けて海岸・逗子方面へ抜けられる路とあって車通りは以外に多い。スピードもそこそこに出ている。・・・地元民以外、日曜祝日は車で来るな・・・。

妙本寺。山門を潜り、暫く階段を上る。日本の聖域は山にある。人の死んだところに地蔵が立ち、大量に殺されたところには寺が建つ。比企の一族はここで死に、一族と共に葬られている。詳しくは(以下略)
寺そのものに、市中、他の古刹と比べて、特に目を見張る財はないものの、市街より少し離れた場所に位置する

極楽寺前、招き猫

長谷を抜け、海岸に向かわず、山道を求めて緩い坂を登っていくと、極楽寺坂の切り通しに差し掛かる。昔はここを抜けて由比ヶ浜に向かうのが本道だったのだろうが、今は何もこの後続く狭い路をわざわざ選ばなくとも海岸沿いに稲村ヶ崎を抜ければ、労せずして江ノ島に至る。とはいうものの、今は車二台が通れるほどの広さに掘削されている。
坂を登り切ると、右側に橋、いつの間にやら頭上を越したのか、眼下にひどく窮屈そうな江ノ電の線路が見える。長谷方面からトンネルを抜けて、橋の下を潜り、更に下を流れる小川に沿う形で極楽寺駅のホームはあり、電車はやはりひどく窮屈そうに停まる。
極楽寺は先ほどの橋を渡り、すぐに左、こぢんまりとした山門が見える。鎌倉時代中期に建てられた古刹で、かつて一体の極楽寺谷はすべてが伽藍で、それこそ巨大な寺院だった。それに比べて現在は至極控えめ、創建以来の威厳が伝わるものの、喧騒とは無縁のその佇まいは、先ほどの妙本寺と同じ理由で好感が持てる。
ただし今回の目的はそちらではなく、川を挟んで向かい側にある「招き猫」を売る店。これも同行者からの情報。極楽寺なら何度も通ったことはあるが、山門前にそれらしきものはついぞ?
山門の前はすぐに先程の小川。ついでに極楽寺のホームが横たわる。駅舎は向かい側。それらしき店は見当たらない。橋を渡ってすぐ、やはり由緒ある地蔵を納めたお堂があり、参拝の帰り、いつもはそこに腰掛け一息つく。今日は先客が・・・。大分出来上がっていい心持ちになっている肉労系のおじさま方。道行く人に席を勧める様は、はっきり言って迷惑であるが、悪気はないらしい。我々も当然呼び止められる。私はなぜか女性に間違われた。よほど酔っている。
他に人もなく、誘いに乗る振りをして件の店を尋ねる。場所はすぐわかったがなにやら「怖い」だの「化ける」言い始めた。そうなのか?地元ではそのような評価なのか?
続くグダをかわして教えられた場所に。山門を、川を挟んだ向こう側。生酔の言とはいえ気になる。少し警戒しながら店先を覗く。布でできた招き猫が一匹、二匹・・・全部で六体、少しずつ表情の違う笑顔を浮かべてちょこんちょこんと往来に向かい、さし上げた右手でもって招く。作り手の、心が籠もった、それだけで縁起物、何ら仇なす事のあろうか。後ろの方でさっきの生酔から「縁起良いぞ〜」の声。
何でも、猫の体を覆う古布を卸す業者、現在一社しかなく、しかも他の大口の得意先へ卸すのを優先して、こちらに卸すのはどうしても不定期になってしまうとのこと。同行の友人は感動して二体購入。まだおもしろい模様の猫が入るとのことで、私はまたの機会に。愛想の良い店の夫婦に別れを告げる。文字通り、猫の後ろ髪を引くのを感じる。ごめん。わずかの時間で忽ち虜となる、その魅力は見た者なら誰でも頷くであろう。先程の「怖い」とはこのことか。情は何にも増して怖い。