『ドキュメント 戦争広告代理店 情報操作とボスニア戦争』

高木徹
講談社文庫
ISBN4-06-275096-1
ボスニア・ヘルツェゴビナ政府と契約したPR会社が、国際世論の中にいかにボスニアのモスレム人に有利な情報を広め、ボスニア政府に有利な環境を作っていったか、ということが書かれた本。
全体として、それ以上の内容は、ない。
ノンフィクションとして優れた部分がある、ということは余りなく、これだけの素材を見つけてきた、ということだけが勝利の要因、という本か。
元がNHKの番組だったせいか妙に情景描写も多いが、時間を追って書かれた一本道の素直な本なので、この内容で読んでみたければ、読んで損はない本だと思う。
ただし、やや一発ネタに近い、というか、要するにそれだけ、ではあり、既にある程度内容を知っている人には、付け足される部分は多くないだろう。
それでも良ければ、素材としては、一読の価値はあるだろうと思う。
以下メモ。
ホロコーストという用語はユダヤ人の反発を招きかねないので使用せず、バルカン半島で以前から使われていた言葉の英訳である民族浄化エスニック・クレンジング)を採用した。
ミロシェビッチは、国内の支持基盤に目が向いており、セルビアを悪者に仕立てる西側メディアに反発する国内世論を考えれば、西側メディアに媚を売るような行動を取ることはできなかった。